覚醒したバスティアニーニの強み。後半戦は「ドゥカティ劇場」としての幕開け/第10戦イギリスGP

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2024年08月05日 13:40  AUTOSPORT web

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今季初優勝を飾ったバスティアニーニ(中央)は「もし僕が(今季の)タイトルを争うライダーになりたいのなら、その方向で改善しなければならない」と述べていた
 2024年シーズン後半戦の幕開けとなる第10戦イギリスGPは、エネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)がスプリントと決勝レースを制した。そして、イギリスGPの決勝レースでは、ドゥカティがMotoGP史上初となる、決勝レースでの7戦連続表彰台独占を達成した。

 まずは、バスティアニーニの話をしよう。土曜日にはバスティアニーニにとって初となるスプリントレースでの優勝を飾り、日曜日の決勝レースでも今季初優勝を挙げて、バスティアニーニは2024年シーズンの優勝者リストに名を連ねた。

 決勝レースで3番グリッドからスタートしたバスティアニーニは、一時は4番手に後退するも、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)、ホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)を順々にかわして14周目にトップに立ち、優勝した。2022年シーズンに何度も見せてきたような、バスティアニーニらしいレースだった。

 バスティアニーニは予選順位の改善が今回の結果のひとつのポイントだったと、レース後の会見で述べている。

「今週末の結果にはとても満足しているよ。サマーブレイクの間、もっと何かできるのはどこだろうと考えていたんだ。自分のペースをチェックしてみると、レースでは常によかったし、毎レースでトライをしていた。ただ、いつも僕は後ろからスタートしていたんだよね。何度もタイムアタックでミスをしていた。今週末のタイムアタックについてのアプローチはよかったと思う」

 そんなバスティアニーニにかわされたマルティンは、「エネアにかわされたときに付いて行こうとしたけど、無理だった。今日の彼は別次元の速さだった」と語っており、この日のレース後半のバスティアニーニの速さが圧倒的だったことを窺わせる。

 レース前半でバスティアニーニの後ろを走っていたマルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)は、バスティアニーニの速さについて、こう説明していた。

「彼のライディングスタイルはとても不思議ではあるんだけど、同時に、とても効率的なんだ。新品タイヤで走りだした序盤はペコ(フランセスコ・バニャイア)やマルティンよりも苦しむけど、いつもユーズドタイヤでとても速い。あまりバイクを傾けずに旋回することができるんだ」

 ライディングスタイルの特長によってレース後半に強いバスティアニーニは、予選順位を改善したことで、さらに上位に割って入る可能性を高めた、と言えるのかもしれない。バスティアニーニは今回の優勝により、ランキングトップに浮上したマルティンと49ポイント差のランキング3番手につけている。本人は会見で「今のところ、僕はチャンピオンを争うひとりではないと思っているよ。ペコとホルヘはさらに安定しているからね」と言っているが、この勢いが続けば、チャンピオン争いの一角となる可能性は十分にあるだろう。

7戦連続、ドゥカティによる表彰台の独占
 そして、イギリスGPの決勝レースでは、ドゥカティが表彰台を独占(1位:バスティアニーニ、2位:マルティン、3位:バニャイア)した。ドゥカティライダーによる表彰台独占は、第4戦スペインGP以来、7戦連続である。これは、MotoGP史上初のことだ。

 今季、優勝者のリストにいるのはバニャイア、マルティン、そしてマーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)である。スプリントレースまで含めると、ここにアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)が加わる。イギリスGPまでのところ、5名のライダーとふたつのメーカーだけがこのリストに載っている状況である。

 イギリスGPでは、このサーキットと相性のいいアプリリア、とりわけエスパルガロが初日からドゥカティの間に割って入っていた。予選Q2でもオールタイムラップ・レコードを更新してポールポジションを獲得したのは、エスパルガロだ。

 だが、エスパルガロはスプリントで3位を獲得したものの、決勝レースを6位で終えた。エスパルガロは決勝レースでフロントにハードタイヤを選択したふたりのライダーのうちのひとりだったが(もうひとりはラウル・フェルナンデス)、これは正しい選択だった、と考えている。ドゥカティとの差を生んだのは、リヤのタイヤマネジメントだったという。

「タイヤマネジメントについてどうすることもできなかった。ひとり、またひとりと、ドゥカティが僕をオーバーテイクして引き離していくのを見るのは本当に悔しかったよ。電子制御の部分、エンジンブレーキやTC(トラクションコントロール)を変えたりしてみたけど、どうしようもなかった」

「残念ながら、タイヤマネジメントに関してドゥカティは先をいっている。これについて改善しなければならない。僕たちは自分たちのターゲットがロング・ディスタンスの改善だとわかっている」

 なお、エスパルガロのようにドゥカティ勢に混じって2列目6番グリッドからスタートしたブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)は、スタート直後のマシントラブルにより、リタイアを余儀なくされた。

「残念なことに、クラッチの問題によって引き離されてしまった。発進しようとしたら、スリップが始まったんだ。何とかしようとしたけど、うまくいかなかった。マシンをコース脇に止めるしかなかったよ」

 ドゥカティはイギリスGPの決勝レースで、表彰台ばかりかトップ5を独占し、さらに、トップ10に全8名のドゥカティライダーが入った。シーズン後半戦は、ドゥカティ劇場として幕を開けたと言っていいかもしれない。

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