車は20年乗れる!?…整備士が教える、愛車を長持ちさせるメンテナンス術

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2024年08月13日 07:40  まいどなニュース

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車を長く乗るためのメンテナンス法は ※画像はイメージです(兼佑 山本/stock.adobe.com)

車の乗り換え時期の平均は、新車から乗り続けている場合で「7〜9年」と言われています。新車から数えると3〜4回目の車検時期ですが、実際にはまだまだ長く乗れるパターンが多いです。そのための注意点や必要となるメンテナンス、乗り換えるときの判断基準について、普段から低年式〜高年式の車を整備している現役の整備士がわかりやすく解説します。

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車は20年以上乗ることができる

メンテナンス状況や使用環境によりますが、一般的な乗用車でも20年以上乗ることはできます。ただし、そのためのメンテナンスは必要不可欠です。

たとえば、普段からオイル交換の距離を守らない、車検は安上げで…といった具合に、愛車のメンテナンスを疎かにしていると、車が傷んでいくスピードは早く、良い状態で長く乗り続けることが困難になるのは当然です。

車の耐用年数自体は、走行距離の多い少ないによる違いは当然のこと、それだけではなく普段の保管状況やメンテナンス状況で大きく左右されます。15年、20年、またはそれ以上長く乗り続けることは可能です。

車を20年以上乗る際の留意点


車を20年以上乗り続けるためには、注意点やあらかじめ覚悟しておかなければいけないことがあります。

▽交換部品の在庫がない場合がある

長く乗り続けるほど、車が新しい頃には必要のなかった交換部品が発生します。しかし、車の部品は永久的に生産・販売されません。そのため20年以上乗り続ける場合には、交換部品が発生した際に、純正部品がすでに生産されておらず、中古部品や社外部品を使用しなければ整備・メンテナンスが困難になる場合があります。当然、中古部品や社外部品でも調達ができないパターンも出てきます。

一般的には、その車のモデルの新車生産が終了してから「10〜15年」は、メーカーからの部品供給があると言われています。これはあくまで各メーカーがそれぞれに社内で定めている自主基準なので、車種や部品によって異なります。

▽税金が高くなる

車は新車から13年を超えると、年に一度納税している「自動車税」と、車検時に納税している「自動車重量税」が重課されます。

13年は新車から数えて6回目の車検のタイミングです。

年数が経過した車は環境負荷が大きくなることから税金を重たくしているのですが、ハイブリッド車やEV車のような、一般的に環境に配慮しているとされる車は重課の対象外です。

また、自動車重量税は18年経過でさらに重課され、ディーゼル車の自動車税は11年を超えると重課されます。

自動車にかかる税金は、減税措置や法改正の絡みもあって、同じ車の同じエンジンでも購入時期によって税額が異なることがあります。

正確な税額は国交省のHPを参考にしたり、販売店などで確認することをおすすめします。

【例】
2019年10月以前に購入した、2.5Lガソリンエンジンモデルのアルファードの場合(車両重量は2000kg超え)

<1〜12年>
自動車重量税(税額)41000円
自動車税(税額)45000円

<13年〜>自動車重量税(重課率)0.39/自動車税(重課率)0.15
自動車重量税(税額)57000円
自動車税(税額)51700円

<18年〜>自動車重量税(重課率)0.53/自動車税(重課率)0.15
自動車重量税(税額)63000円
自動車税(税額)51700円

▽車検費用が高くなる

すでに解説したように、車検時に納税する自動車重量税の重課や、年数経過と走行距離に応じた各部品の劣化による部品交換の発生によって、車検時の費用が高くなることに注意が必要です。中には車検に通らないので、必須で交換が必要な部品も出てくるでしょう。

その場合まだ新しい車の車検と比較して、数万円〜数十万円単位で車検費用が高くなることもあり得るので、車に15年20年…と長く乗り続けるのであれば、車検時の想定外の出費にはある程度の覚悟が必要です。

▽車を手放すときの査定額には期待しない

ほとんどの車は年数が経過し、走行距離が増えるに従って下取り・買取金額は右肩下がりです。
15年〜20年経過した車にはほとんど金額がつかないので、次の車に乗り換える時の頭金や購入資金に充てられるような査定額は出ないものと考えましょう。

