「ハレの日」が続く卒入学シーズンは、普段は着ない和服を着るいい機会。だが、周囲の人々への礼儀をわきまえつつ、華を添える明るい着こなしをするのは至難の業だ。そんなときに参考になるのが、美智子さまと雅子さま。株式会社「きもの人」代表取締役の伊藤康子さんに、ロイヤルな和装についてそれぞれ解説してもらった。
伊藤さんいわく、豪華な中にも慎み深さがあるのが美智子さまの着こなしの特徴だという。
「着物は華やかな柄や色を用いたものが多いですが、帯揚げ、帯締め、帯留めの色などで全体的な色数を抑えることで、モダンでセンスが光る仕上がりとなっています。
また、季節感、祝意、訪問先への礼節などを表現することにたけており、見事に着こなされています。ご多忙な中で、着物や帯の力を熟知し、味方につけて、フル活用されていることが感じられます」(伊藤さん)
雅子さまは、やわらかい色味と優しい草花柄で相手を引き立てるお心遣いが印象深い。
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「皇后という立場上、国際親善では多くの方々にお会いして、四方から見られることになります。その際は、ご自身が安心してまとうことができる色柄が必要です。
そこで雅子さまは、温かいお色と伝統的な古典柄、なかでも季節を感じる草花の柄をよくお召しになっています。もともとかわいらしい小花柄などがお似合いですし、なにより自然を愛す、愛情深いお人柄の表れでしょう。最も人目を引く場面で、素直で純粋な、相手を思いやったお着物を選ばれる雅子さまが印象的です」(伊藤さん)
【美智子さま】
《1958年11月:婚約発表》
金刺繍の振袖に最高格の丸帯で華やかに
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「藤や牡丹の花などを、金刺繍などの手刺繍も加えて描いた、豪華で洗練された古典柄の中振袖です。家に伝わる『七宝華紋(しっぽうはなもん)』の丸帯は、今ではほとんど作られなくなった最高格の帯。振袖の柄と帯を赤で合わせ、色数を整えることで、多くの華やかな色と柄にまとまりが出ています。洗練されたコーディネートです」
《1971年6月:アフガニスタンご訪問》
“喜びが重なる”二重太鼓で礼を尽くされて
「暑い中、涼やかに見える白地に水色の訪問着に、知的な白銀の袋帯を締めていらっしゃいます。訪問着には、季節に合わせて水芭蕉が描かれており、日本からの思いを込めたお姿と言えます。お太鼓が二重になることから、袋帯には“喜びが重なる”という意味もあります。青い帯締めで全体を引き締めた、オシャレ度の高い着こなしです」
《2012年5月:イギリスご訪問》
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海外ご訪問では菖蒲で日本の四季を表現
「本金泥で染められた横に伸びる霞模様は、美しいチャコール色の生地との対比で豪華さが際立っています。袋帯は、金箔地に菖蒲の青紫のお花と緑の葉が華やかに美しく織られたものです。菖蒲は5〜6月の花ですから、季節を表現することで、英国王室に礼を尽くしたお姿と言えます」
【雅子さま】
《1993年4月:納采の儀》
美智子さまから受け継がれた丸帯で豪華に
「末広がりの形状で、繁栄や開運の意味を込めた扇面文の本振袖です。光沢のあるオレンジの生地に、露芝や菊が描かれています。丸帯は美智子さまから受け継がれた『七宝華紋(しっぽうはなもん)』。朱赤の帯締めと、エレガントなオレンジの絞りの帯揚げがアクセントになり、納采の儀にふさわしい、日本を代表する豪華さが伝わってきます」
《1994年11月:オマーンご訪問》
海外ご訪問は古典柄で統一して日本文化の懸け橋に
「金箔に、扇子や松、竹、梅の柄が染められています。袋帯も金銀をベースにした古典柄です。海外ご訪問は相手国への礼儀を示すとともに、日本の文化を伝える必要がありますが、四季を表現する伝統的な絵柄をお召しになることで、エレガントに実践されています。白の帯締め、帯揚げが、さらに気品を加えています」
《2024年7月:「第10回太平洋・島サミット」出席の首脳らと茶会》
苦難を流す波柄と無病息災の菱文様で祈りを
「薄青色の地色に糸目友禅で大きく波を描き、夏の涼やかさを表現した訪問着です。波や流水は、『水は濁らず常に清らかで、苦難や災厄を流し去る』という意味を込めた吉祥柄。白地に菱文様の夏袋帯には、子孫繁栄や無病息災の意味が込められています。薄い水色の平組金糸の帯締めが、ワントーンの着こなしに爽やかさを添えています」
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