電機メーカー大手が、学歴に応じ横並びで同額を支給している初任給の見直しを始めた。職務内容に沿って処遇する「ジョブ型人事」を新卒社員にも広げ、優秀な人材の採用や抜てきにつなげる狙いがある。IT人材の獲得競争が激化する中、こうした動きは今後拡大する可能性もある。
パナソニックホールディングス子会社でシステム開発などを行うパナソニックコネクト(東京)は、2025年春入社の新入社員から初任給に差を設ける。仕事内容や必要な能力などを明確にした職務記述書(ジョブディスクリプション)を入社前に提示した上、起業に携わった経験やIT系の資格を持つ新卒の給料を引き上げる方針だ。
24年春入社の初任給は大卒で月27万円、大学院の修士課程修了者は30万5000円。この金額に1〜2割上乗せした給与を支払うイメージだが、新家伸浩執行役員CHRO(最高人事責任者)は「入社してから(専門知識を)勉強したいという学生も多く、初期の対象は数人程度になりそうだ」と説明。本人の意向を尊重しながら進める考えを示す。
富士通はジョブ型の対象を新卒まで広げ、26年4月入社から一律の初任給を廃止する。学生時代の研究成果や、採用に直結しない長期インターンシップ経験などを基に評価し、新卒者の月給はおおむね31万5000円〜38万5000円となる見通し。別の電機大手幹部も「初任給が皆同じという考え方は終わりにしないといけない」と、同額支給見直しに前向きだ。
政府は今年8月、先進的な企業20社の事例集を取りまとめるなどジョブ型の導入を後押ししている。ただ、学生側のニーズは多様で、ジョブ型が新卒に定着するにはまだ時間がかかりそうだ。