最近は、誤解を招くような高い買取実績をアピールする広告なども増えているので注意が必要です。

車を20年以上乗る際のメンテナンス

車を20年以上乗るために必要となるメンテナンス・交換部品について解説します。

▽定期的な油脂類の交換

エンジンオイルに代表されるように、車にはブレーキフルードやエンジン冷却水(LLC)といった、定期的に交換が必要な油脂類が使われています。

油脂類は使用過程でかならず劣化します。劣化したままの油脂類を使い続けていると部品の寿命を縮めたり、傷めたりすることにつながります。

20年以上車に乗り続けるためには、定期的な油脂類の交換という基本なメンテナンスは最低限必要なことです。

▽定期的な油脂類以外の消耗品の交換

定期的に交換が必要なのは油脂類以外にもあります。分かりやすいところで言うと以下のようなものです。

・タイヤ
・エアエレメント
・ブレーキパッド
・スパークプラグ
・バッテリー 等々…

油脂類と同じく、定期的な交換が必要なのは劣化や摩耗が進むためです。よって、交換を怠っていると車の健康維持に支障をきたしたり、余計な整備や部品の損傷を招く恐れがあります。

▽ゴム製のブーツ類の交換

車にはさまざまな箇所に、ゴムブーツが使われています。ブーツの中にはグリスが封入され、人間で言うところの関節にあたるようなボールジョイントを保護しています。こうしたブーツ類は破れていると車検に通らないものも多いです。

走行距離の多い・少ないに関わらずゴム部品は劣化していくので、20年以上乗るとなると各所、一度は交換する必要が出てくるでしょう。

(例)タイロッドエンドブーツ、ロアアームブーツ、サスペンションのダストブーツ、ドライブシャフトブーツなど。ブーツのみの交換ができるものから、部品を丸ごと交換しなければいけないものもあります

▽エンジン補機類の寿命

補機類には、エアコンコンプレッサーやオルタネーター(発電機)、油圧パワステの車であればパワステポンプ等があります。

こうした補機類も長年使い続けていると寿命を迎えたり、故障のリスクが高まってくるので、20万kmを目指すとなると一度は交換の必要が出てくる可能性があります。

予防整備として交換することは少なく、基本的には壊れたら交換する部品です。

▽サスペンションのリフレッシュやヘタり

長く乗り続けるためには、サスペンションのリフレッシュも重要です。

ダンパーからオイル漏れが発生すると、車検に通らないので交換が必須となりますが、見た目には分からなくても、サスペンション類は走行距離が増え、年数が経過すると劣化します。

劣化すると乗り心地の悪化や運動性能の低下につながるので、20万km以上を目指すのであれば、10年/10万kmを目処に、ダンパーやマウント、アーム類といったサスペンション一式のリフレッシュができるとベストです。

▽ハイブリッド車やEV車のバッテリー

ハイブリッドバッテリーやEVバッテリーも、使用過程において劣化するので、20万kmまでに一度は交換する必要が出てくるでしょう。

充電容量の低下や、場合によっては警告灯が点灯するので、それが交換の合図です。

▽ブレーキ廻りのリフレッシュ

長く乗るためにはブレーキのリフレッシュも大切です。

普段はブレーキパッドのみの交換で対応可能な消耗品の交換も、距離が増えるとディスクローター側の摩耗も進むので、摩耗限度に近づいている場合には交換が必要です。

また、ブレーキ廻りのシール類も劣化などによってブレーキフルード漏れが発生するリスクが高まってきます。こういった要因により、以下のような部品の交換や整備が必要になってきます。

・ブレーキャリパーのオーバーホール、または交換
・ホイールシリンダーのオーバーホールまたは交換
・ブレーキホースの交換
・ブレーキマスターシリンダーのオーバーホールまたは交換

タイミングベルトやクラッチの交換

国産車ではすでに新車として販売されている車でタイミングベルトの車はありませんが、年式の古い国産車や今でも一部の輸入車ではタイミングベルトという部品がエンジンの駆動のために採用されています。

5〜10万kmごとの交換が推奨されていますが、ゴム部品なのでヒビ割れが発生していれば、距離が少なくても10年前後で交換するのがベストです。

また、最近では少なくなったマニュアルトランスミッションの車や一部のAT車(スズキのAGSなど)に採用されているクラッチも消耗品のひとつです。おおむね数万km〜10万km程度で交換が必要になります。

