【写真】楠木ともり&田辺留依のかわいすぎる撮り下ろしショット
■新しい「初音ミク」の魅力は人間らしい“脆さ”
『プロセカ』は、バーチャル・シンガー「初音ミク」たちの楽曲を演奏するリズムゲームとしてはもちろん、魅力的なオリジナルキャラクターたちで結成された音楽ユニットごとのストーリーも高評価を博している人気ゲーム。楠木演じる「宵崎奏」と田辺演じる「朝比奈まふゆ」は、ボイスチャットツールを通して楽曲制作をしている正体不明の音楽サークル“25時、ナイトコードで。(以下、ニーゴ)”というユニットのメンバーで、本作の彼女たちはとある理由から歌えない「初音ミク」のために曲を作ることになる。
――ゲームとして展開してきた『プロセカ』が、劇場版アニメになると知ったときはどんなお気持ちでしたか?
田辺:各ユニットからたくさんのキャラクターと、そのセカイのバーチャル・シンガーたちが登場し、ゲームにはいない新しい「初音ミク」を救うための物語が描かれるとのことで、新鮮な気持ちで収録に臨ませていただきました。
楠木:私は、ゲームで描かれてきたストーリーをアニメにするのだと思っていたので、本作ではまた違った『プロセカ』の世界観が見られるのが非常に嬉しかったです。それから、“ニーゴ”のメンバーは各々が色んな悩みを抱えているのもあり、そこがどんなふうに描かれるのかも楽しみでした。
――ご自身が演じられているキャラクターの紹介をお願いします。
田辺:「朝比奈まふゆ」は、普段は明るく誰からも頼りにされるような優等生的存在なんですが、本当は家族関係で大きな悩みを抱えている子です。
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外側の明るい性格と、内側の暗い性格という2面性があるので、ゲームの収録では「明るい性格の方を録ってから内側の性格を録りますか?」と別録りを提案してもらうこともあったのですが、そこは、普段2面性を使い分けて生活している「朝比奈まふゆ」を表現するために両方とも同じタイミングで収録するようにしました。
楠木:「宵崎奏」はすごく温かい家庭に生まれてきて、幼少期から音楽の才能があったんですけれど、自分の音楽でお父さんのことを絶望させてしまったトラウマがあります。その経験から「誰かを幸せにする曲を作らなきゃいけない」「自分の楽曲で誰かを救わなきゃならない」という脅迫観念みたいなものにかられて生活してきた子なんです。
自己犠牲タイプというか、誰かを救うために努力を惜しまないけれど、その分自身のことがおざなりになってしまうのが彼女の抱えてる暗い部分ではあって。ゲームではそういったシナリオもある中で、私は彼女に自分自身のことをもっと大切にしてもいいんだよって伝えたいし、ユーザーの皆さんも同じように考えていると思います。ただ、なりふり構わず誰かを救うために努力ができるところは彼女のよさだとも思うので、不安定で儚いところはあるけれど、強い意志を持っているというギャップがあるキャラクターです。
――本作では新しい「初音ミク」が目標や希望を失っている人たちに歌を届けようと奮闘する姿が描かれますが、台本を読んだときの感想はいかがでしたか。
田辺:私自身「初音ミク」と出会って救われた瞬間がありまして、本作で登場する人たちも彼女に出会うことで自分の中のセカイが変わっていくんです。そこが個人的にも刺さって、グッとくるものがありました。あと、劇場版で新しく登場する「初音ミク」は日常シーンもすごくかわいいんです!
楠木:劇場版の「初音ミク」は、すごく人間的というか、脆い部分が描かれているキャラクターだなと思いました。今までの『プロセカ』の「初音ミク」って、バーチャル・シンガーであるが故の、気持ちに寄り添ってくれる部分もありつつ、どこか一歩引いたところで見守ってくれてるような存在だったと思うんです。でも、本作ではいつも彼女に支えられてる私たちが逆に「支えたい」と思うような存在になっていて。それがまた新たな「初音ミク」への感じ方になっている気がします。
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■新曲は“ニーゴ”の世界観が落とし込まれた「真骨頂」ともいえる楽曲に
――ゲーム版と本作でキャラクターの演じ方を変えたりはされましたか?
