《支給額は増えるが…》「年金」4月から“実質年2万1000円の減額”に!いったいなぜ?識者解説

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2025年02月11日 11:10  web女性自身

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「1月24日、厚生労働省は’25年度の公的年金の年金支給額を、前年度から1.9%引き上げることを発表しました。一見、約2%アップのようですが、物価の上昇に歯止めがかからない状況を考えれば、実質的には目減り。つまり“減額”されているようなものです」



こう話すのは、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんだ。



「1.9%引き上げられることで、’25年度は夫婦2人分の老齢基礎年金(国民年金)を含む標準的な厚生年金の金額は、月額23万2千784円。前年比で月4千412円増となります」(柏木さん、以下同)



この厚労省の発表は、同日に総務省が’24年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)を公表したのを受けてのもの。政府は年金支給額をどのようにコントロールしているのか。柏木さんが解説する。



「年金支給額の決定は、’04年、小泉政権時に導入された『マクロ経済スライド』というシステムに基づいて調整されています。このシステムでは、年金の上昇分は、物価や賃金の上昇よりも低く抑えられます。少子高齢化の進む日本で年金制度を維持するための施策とされています」



厚労省が公表した人口動態統計の速報値では、’24年1〜11月生まれの子どもの数は66万1千577人にとどまり、通年で69万人程度と初めて70万人割れする可能性が指摘されている。



「少子高齢化がここまで進んでしまった状況で、現役世代の負担を少しでも軽減するために、マクロ経済スライドが必要だと国は説明しています」



物価が上昇し、賃金も上昇している場合、物価と賃金の上昇率の低いほうを基準として、そこからマクロ経済スライドによるスライド調整率を差し引いたものが、年金の改定率となる。



「’24年は物価変動率が2.7%で、名目賃金変動率が2.3%でしたので、低いほうである賃金変動率2.3%から調整率0.4%を引いた1.9%分が、年金額改定率となったのです」



この改定率1.9%による月4千412円増を、「年金額がアップした」と手放しに喜んではいられない。そもそも年金調整率が、物価と賃金の上がり幅より「低く」設定されているからである。



「総務省が発表した家計調査によれば、65歳以上の無職の夫婦2人世帯の消費支出は、たとえば’24年10月度は26万5千411円となっています。’25年度の年金月額23万2千784円では、3万2千627円ものマイナスとなってしまうんです」



また、高騰し続ける物価と照らし合わせて今後の見通しを考えてみると、私たちの損失はもっと深刻なことがわかる。仮に、’25年度に物価上昇率と同じく2.7%分年金が増額するならば、月額では23万4千538円受け取れるはずだ。



しかし、マクロ経済スライドの実施で改定率1.9%となるため、前述のとおり月額は23万2千784円にしかならない。不足分は月額にして1千754円。年額に換算すると、じつに2万1千48円もの、実質的な“減収”となってしまうのだ。



“まやかし”とも捉えられるこの仕組みはいつまで続くのだろうか。



「マクロ経済スライドは、今後30年ほどは採用されるという見通しです。つまり、私たちの年金が“減額される感”はこの先、ずっと続くことになります」



となると気になるのは、物価にも深くかかわってくる世界情勢や、世の中の景気、そして日々の生活にかかる支出だ。海外に目を向ければ、トランプ大統領が就任したアメリカの動向は、日本経済に最大の影響を及ぼすのだが……。



「トランプ政権はカナダやメキシコからの輸入品に一律25%関税を課すとし、中国からの輸入品にも一律関税を課す可能性を示唆しました。その矛先が日本に向けば、日本の強みである自動車などの輸出産業が大打撃を受けます。すると、昨年の春闘のような賃上げムードは一気に沈滞、リストラや早期退職を募る企業が増える事態になるでしょう」



強引に「アメリカ・ファースト」を進めるトランプ大統領とくみしていけるのか不安の声が高まっているのが石破首相だ。1月24日の通常国会での施政方針演説では、のんきにも「楽しい日本を目指す」と述べている。その政府の施策の一環である「年収103万円の壁」の議論では、所得税が発生する基準を政府案の123万円に引き上げることができれば、’25年度の個人消費が「0.1%程度押し上げられる」と首相は説明したが……。



「この議論は、あくまで働く人の収入の話。年金の収入だけで生活している人や、これから年金を受給する世代が65歳以上になって無職になった場合には、恩恵が受けられないのです」



政府には、現役世代への策を手厚くしていくことで、現役世代の人口を増やし、年金などの支出を抑えるもくろみがあるようだ。



「現在の年金は65歳から支給されていますが、もはや65歳まで働くことは“義務化されている”ともいえます。その年齢は今後、引き上げられることが予想され、“70歳まで働く”のが努力目標とされ、いずれは“義務”となるかもしれません。



当然、年金は受給開始のタイミングが遅くなり、かつ支給額も減らされる……。将来的に受給する私たちの世代を含めて、政府の“高齢者いじめ”が加速する恐れがあります」



老後はのんびり暮らす、という考えはますます通用しない時代になっていきそうだ――。

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