血糖値を上手にコントロールしていくことは、健康維持のためにとても重要です。特に、食後は血糖値が急激に上昇するので、注意が必要でもあります。そこで今回は、高血糖が引き起こすリスクや食後の血糖値を抑える食事の方法などについて、YouTubeチャンネルの登録者数が37万人を誇る、医師でヘルスコーチの石黒成治先生に教えてもらいました。
“糖分”は細胞にとって便利な栄養素
血糖値のコントロールというと糖質制限と捉えがちですが、それは単純に糖を摂る量を減らして血糖値をコントロールすること。
細胞にとって高い利用率で便利な栄養素の糖分を使わないことになるので、非常に非効率なエネルギーを使うことになります。
例えば、アルツハイマー病の人の神経細胞は糖を利用できなくなってしまっています。
神経細胞の中に糖をうまく入れられない状態を“インシュリン抵抗性”と言いますが、脳神経細胞でインシュリン抵抗性が起こると、脳細胞はエネルギー消費量が多いので短時間で糖をたくさん取り込みたいのにそれができずにエネルギー不足になり、どんどん神経細胞が変性していきます。
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これがアルツハイマー病の病態なのです。
“食後高血糖”を疑うポイント
人の細胞は絶えず糖質を求めていますが、糖質をうまく処理できずに取り入れられなくなってしまうと、血液中に糖が余って血糖値が上がる状態になってしまいます。
これがいつ起こるかというと食後です。食後30分〜90分くらいの間に血糖値が上がり、急速に腸から血液の中に糖分が入ってきます。
そのときに細胞に取り込む能力が低下していると、血液中に大量に余ってしまって血糖値が上がる。これを“食後高血糖” と言います。
実際、食後高血糖の状態を模したようなブドウ糖を摂取したときに、血糖値が200以上になっている人は結構多く、隠れた耐糖の異常である人は意外といるのです。
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食後高血糖を疑う1つの目安としては、眠さやだるさが食後に起こるという点があります。
「食後高血糖」を抑える対策法2つ
食後高血糖の大きなリスクとして、血管へのダメージが挙げられます。
血糖が上がる度に血管には負担をかけているため、食後の高血糖は心筋梗塞や動脈硬化、慢性腎疾患のリスク因子です。
そのため、いかに食後の血糖値のピークを抑えるかが重要になります。
対策としては、まず食前にお酢を飲むこと。
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血液の中から細胞の中に糖分を収納するのを促進してくれますし、肝臓や筋肉にグリコーゲンという形で取り込む率も上昇します。
お酢を摂ると胃酸の濃度が上がるのでたんぱく質の消化や吸収も良くなり、それに伴って糖分の吸収も少し抑えられます。
次に、食事の順番です。
最初にサラダなどの食物繊維を食べて、その後にお米などを食べることが大事。食物繊維と一緒にお米を食べると、お米のでんぷんが食物繊維に絡まって消化を受けにくくなります。
特に、水溶性の食物繊維はでんぷん粒子にまとわりつくので、海藻類や豆類を一緒に食べると食後高血糖を抑えることができます。
ただ、でんぷんは口の中で溶けてブドウ糖のレベルまで分解されるので、胃袋の中ですでに吸収が始まってしまいます。
食べている最中から血糖値がグングン上がってくるので、まずお腹の中に食物繊維を入れて、胃の中で落ち着いた後に、ある程度時間が経ってからお米を食べるのがポイントです。
食後高血糖に注目して生活をすると、血管の老化防止や老け防止につながっていくので、ぜひとも意識してみてください。
(TEXT:山田周平)
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画像提供:Adobe Stock
石黒成治先生
消化器外科医、ヘルスコーチ。
1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸癌外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。Dr Ishiguro YouTubeチャンネル登録者数は37万人超(2024年1月時点)。