ラーメン山岡家の人気が尋常ではないと話題になっている。飲食店チェーンで24時間営業を続けているのは数少ないが、朝7時台に満席になるラーメン店は、なかなか見つからないだろう。山岡家は、なぜそんなに人気があるのか。専門家とともに人気の秘密を探ってみた。
10月最後の日曜日の朝7時、インターネット上にこんな書き込みがなされた。
「山岡家、狂ってる。この時間にウェイティングシートに記入し15分待ち…」
ラーメン山岡家といえば、「ガツンと来て、くせになる。」を謳い文句に掲げる、豚骨スープをベースにした濃厚なラーメンが売りだ。
山岡家を運営する丸千代山岡家は、2024年1月期の売上高が前期比41.8%増の264億円、営業利益が同4倍の20億円、経常利益が同3.6倍の21億3000万円、純利益が同3.4倍の14億3000万円で、いずれも過去最高を記録。当初予想を大幅に上回った主な要因として、同社の想定を超える来店客数の増加がある。
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山岡家は、以前から着実な成長を遂げてきた。毎年、売上高は微増が続いていたが、2023年後半あたりから、来店客数が急増している。何があったのだろうか。
「特別、何かがあったわけではなく、山岡家ファンの間でも理由がわからないとの声が出ています。ただ、コロナ禍で多くの飲食店が廃業したり、営業時間を短縮するなかで、山岡家は(一部店舗を除いて)24時間営業を貫いていることや、ロードサイドに出店していることから、長距離ドライバーを中心に重宝される傾向があります。すべての店舗で駐車場を備えているほか、店舗によっては大型トラックも停められるスペースや、シャワー室が完備されているなど、運送業者に喜ばれるサービスが人気の要因のひとつです。
オーソドックスな醤油ラーメンや味噌ラーメン、塩ラーメンが690円(税込)と手ごろな値段設定なのも、リピートしやすい要因かと思います。最近のラーメン店は800円台から1000円台が主流で、600円台は安いほうです。ちなみに10年前までラーメンは390円でした。山岡家は昨年3月と9月、今年も7月と11月、頻繁に商品の値上げを繰り返していますが、それでも1回の値上げ幅は10〜30円と小さく、最低限にとどめていることが伝わってきます。値上げのたびに、原材料の高騰や輸送コストの上昇など、理由も説明してお客の理解を求めているため、反発も出にくいのかもしれません。
山岡家は、レギュラーメニューが29種類あり、それに加えて約2カ月ごとに期間限定メニューも発売するなど、他のラーメン店には類を見ないほど種類が豊富で、何度リピートしても飽きないところも魅力といえます。さらに、来店するたびにサービス券を配布しており、5枚で餃子1皿、10枚でラーメン1杯など、繰り返し来店するように仕向けるサービスも功を奏しているのは間違いありません。2023年10月には公式アプリを導入し、ポイントカード機能でポイントを貯めてトッピングやサイドメニューのクーポン券と交換することができるようになっています。
『くせになる』と喧伝するだけあり、濃厚なスープは地道にファンを獲得してきました。チェーン店にありがちな、濃縮スープをそれぞれの店舗で薄めて提供するスタイルではなく、店内で3日間豚骨を煮込むこだわりで、24時間営業ならではの手間のかけかたが、山岡家ならではの味を生み出してきたといえます。ほかにも、チャーシューもそれぞれの店舗で仕込んでいたり、ネギも自社農場で栽培するなど、随所にラーメンづくりへの信念が感じられます。この品質の高さが、お客に受け入れられている要因ではないかと考えられます」(店舗運営コンサルタント)
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山岡家が2023年以降に突然客数が増えた要因自体は明らかではないが、利便性の高さ、値段の安さ、メニューの豊富さ、品質の高さ、リピートしたくなる施策など、随所にお客が訪れたくなる工夫が凝らされており、人気が出るのは当然といえるのかもしれない。
(文=Business Journal編集部)
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