NTTドコモは12月24日、プロボクシング4団体統一世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥選手と、WBO世界バンタム級王者の武居由樹選手による2つの世界タイトル防衛戦「NTTドコモ Presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ」を、同社の映像配信サービス「Lemino」(レミノ)で独占無料生配信する。
同大会は大橋ボクシングジムが有明アリーナ(東京都江東区)で開催。井上選手はIBF&WBO同級1位のサム・グッドマン(オーストラリア)と防衛戦を行う。ドコモは本試合の観戦チケットを、クレジットカード「dカード GOLD」の契約者や、ドコモのポイントプログラム「dポイントクラブ」会員限定で先行抽選販売した。通常価格から割引した特別価格で販売し、クレジットカード契約者や会員にメリットを提示している。
ドコモが本試合を配信する狙いは、レミノ新規会員の獲得だけではない。その先にはdポイントを始めとした「ドコモ経済圏の拡充」がある。10月24日に開いた記者会見の中でドコモは、総合的なスポーツビジネス事業の発展を目指すdドリームスポーツ&マネジメント(東京都渋谷区)への出資も発表した。同社は大橋ジムと、スポーツマネジメント事業などを手掛けるセカンドキャリア(東京都渋谷区)が設立した企業。大橋ジムの充実した選手発掘や育成体制、ボクシング興行の運営ノウハウ、セカンドキャリアの「アスリートファースト」をテーマとしたマネジメント力をかけあわせ、総合的なスポーツビジネス事業の発展を目指すという。
今回の試合を配信する意味や狙いを、ドコモの前田義晃社長に聞いた。
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●井上尚弥の試合を配信した投資効果は?
――井上選手の試合は、これまで複数回、配信してきました。決して安くないであろう配信権料を負担して、レミノでは無料で配信していますが、これまでの投資効果をどう考えますか? もちろんレミノを広く知ってもらう意味での効果はあると思いますが、金融決済や通信など他のサービスとの連携の部分で、何か手応えを感じていますか?
レミノの知名度の向上は、井上選手の試合だけではなく、吉本興業HDさまと取り組んだ「PRODUCE 101 JAPAN SEASON3」を始めとしたさまざまなアーティストのコンテンツ配信によって取り組んできました。そして、そこからファンの方々が当社の他のサービスを使っている実績が、かなり出てきています。
特に最近はアイドル系や芸能系のアーティスト、タレント、 アイドルの方々の推し活に合わせて、例えば(クレジットカードの)dカードと絡めたイベントを開催しています。店頭でイベントをして、そこでdカードの契約をした方に特典を提供する取り組みも実施しています。他にもd払いで支払ったり、dポイントがもらえたりといった金融の手段もあります。
そうなると、推し活のコンテンツ販売そのものを、当社のサービスで決済していただくことになるわけです。ご存じの通り、推し活をする方は、かなりのお金を活動に使われます。一例ですが、決済の取り扱いの中では、こうした効果も現れています。そういった形で、波及効果は見えてきていますから、この調子で進めていきたいと考えています。
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――「2023年 Lemino年間ランキング」では井上選手の試合が1位でした。井上選手の試合を配信した直後から、レミノの有料会員が急増するとかドコモの契約者が急に増えたとかといったことはありましたか?
