ゴミ屋敷から発見した「230万円で売れた“真っ黒のモノ”」の正体は…ゴミ清掃員芸人が語る「衝撃的なゴミ屋敷」の実態

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2025年02月08日 09:01  日刊SPA!

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柴田さんが実際に清掃を行ったゴミ屋敷の現場 
写真/柴田さん提供
 現在「ゴミ屋敷」が社会問題化している。環境省の最近の調査によれば、ゴミ屋敷であると自治体に認知されたものだけでも5千軒を超える。社会の高齢化に伴い、この数は増加することだろう。
 実は、ゴミ屋敷化するのはお年寄りの家とは限らない。若い人の住まいがゴミ屋敷になっている例は枚挙に暇がないのだ。

◆心が病むからゴミ屋敷化するとは限らない

 2016年から、ゴミ屋敷の片付けに携わってきた芸人の柴田賢佑さん。前回の記事では、想像を超えるゴミ屋敷の実態について様々な話をうかがった。続くインタビューでは、ゴミ屋敷とその住人について、より奥深いテーマに迫る。

 *  *  *

——ゴミ屋敷のエピソードをうかがって、そこの住人には、心の闇とかセルフネグレクトみたいなものがあるのかなと感じましたが……。

柴田:ごみ屋敷の住人には、たしかに心が病んでいる人もいらっしゃいます。でも、外の世界では、しっかりと社会人をしているパターンも多くて、ここが大きな謎です。ゴミ屋敷化するきっかけとして、離婚、死別、いじめに遭ってからという人は多いので、それで心を病んでしまって……というシナリオを描きやすくはあります。でも、そればかりではないのです。

 僕が仮に単身者で、すごく忙しくなったとしたら、住まいがゴミ屋敷化する可能性が高いと思います。なぜなら、もともとそういう気質を持っているからです。実際、相方と住んでいた時期は、共同スペースがゴミ屋敷化していました。

 でも、これが心の病かと言われると、どうかなのかなと思います。部屋の片付けにおいて「ここまではやる」「ここからは面倒」あるいは「キャパオーバーでやらない」という線引きが人それぞれありますよね。その許容範囲が、ゴミ屋敷化してしまう人にとっては「膝下までのゴミならOK」というだけの話かもしれません。

——精神的な影響もあるかもしれませんが、ゴミを放置しておくことにより、健康面においても悪い影響が出そうですよね……。

柴田:もちろん、ゴミ屋敷に住むというのは、衛生面などからして明らかに良いことではありません。以前、ゴールデンレトリバーが飼われているゴミ屋敷に行ったのですが、目が白内障のようになっていて、老犬かなと思ったら実はまだ2歳でした。ゴミ屋敷とは、ペットも住人もダメになっていく環境だという認識は持ってほしいです。

◆日本の豊かさも反映する「ゴミ屋敷の増加」

——ゴミ屋敷といっても奥が深いですね。

柴田:そうなんですよ。その流れで興味がわき、ゴミ屋敷の歴史を調べています。関連する文献が全然ないので苦戦していますが、例えば江戸時代には、酒器だらけのゴミ屋敷とかあったはずです。そういったことを探っていくと、面白い内容になるのかなと。

 ちなみに、ゴミ屋敷が量産されたのは高度経済成長期以降の話です。それより昔は、生ゴミなどを当たり前のように道端に捨てていたんですね。それが高度経済成長になって、コンビニとかできて、手軽にいろいろな物が買える時代になると、ゴミも増えました。同時にゴミ廃棄の決まりごとが厳しくなって、ゴミ屋敷が増え始めたのです。

 見方を変えれば、まだ食べられるものが次々にゴミになっていくのは日本が豊かである証拠といえます。これが食料難の国だったら、そんなにゴミは出ないでしょう。ある意味、ゴミ屋敷というのは贅沢な現象なんですよね。

◆ゴミ屋敷化する親の家はどうする?

——ちなみに、ゴミ屋敷になりつつあるお年寄りの家庭が多いと聞きました。子どもが親に片付けを促すと拒否されやすいと思いますが、何かアドバイスはあるでしょうか?

柴田:親御さんご本人が、ふと片付けたいと思う瞬間があるものです。そんな雰囲気を見せたら、「片付けの専門業者があるから、ちょっと聞いてみたら?」と話をもちかけるのがいいでしょう。波乗りと一緒で、なかなか来ないと思っても、そのタイミングは必ずあります。手遅れにならないうちに、そのきっかけを逃さないことが大事です。そのときの話しかけも、強制的な口調でなく、寄り添ってあげるような優しさをにじませるといいですね。

◆ゴミの山から発見された「230万円で売れたモノ」

——ところで、ゴミ屋敷から回収したゴミの中にも、まだ使えるものはあると思います。そういったものは、どう処分するのでしょうか?

柴田:不動産屋さんからの依頼などは、回収したものは自由裁量で処分できることが多いです。全部が全部ゴミではないので、極力どなたかが再利用できるようにしていました。その一手段として、ネットオークションで売却したりもします。

 例として、オーディオ機器で埋め尽くされていた部屋を片付けたことがありました。こちらで買取しますと伝えたのですが、依頼人はすべて要らないと言ってきたので、リユースできそうなものはヤフオクで売ることになりました。その一つに、直径30cmほどの真っ黒い鍋みたいなものがありまして……。一体何なのか、まったく不明。

 とりあえずヤフオクに出品したところ、100を超える入札合戦の末に、なんと230万円で落札されました。実はこれ、米国のビンテージブランドのスピーカーの部品だったのです。依頼者に還元しようと連絡したのですが、最初は要らないと断られたものの、最終的になんとか受け取っていただきました。

◆ゴミと思えるものでも需要はどこかにある

——その人はゴミだと思っても、他の人からするとゴミではないものがあるわけですね。

柴田:そうですね。ほかのゴミ屋敷でのお仕事でも、うちわに数万円の値段がついたりと、意外な掘り出し物が見つかることは稀にあります。ただ僕としては、それで稼ごうというよりも、リユースというかたちで人から人へと最後まで受け継がれていくことが大事かなと思います。

 例えば、新品同様のTシャツが要らないという人がいるとします。その人からすると、このTシャツはゴミです。それを欲しいと引き取った人が、ヨレヨレになるまで着て不要になったとします。でもその状態でも、欲しいという人はいるかもしれない。そうしてリユースが循環して、本当に誰も要らないという状態になってはじめて、それはゴミになるというのが、僕の感覚なのです。

 だから、ゴミと思えるものでも需要は必ずどこかにあって、行き先を探してあげることも、この仕事の大事な一部なのかなと思います。

取材・文/鈴木拓也

【柴田賢佑】
1985年北海道生まれ。20歳で芸人を目指し上京。2007年に柳沢太郎とお笑いコンビ「六六三六(ろくろくさんじゅうろく)」を結成。2016年より、芸人活動のかたわら、生前整理、遺品整理、ごみ屋敷の片づけなどを行う会社に勤務。2024年にお片付け団体「お片付けブラザーズ」を設立し、関東を中心に、片づけの手伝いやリユースサポート、発信などを行っている。著書に『ごみ屋敷ワンダーランド 〜清掃員が出会ったワケあり住人たち〜』(白夜書房)がある。

X:@ATAMADAINAMIC

【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

このニュースに関するつぶやき

  • 「依頼者に還元しようと連絡した」すごいな!マシンガンズの滝沢以外にも、こんな清掃芸人がいるのか!俺なら絶対パクッてるわ!Σ(゚Д゚)
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