火曜ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』の場面カット(C)TBS 俳優の芳根京子が主演を務める、TBS系火曜ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』(毎週火曜 後10:00)。2年間の研修“スーパーローテーション”で巡った、消化器外科、消化器内科、泌尿器科、救命救急科などで患者との向き合い、同期の大切さ、チーム医療などを学び、成長してきた若月まどか(芳根京子)。いよいよ3月18日(火)に迎える最終回では、まどかは何科を選択することになるのか。本作を手掛ける塩村香里プロデューサーに芳根の印象や、最終回の見どころを語ってもらった。
【写真多数】芳根京子、鈴木伸之、高橋ひかる、大西流星ら…キャストを一挙紹介!■体当たりでまどかに挑む芳根の姿がキャラクターの核に
――芳根さんの撮影現場での印象を教えてください。
芳根さんは座長として撮影現場を明るく盛り上げてくれていました。特に、同期の4人はもちろん、(乳腺外科医・内田真奈美役の)森カンナさんや(麻酔科医・本郷新役の)溝端淳平さん、さらに先輩の(泌尿器科医・診察部長の角田茂司役の)奥田瑛二さんや(消化器内科医の手塚冴子役の)木村多江さん、(救命救急センター長・城崎智也役の)佐藤隆太さんたちまで、まどかのように誰とでも臆せずに自然に接している様子でした。芳根さんが中心にいることで撮影現場全体が温かい雰囲気に包まれていたように思います。
撮影で特に印象に残っているのは、第1話の心臓マッサージのシーンです。芳根さんは全力で演じていて、そのひたむきさがまどかのキャラクターを作るヒントになったと感じました。まどかは、最初はのんきでマイペースで「なんとかなるっしょ」と楽観的な人物だけど、実は内に熱い思いを秘めている。そして、その思いがいつか爆発するキャラクターだと考えていたんです。その中で、心臓マッサージのシーンを見た時に、その強い芯の部分が一気にあふれ出たように感じました。「なんとなく医者になった」と言いながらも、最初から患者と向き合う大切な気持ちを持っているまどか。その彼女が、さまざまな患者や医師と出会い、成長していく姿を描くのが楽しみだなと、改めて思わせてくれるシーンでした。以降のシーンを作る際にも、その心臓マッサージのシーンは原風景のようにずっと残っていましたね。
また、芳根さんは涙のシーンの全てで違う表情を見せるんです。当然、感情によって涙の出方は変わるものですが、芳根さんのお芝居は、その時どきの感情がしっかりと込められていて、見る側に強く響いてくる。普段の明るく朗らかなまどかと、感情があふれ出るまどか、そのコントラストも非常に魅力的でした。
――まどかの野球好きの一面が毎話細かく表現されていますが、こだわったことはありますか?
原作に「お医者さんだって幸せになりたい」というコピーがあったり、水谷先生が描きたかった“お医者さんの人間らしさ”を表現するために、まどかに推しや好きなものを持たせたいと考えました。そこで、原作でもまどか先生は野球好きだったので、それを大切にしました。ターニングポイントになったのは、球場での撮影時です。横浜DeNAベイスターズのファンクラブの方々にご協力いただいたのですが、皆さんがとても温かかったんです。撮影にもとても協力的で、撮影の合間には芳根さんたちに応援の仕方を教えてくださったり。その経験を通じて、「この設定を中途半端に終わらせてはいけない」と強く感じ、最初の掴みだけで終わらせず、最後までまどかのキャラクターの一部として描き切ることを決めました。
一方で、物語の時系列上の問題もありました。設定を決めた時点では横浜DeNAベイスターズの日本シリーズ優勝は決まっていませんでしたが、優勝が決まったことで、5話で日本シリーズを描く流れになりました。そして、第6話では2025年2月頃を描いているのですが、第7話からは2025年の春が舞台です。ただ、2025年の春以降のシーズン展開は未来の出来事なので触れられません。そこでまどかの患者である吉岡稔さん(金田明夫)との共通の趣味として野球を絡めることで、ファン同士の交流を通じて物語に厚みを持たせることにしました。
さらに、脚本家チームに熱狂的な野球ファンの方がいて、「ファンはこういうことはしません」といった細かい監修をしてもらいました。ちなみに、最終回にはベイスターズファンの方にとってうれしい“隠し球”も用意していますので、楽しみにしていただければと思います。
■鈴木、高橋、大西、それぞれの人柄をキャラクターにも反映
――消化器外科医の菅野尊役の鈴木伸之さんの印象は?
当初、菅野先生をストイックで硬派なキャラクターにしようと考えていたので、私たちが持つ鈴木さんのイメージとピッタリだなと思いキャスティングしたんです。脚本作りを進める中で、鈴木さんが現場で見せる自然体でいる時の柔らかさや、ちょっと抜けた感じに親近感を覚え、キャラクターによりリアルな人間味を持たせたくなりました。例えば、まどかたちには厳しく接するけれど、患者には優しい顔を見せる。同期の本郷には、少し子どもっぽい一面を見せる。そんな多面的なキャラクターにしていったことで、当初よりも温かみのある菅野先生が生まれたと思います。
――同期の研修医・尾崎千冬役の高橋ひかるさんは?