田辺:「朝比奈まふゆ」の演じ方は特に変えていませんが、現在進んでいるゲーム版のストーリーとも時間軸が違うので、感情の出し方はすごく意識して演じていました。
楠木:「宵崎奏」も時間軸で大きく変わるキャラクターではないんですけれど、本作ではリーダーとしての立ち回りをストーリーとして強く描きたいのかなっていうのを感じました。なので、ちょっとおとぼけや儚い感じというよりは、ここぞってときに決めてくれるカッコいいリーダーを意識して演じてる部分もあったかなと思います。
――本作では、各ユニットの新曲が流れました。新曲に込められたテーマや思いなどあれば聞いてみたいです。
田辺:「みんなを救いたい」「ミクを救いたい」という今までの“ニーゴ”とはちょっと違う思いや視点で曲を歌ったんですが、彼女たちらしく「自分も苦しいけど大丈夫だよ」ってだれかに寄り添えるような楽曲だったんじゃないかと思います。
楠木:うん。まさしく“ニーゴ”の「寄り添う」という、普段から掲げているテーマじゃないですけど、世界観がすごく落とし込まれている曲だと感じます。途中でポエトリーリーディングのような、歌なんだけれどセリフっぽく歌唱するパートがあって、そこは“ニーゴ”の真骨頂というか魅力が発揮されてる部分でもあるので、ぜひたくさん聞いていただければなと思います。
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田辺:収録は、「東雲絵名」役の鈴木みのりさんや「暁山瑞希」役の佐藤日向さんも含め“ニーゴ”全員で一緒に録りました。…なんですが、なぜか全員の席が結構離れていて…。
楠木:そうだったね(笑)
田辺:4人でギュッと集まればいいのに、離れたところで座っているのがちょっと“ニーゴ”っぽいなって感じました。
楠木:バランス取っちゃったね。でも全然喋らないとかじゃなくて、みんな『プロセカ』が好きで色んな思いもあるから「ここのセリフってこうやった方がいいかな?」とか「ここのアドリブどうする?」とか、現場で初めてシナリオに関してディスカッションを交わすことができてとても楽しかったです。
――おふたりがバーチャル・シンガーに出会うきっかけとなった曲などあれば教えてください。
田辺:私は絵を描くのが好きで、学生時代に友人から「初音ミク」を教えてもらったのがきっかけでした。音楽だと「メルト」が1番最初に触れた楽曲で「こんな世界があるんだ」っていうのを知って、バーチャル・シンガーの世界にのめり込んでいきました。本当に学生時代を支えてくれた存在なので、こうやって「初音ミク」たちの楽曲を声優として歌わせていただけるのがすごくすごく幸せだなって思います。
楠木:私も学生のときに友人から教えてもらって本格的にバーチャル・シンガーの曲を聴きはじめたんですけれど、一番最初の出会いだともっと前で、ネットサーフィンをしているときに、たまたま「Ievan Polkka」っていう曲と出会ったのが「初音ミク」に初めて触れた瞬間だったと思います。最初はバーチャル・シンガーってロボット音声みたいな印象があったんですが、その友人が「息を吸う音が入ってるんだよ」「この歌い方ほんとに人っぽくてすごいよ」など、手厚く教えてくれてどんどんハマっていきました。
――最後に本作の見どころと、公開を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
田辺:ゲームでは全てのユニットが集まってストーリーが展開していくっていうことがなかったので、みんなが集まって「ミクを助けたい」という思いがひとつになっていくのが見どころだと思います。新しい楽曲もそれぞれユニットごとに違った魅力があるので、劇場版を観終わった後は曲も聴いて楽しんでください。
楠木:『プロセカ』のよさって、「初音ミク」たちバーチャル・シンガーが歌う楽曲と、ついのめり込んでしまう魅力的なストーリーとキャラクターにあると思うんです。今回の劇場版もまさしくで、楽曲が本当に素敵ですし、そういった音楽の持つパワーみたいなものがキャラクターたちを通して描かれています。『プロセカ』ファンはもちろん、知らない人でも間違いなく楽しんでいただける内容になっていると思います。ぜひ、劇場に観にきていただけたら嬉しいですし、1回と言わず何度でも劇場に足を運んでみてください。
(取材・文:舘はじめ 写真:吉野庫之介)
『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』は、1月17日より全国公開。