なかなかファクトリーの中での作業を見ることができないスーパーGT。第4戦の富士までには2カ月のインターバルが空いたが、その際にGT500のトップチームとしてお馴染みの日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)NISMOに取材許可をもらい、7月、横浜市鶴見区のNISMOのファクトリーを訪問した。
短期連載最後、3回目となる後編はエンジンベンチの模様を紹介。この取材に合わせて特別に稼働状態の動画を掲載することができたのでお見逃し、もとい、お聞き逃しなく!
■レース用、カスタマー用にエンジンベンチを使用
エンジンベンチは実走を再現できるベンチと通常のベンチがあり、ユーザーのエンジン用に大森時代からのベンチがある。さらにNMCのオーテック事業所(茅ヶ崎)にも複数台のベンチがあり、燃焼などの確認に使用する単気筒エンジンはそちらでテストを行っている。
実走再現ベンチでは実際に稼働させていただき、取材時に富士スピードウェイを走行するGT500のエンジン音を聞いたが(下記の添付のベンチは鈴鹿を走行)、音を聞く限りスロットルオフによるターボラグを防ぐアンチラグはほとんど使用していないように聞こえた。エンジン自体でのドライバビリティ改善と燃費対策が進んでいる証だろう。
ベンチにはレースに向けての適合を探る使い方と、開発テーマの使い方などがあるが今季2基目のエンジン仕様は、すでに決まっているタイミングであろう。その投入タイミングと使い方も戦況に少なからず影響を与えるはずだ。
ちなみに2020年規定から、それまでの燃料リストリクターによる燃料流量規制に加えてエンジン回転数の上限も規定されているという。その上限回転数は9500rpmとのこと。
燃料流量制限が掛かるのが7000rpm付近であるため、9000rpm以上の領域は元々トルクが薄く、フリクションが増大する領域なので9500rpmを常用はしていなかったものの、リミッターに当たるとトルクが急激に落ち込んでしまうため、その手前でソフトに回転制限をかけるような制御を組み込んでいるという。ベンチ運転でもリミッターに当たったと音で分かる瞬間はなかった。
■鈴鹿サーキットを再現走行したエンジンベンチの様子(動画提供:NMC/NISMO)
URL:https://www.youtube.com/watch?v=CVgXm6o2bp4