消化器に異常がないのにも関わらず腹痛や便秘、下痢などの症状が慢性的に見られる「過敏性腸症候群」は、日常生活に支障をきたす病気。ストレスや不安などが原因で引き起こされるといわれているため、当事者はどう向き合えばいいのか悩んでしまう。
看護師の淡雪さん(@IBS57060891)は一時期、「死にたい」と思うほど、この病気に悩まされたが、苦しみを話せる存在と出会ったことで考え方が変わった。
過敏性腸症候群の激しい下痢やガス症状に苦しんで
中学生の頃から、緊張するとお腹を下すようになったという淡雪さん。高3の時、受験のストレスによって症状は悪化。1日7〜8回も下痢をするようになり、内科を受診。過敏性腸症候群と診断された。
過敏性腸症候群の症状には個人差がある。下痢や便秘の他に、お腹が張ったりおならが漏れたりする「ガス型」もいれば、激しい腹痛を伴う便秘と下痢を交互に繰り返す「混合型」も存在する。
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淡雪さんの場合は、下痢に加えてガス型の症状も現れ、お腹の張りやお腹のゴロゴロ音、ガス漏れに苦しむようになった。
一番辛かったのは、浪人生の頃と大学生の頃だ。授業中に何度もトイレに行きたくなり、お腹が鳴ったりガス漏れをしたりした時には周囲の反応に傷ついた。
「辛くて、予備校は辞めてしまいました。大学はなんとか続けることができましたが、かなり辛かったです」
この頃から淡雪さんは心療内科へ通い、心のケアに取り組むようにもなった。
過敏性腸症候群の“オフ会”で心を救われて主催者に
見知らぬ土地で一人暮らしをスタートしたこともあり、大学入学後は症状が悪化。「死にたい」と思うほど辛い日々だった。
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そこで専用のSNSアカウントを作り、過敏性腸症候群のことを吐き出すように。その中で過敏性腸症候群の当事者が集まるオフ会があることを知る。
「たまたま近くで開催される予定だったので、興味半分で行ってみたんです」
そのオフ会には、似た悩みを待つ当事者が10人以上参加。話してみると、共感できることがたくさんあり、心が楽になった。
「同じように戦っている人がこんなにいるんだ、私も頑張ろうと思えました」
心を救われた淡雪さんは再びオフ会に参加しようと思ったが、なかなか主催者が現れず。そこで「自分で開催しよう」と考え、19歳の時、初めて過敏性腸症候群のオフ会を開催した。
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「最初は不慣れでしたが、徐々に計画するのが楽しくなってきて定期的に開催するようになりました。多い時には16〜17名ほど集まり、楽しい会となりました」
オフ会を主催し続けて“当事者の繋がり“を増やす
オフ会で仲間と交流する中で、淡雪さんの心には変化が。過敏性腸症候群であることへのネガティブな気持ちが薄れていき、「前向きに治療しよう、絶対に治して過敏性腸症候群で悩んでいる人の力になるんだ」と思うようになっていったのだ。
「オフ会があったから、辛い症状があっても頑張れました。ひとりじゃないと勇気づけられたし、効果があったものを情報共有できたのも嬉しかった。オフ会は私にとって、大きなものでした」
前向きな気持ちで病気と向き合い始めた淡雪さんは仲間から教えてもらった情報を参考に、お腹や自律神経にいいと言われているものを試すように。
「市販薬や処方薬はもちろん、整体や鍼灸、食事療法も取り入れました。中でも私に効果があったのは、鍼灸とお腹に優しい食事療法でした。ガス漏れ対策として、消臭パンツも使用しました」
地道なセルフケアは実を結び、現在、淡雪さんの症状は改善傾向にある。
「過敏性腸症候群は周りになかなか理解されないどころか嫌がられることもあり、本当に辛い。私もそのひとりだったから、痛いほど気持ちが分かります」
そう話す淡雪さんは、今もオフ会を主催している。今年の夏には、お腹に優しい米粉を使って「タコパオフ会」を開いた。
オフ会終了後には「前向きになれました」というメッセージを貰い、やりがいを感じることもある。
「飲み友ができたとか、今まで怖くて恋愛ができなかったけれどオフ会で出会った人とお付き合いしたという話も聞くことがあり、嬉しくなります」
過敏性腸症候群は、ひとりで抱え込まないことが大切。機会があれば勇気を出して、オフ会に参加してみてほしい。そう伝える淡雪さんは、同じ苦しみを抱える仲間の“これまで”を優しく労わる。
「毎日、辛い思いをしながら頑張って生きていて素晴らしいです。諦めなければ、いつか良い方向に進むと私は信じていますし、あなたが良くなった時、人の痛みがわかる優しい人間になっていると思う」
ひとりで病と闘う苦しさを知っている淡雪さんは、自分へのDMで辛さを吐き出してほしいとも話す。
「自分が夢中になれるものを見つけて、少しでも過敏性腸症候群のことを忘れられる時間を作ることも大切かもしれません」
そんなアドバイスを送れるのも、淡雪さんが過敏性腸症候群と真摯に向き合ってきた証だ。淡雪さんが明かす“これまで”や、辿り着いた“今”は、笑顔を失った当事者に刺さることだろう。
(まいどなニュース特約・古川 諭香)