ただし、運転のシチュエーションや技術によって交換時期が大きく変わってくるので、20万km走行して一度も未交換という事例もあります。

車を20年乗り続けるか乗り換えるか判断した方がいい修理、交換例

残念ながらいつまでも同じ車に乗り続けることは難しいので、いつかは乗り換えを検討する必要があります。

そこで悩みの種になるのが、長く乗った車をどのタイミングで乗り換えるかです。一度修理にお金をかけると、ズルズルと乗り換えどきを見失いがちです。

新車から10年を超えて、20年を目指す中で乗り換えを検討するべき修理や故障例についてご紹介します。

▽塩害のある地域は錆の進行度合いを目安に

降雪地帯や、海沿いでの使用で車の錆の進行が極端に早い地域の場合だと、エンジンなどのパワートレイン関係が無事でも、ボディやフレーム、足周りが錆による腐食で先にダメになってしまうことがあります。

錆の進行度や腐食の場所によっては、車検を通すことが困難になることもあります。

個人で錆による車の状態を判断することは難しいので、信頼のできる車屋さんで点検してもらいアドバイスをもらうことをおすすめします。

15年前後を目処に、錆の状態によっては乗り換えを検討したほうがよいパターンが出てくるでしょう。

▽高額修理が乗り換える判断ポイント

ほとんどの場合で修理するより新しい車を買う方が出費が多くなるかもしれませんが、それでも年数も走行距離も増えたいつまで乗れるか分からない車の修理に、いつまでもお金を掛けるのは戸惑われます。

軽自動車やコンパクトカー等の国産車であれば、1箇所の修理に「20万円〜」程度かかってしまうようであれば、乗り換えを考えるタイミングと言えるでしょう。具体的には以下のような箇所の修理が想定されます。

【エアコンの修理】
コンプレッサー、コンデンサなど複数箇所の同時交換が必要
【ATやCVTの修理】
AT/CVT本体のアッセンブリー載せ替え
【エンジン本体の修理】
オーバーヒートでエンジンのヘッドが歪む、エンジン内部でのオイル消費が多いなど
【事故修理(保険を使わない自費修理)】
フレームの修正を伴うと高額になりがち
【ハイブリッドバッテリーの交換】
ハイブリッドバッテリー関連の警告灯点灯
【EVバッテリーの交換】
セグメント低下で航続距離減
【ヘッドライトの交換】
ライトが暗くて車検に通らない

特に事故修理は、ユーザーの想像以上に高額になりがちです。

また法改正などによって今後、年数経過でくすんだヘッドライトの光度(ライトの明るさ)が足りずに車検に通らない車が増えてきます。以前はロービームで合格しなくてもハイビームで合格すればOKだった年式の車が、ロービームでのみ適合の判断を行うことになったためです。その場合、ヘッドライト本体の交換が必要となります。

近年増えてきたLEDタイプは部品代が高額になりがちなので、ヘッドライトのくすみによる車検不適合が乗り換えの検討タイミングとなってくるパターンが出てくるでしょう。

   ◇   ◇

車は工業製品ですが、同じ年数・同じ距離を走ったからといって、まったく同じ壊れ方をするわけではありません。20年以上長く乗るには、ある程度は運の要素もあるのは否めませんが、やはり基本として大切なことは日々の確実なメンテナンスです。逆にこれ無くしては、20年以上安心して乗り続けることは難しいです。

またメンテナンスをきちんと実施していても、部品は劣化し消耗します。長く乗り続けるためには、突発的に数十万円単位の修理が必要になることもあるのを理解しておきましょう。

◆整備士・ヒロ
国産ディーラー、輸入車ディーラーで勤務してきた2級自動車整備士。整備士経験は10年以上で、過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場したことも。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。

   ◇   ◇  

【監修】中古車のガリバーが運営・クルマのギモンにこたえるサイト「norico」編集長・村田創
中古車のガリバーに勤務して20年以上のベテランが車の知識をわかりやすく解説します。車のことは、多くのメーカーを横断して取り扱うガリバーにぜひ聞いてください。「車ってたのしい!」を感じてほしいと思っています!

(まいどなニュース/norico)

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このニュースに関するつぶやき

  • 国産V6に13年半乗って、とても調子が良かったんだけどね。オイル染み出しが続いて買い替えた。
    • イイネ!11
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