「在韓被爆者も脚光を浴びてほしい」。広島で被爆した両親を持つ被爆2世で、韓国原爆被害者対策特別委員会の委員長、権俊五さん(75)=広島市西区=は、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞決定を喜びつつ、朝鮮半島出身の被爆者がいることを「忘れないで」と訴える。
特別委員会の前身団体は1963年、韓国在住の被爆者の救援組織として結成された。在韓被爆者は当初、日本の援護を受けられなかったが、数々の裁判に勝訴して援護が認められるようになってきた。
権さんは「戦後、在日韓国人、被爆者という二重の差別を受けながら生きてきた先人たちがいる」と強調。「韓国に帰国した被爆者も生活困窮者が多くいる」と訴える。
だが、在韓被爆者の存在は、あまり認知されていないと感じている。韓国から在日被爆者の声を聴きに来た団体に「韓国にも被爆者がいることを知っているか」と質問した際、誰も知る人はいなかったといい、「ショックだったし、韓国でも在韓被爆者が知られていないことを改めて感じた」と語る。
ノルウェーの首都オスロで行われるノーベル平和賞授賞式に出席する日本被団協の代表団には、在韓被爆者も含まれる。権さんは「日本被団協が大事な枠をくれた」と感謝し、在韓被爆者に対する関心が高まることを期待する。
権さんは韓国で核保有論が高まっていることを懸念しており、慰霊碑に参拝する韓国の若者には「核兵器廃絶に向けて考えてほしい」と伝えている。核兵器のない世界を実現するために行動してほしいと思ってのことだ。
広島市の平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑には、2万人余りの朝鮮半島出身者が広島の原爆で亡くなったと記されている。
韓国人原爆犠牲者慰霊碑=4日、広島市の平和記念公園