私と一緒に担当している松本桂子プロデューサーや本作の演出のチーフをしている井村太一がドラマストリーム『村井の恋』(TBS/2022年)でご一緒していて、アグレッシブにさまざまな役柄に挑戦する方という印象がありました。千冬は今までの高橋さんとは違うタイプの役柄ですが、まどかや同期で年上の桃木健斗(吉村界人)に対して遠慮なくズバズバと言うキャラクターです。一方で、恋をするとかわいらしさが際立つ。そのギャップを高橋さんに演じてもらいたいと思いました。また監督陣とも密にフィードバックがしやすく、それに貪欲に応えてくださる方だったので、千冬というキャラクターも原作以上に深みが出たと思います。
――千冬と同じく同期の研修医・五十嵐翔役の大西流星さんについても教えてください。
私も松本もドラマ特区『夢中さ、君に。』(MBS/2021年)などでご一緒したことがあり、そこでアイドルとしてのかっこよさだけでなく、少し毒舌なところや1歩引いて周りを見守るような温かさを持った方だと思っていました。本作でまどかと仕事や生き方、恋愛についてなどいろいろな話ができるオリジナルキャラクターを作りたいとなった時に、大西さんの持つ雰囲気がピッタリだと思い、お願いしました。実際に演じていただくと、想像以上に温かみのある人物になりました。当初はもう少しズバズバとものを言うキャラクターでもいいかと思っていましたが、まどかが悩んでいるときに優しく背中を押すシーンなどを見て、「同期のドタバタをそっと見守るお母さん的な存在」という新たな側面が見えました。そこで第5話では落ち込んでいる桃木を慰めるなど、見守るシーンを増やしたんです。家を継ぐというプレッシャーの中、五十嵐がどんな答えを出すのかも、今後の見どころです。
■幅広い層が医療に関心を持つきっかけに――ドクターKとQ太の人形劇
――本作では難しい医療用語が出てくると、ドクターKとQ太の人形劇で説明してくれます。この人形劇を取り入れたきっかけや制作過程について教えてください。
まどかがお医者さんになったきっかけを、特別なものではなく、ごく自然なものにしたいと考えていました。よくある「親が医者だったから」といった理由ではなく、多くの人が自分の進路を選ぶ時に感じる「なんとなくこの大学に入った」「大学に入ってから将来を考えればいい」というような感覚を大切にしたいと思ったんです。
実際の医師たちに取材をさせてもらった時に、漫画やアニメ、ドラマの影響で職業を選んだ方もいらっしゃったんです。そこでまどかの幼少期にも医療に関心を持つきっかけとなる作品を登場させようと考えたのですが、その頃に松本がある人形劇に出会ったことが大きな転機になりました。医療を描くドラマはどうしても大人向けのイメージが強くなりがちですが、人形劇を取り入れることで、若い世代にも親しみやすく、微笑ましい要素として受け入れられるのではないかと考えました。実際に制作した人形はとてもかわいらしく仕上がり、ドクターKに大塚明夫さん、Q太に大谷育江さんがそれぞれ声を吹き込まれたことで魅力的なキャラクターになりました。当初はまどかの幼少期の思い出の人形劇として登場するだけの予定でしたが、これを回想シーンで終わらせるのはもったいないと感じました。そこで、難しい医療用語が登場する際に「解説しよう!」と人形劇を活用することにしました。監督陣も「もっと出していいのでは?」と柔軟に提案してくれ、まどかの背後からひょっこり現れたり、モニターに映し出されたりと、さまざまな形で登場することになりました。結果的に、作品の“顔”として愛されるキャラクターになったと思います。
――第9話ではまどかたちが手術に踏み切れないベテラン患者・橋口健太(森田哲矢)を応援するために人形劇を披露しました。このアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
人形劇のオマージュとして人形劇をやるという、少し不思議な展開になっています(笑)。橋口さんをどう説得するか話し合う中で、まどか自身がこれまでドクターKとQ太からエールをもらい、背中を押されてきたことに注目しました。
直接言葉で説得するのではなく、何かワンクッション置いた形で伝えた方が、意固地になっている橋口さんの心にも届きやすいのではないかと考え、「だったら自分たちで人形劇をやろう」という発想に至ったんです。
■病院が変化する中で、まどかが選ぶ選択とは――
――最終回の見どころについて教えてください。
第9話の最後で角田先生が倒れてしまいます。ただ、これは単なるショックな出来事ではなく、2つの意味を持たせています。1つは、角田先生が身をもって、菅野先生に「一歩を踏み出す」きっかけを与えること。これまで見守る立場が多かった菅野先生が、角田先生にきっかけをもらい、まどかに背中を押され、ついに動き出します。
もう1つは、もし病院の中心的な存在であった角田先生に何かがあった時、周囲の医師たちがどう動くのかを描くこと。まどかだけでなく、研修医たちや手塚先生、城崎先生といったベテランの医師たちも、角田先生からバトンを受け取ったと感じ、それぞれが「自分に何ができるのか」と考えるようになります。ここまで角田先生の存在を大切に描いてきたからこそ、病院の変化がより際立つのではないかと思います。最終回では、まどかをはじめとする登場人物たちが、それぞれの道を見つけていく姿が描かれるので、その変化をぜひ楽しんでいただきたいです。