パリオリンピック女子バレー 古賀紗理那も「チグハグだった」と振り返った、日本が発揮できなかった強化ポイント

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2024年08月07日 10:01  webスポルティーバ

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【パリ五輪出場のための戦略とチームの強化】

 花の都で夢、敗れる。パリ五輪に挑んだバレーボールの女子日本代表は、現地時間8月3日にプール戦最後のケニア戦を勝利したものの、1勝2敗で決勝トーナメント進出は叶わず。9位で大会を去ることになった。

 東京五輪後、眞鍋政義監督を指揮官に据えてスタートした女子日本代表。眞鍋監督といえば、日本を2012年ロンドン五輪で銅メダルに導いた実績を持つ策士だ。始動に際してパリ五輪でのメダル獲得を目標に掲げ、そこに向けて明確な道筋を立てた。

 まずは新たなオリンピックサイクルが始まった2022年、眞鍋監督は2024年に照準を合わせつつも、初年度のネーションズリーグでは他国が主力選手の休養や新戦力の起用を施すなか、現有戦力を据えて勝ち星を優先させた。

 というのも、パリ五輪の出場権獲得プロセスは従来と異なり、2023年の予選で突破するか、それがかなわなかった場合は2024年ネーションズリーグ予選ラウンド終了時の世界ランキング上位チームに付与される、というものだったからだ。そのため、常に世界ランキングで上位につけておくことが必須となったのである。

 そうして世界ランキングを一気にアップさせることから手を打ち、同時にチームづくりを進めた。

 一方で世界を見渡せば、イタリアやセルビア、トルコのように強力なオポジットを擁する国が結果を出しており、女子バレーボール界は"大砲至上主義"が支配した。その点において日本が及ばないのは明白だったが、伝統の高いディフェンス力はベースとして変わらず、サーブの強化と、高速バックアタックを絡めたオフェンスを仕掛けることで勝機を見出していく。2023年のパリ五輪予選(ワールドカップ)では、トルコやブラジルに敗れはしたものの、競り合いを演じた。

 そして2024年を迎え、パリ五輪の切符をかけたネーションズリーグでは、世界ランキング上位を維持して出場権を獲得。準決勝ではブラジルを下し、これには眞鍋監督も「なかなか勝つのは難しいと思っていましたが、(前年の)予選で味わった悔しい思いをこの半年間継続して、それをぶつけてくれました。特に終盤の勝負強さが身についたと感じています」と選手をたたえた。

 そのネーションズリーグでは女子日本代表として初の準優勝に輝き、パリ五輪でのメダル獲得に再び照準を合わせ、本番を迎えたのである。

【強化ポイントの「精度」にほころび】

 だが、本番では厳しい戦いを強いられた。プール戦初戦の相手は、身長203cmのオポジット、マグダレナ・スティシアクを攻撃の軸とするポーランド。強力な大砲を擁する点では、日本にとってはネーションズリーグ決勝で敗れたイタリアと同じ系統のチームだ。

 眞鍋監督が対イタリアのキーポイントとしても挙げていた「大砲以外のアタッカーのスパイクを封じる」ことが必要。その点に関して、第1セットではスティシアクの強打を浴びながらも、効果的なサーブで相手を崩し、セットを先取することに成功した。

 しかし第2セットに入り、ポーランドが身長200cmのミドルブロッカー、アグネシュカ・コルネルクのクイックを多用してリズムを作ると、形成は一気に逆転した。高さに劣る日本はブロックで後手に回り、やがてスティシアクや、アウトサイドヒッターのナタリア・メンジクがサイドからしっかりと得点。また、攻めてもコルネルクに第4セットだけで4本、計8本のブロックポイントを許すなど決定打を奪えず、セットカウント1−3で黒星発進となった。

 続く第2戦はブラジル。この3年間で、2022年世界選手権、2023年パリ五輪予選、そして今年のネーションズリーグでいずれもフルセットの激闘を演じた"宿敵"ともいえる相手だ。

 だが、今大会のブラジルはまったく違う姿を見せ、日本のサーブに対していっこうに崩れない。日本にとって苦しい展開が続き、第2セットから林琴奈と井上愛里沙、第3セットは荒木彩花を開始時から起用するなど突破口を見出そうとするが、ストレートで敗れる結果に。「総力戦」とは響きはいいが、それは最適解を見出すまでの苦悩とも言える。終わってみれば、古賀紗理那の10得点がチーム最多かつ唯一の2ケタ得点となった。

 続くケニア戦で日本はストレート勝ちを収めたものの、セット率の差で他グループの3位チームを下回り、全体9位。メダル獲得への道のりは、ここで潰えた。

 パリ五輪を前にした7月1日の記者会見で、眞鍋監督は最後の強化ポイントとして「コンビの精度に尽きる」と語った。しかしブラジル戦を終えたあとの古賀が「特にオフェンスの精度がチグハグだったのが敗因」と語ったことから、パリ五輪本番で歯車が狂っていたのは確かだ。

 今年に入り、司令塔に岩崎こよみを抜擢し、経験豊富なベテランのトスワークは攻撃面において安定感をもたらしたが、成熟させるまでに至っていなかったのかもしれない。オリンピックイヤーになって正セッターを擁立した点は、同じくプール戦敗退に終わった東京五輪と重なって見えた。

 決勝トーナメント進出へ一縷(いちる)の望みはあったものの、ケニア戦を終えて古賀は大粒の涙を流してコートに突っ伏した。

 このパリ五輪で現役を引退する古賀を軸に据えて歩んできた3年間。チームとしても個人としても、その集大成を思うような結果で飾ることはできなかった。

 この悔しさを力に変えて−−。次なる2028年のロサンゼルス五輪で、また新たな進化を遂げた日本女子代表が見られることを期待したい。

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