そうなればいいですよね。まず井上選手の試合を配信した後に、有料会員向けに、いろんな関連コンテンツを制作して、提供しています。それによって有料会員に転換する効果は、もちろんあります。 そこはもっと広がればいいと考えています。
ただ、レミノだけではなく、先ほどの金融サービスや他のサービスとも、もっと連携を強めて顧客を増やしていきたいと思います。いずれにせよ当社のコンテンツの中で、井上選手の試合が最も多くの利用者を獲得できることは間違いありません。しっかりビジネスとしても活用できるようにしていきたいと考えています。
――今回はどの程度の視聴者数を獲得したいですか。
もちろん、たくさん取りたいですけどね。クリスマスイブの配信ではありますが、できれば過去最高くらいの人に見てもらえればいいなと思います。
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――来年は井上選手のさらに大きな試合を、多くの人が期待すると思いますが、レミノは独占配信権を獲得できるのでしょうか? 自信の程はいかがですか。
「自信がある」と言わせていただきたいですね。もちろん素晴らしいコンテンツですから、皆さん(他社)も欲しいと思っていて、引き合いは多いと思います。 ただ今回、いろんな協力関係を作らせていただいていますので、ぜひ当社も前向きに考えたいですし、(プロモーターも)前向きに考えていただきたいなと思っています。
●「コンテンツそのものの部分にビジネスチャンスを広げたい」
――dドリームスポーツ&マネジメントに出資したビジネス的な狙いは?
従来はエンターテインメント事業に関して、どちらかというと川下というか、配信などのデリバリーの部分を中心にビジネスを組み立てていましたが、今後はバリューチェーンの川上の方、つまりコンテンツそのものの部分にビジネスチャンスを広げたいと考えています。
2023年には吉本興業さまとNTTドコモ・スタジオ&ライブという会社を作りました。同社では例えば映像を制作したり、興行をしたりといった事業を手掛けてきています。同じようにスポーツ分野に関しても、川上、つまりコンテンツそのものに対してのビジネスチャンスを得たいと考えています。
これまでも大橋ボクシングジムの大橋秀行会長や井上選手とは、いろいろな形で連携したり、協力したりしてきました。今回も大橋ジムとセカンドキャリアの方に「ぜひご一緒しましょう」と要請いただきましたし「ビジネスの戦略の流れにも合っているな」と判断して、出資をした経緯があります。
――出資したことによって、具体的にどんなことが起こってくるのですか?
これまではずっと試合の配信をしてきましたが、今後は配信のみならず、コンテンツの企画や制作など、いろんなチャンスがあると考えています。おのおのの活動をバラバラにやっていくよりは、ビジネスとして全体を最大化させることができそうだと感じています。そうすれば収益効率も高まります。自分たちでハンドリングしやすくもなります。そうすれば選手や関係者への還元も大きくしていけると考えています。
――レミノの収益などの一部から、こどもホスピスへの寄付を始めとした社会貢献活動と、ボクシング振興のために活用することを目的とした「ネクストモンスタープロジェクト」も11月から始めます。狙いは?
まず、せっかくこういった形でボクシングに関わっていますので、 業界全体の振興と成長につなげ、少しでも還元していきたい思いがあります。
もう1つは社会貢献です。例えば9月には井上選手や大橋ジムと協力し、ドコモ未来フィールド「井上尚弥選手&大橋ボクシングジム 特別体験イベント」を開催しました。そこで子どもたちに、実際のプロボクサーがどんな感じで練習しているのかを見てもらい、井上選手には子どもたちに直接教えるイベントに協力いただいたんですね。そういうことも含めて、 これからの未来を担う子どもたちに貢献するという目的があります。その2つを全体の動きの中でやりたいなと。
――社会貢献の色が強いように見えます。ドコモとして、こういった活動がビジネス的にもプラスに働くと考えますか。
もちろんです。やはり当社だけで、いろいろなことができるわけではありません。実際に今回、大橋会長や井上選手、セカンドキャリアさんにチャンスをいただけています。それは、この大会自体が社会にとってインパクトのあるコンテンツであって、それを見て豊かになる方々が多くいるということです。そしてドコモは、そこに参加させていただいているということだと思います。こうした関係性が持続的に成長していく、つまり長く続いていくためには、やはり当社も何かを還元し、環境を整えていく必要があると考えています。
われわれがビジネスをするためにも、社会貢献活動は必ずやらなければならないと思っています。逆にいうと、そこがなければ全部ついえてしまうかもしれない。そういった意味で、われわれにもビジネスリターンのある話だと考えています。
(アイティメディア今野大一)
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