サンデーサイレンスの代表産駒の一頭ネオユニヴァース(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【ネオユニヴァース】
サンデーサイレンスの代表産駒の一頭で、若き日のミルコ・デムーロ騎手が手綱を取り、遅生まれ(5月21日)のハンディキャップをものともせず、皐月賞と日本ダービーの二冠を制覇しました。種牡馬としてはロジユニヴァース(日本ダービー)、ヴィクトワールピサ(ドバイワールドC、皐月賞、有馬記念)、アンライバルド(皐月賞)といった芝向きの大物を出す一方、グレンツェント、ゴールスキー、メイショウムラクモ、アムールポエジー、ウェスタールンドといったダート巧者も出しています。現時点の通算成績は芝409勝、ダート488勝と、わずかにダートが上回っています。
母の父としてはダート向きの傾向が強いものの成績は良好で、芝向きのアエロリット、ダート向きのルヴァンスレーヴ、デルマソトガケなどを出しています。現時点で芝152勝、ダート246勝。エピファネイア、モーリス、ロードカナロアといった種牡馬と相性が良好です。
オーストラリアで孫のブレイブスマッシュが種牡馬となり、すでにGI馬キモチを出しています。ヴィクトワールピサは現在トルコへ渡って供用中。日本に残した牝馬クラークスデールはNHKマイルCを勝ったパンジャタワーを産みました。
母ポインテッドパスは非主流のヨーロッパ血統で構成されています。現代の日本血統のなかでは貴重な要素です。したがって、母方に入ったネオユニヴァースの血は、今後も長期にわたって優れた影響を与え続けるでしょう。
◆血統に関する疑問にズバリ回答!
「アメリカの歴代ナンバーワン種牡馬は?」
単純にリーディングサイアーの回数で比較すれば、19世紀のレキシントン(1850年生)でしょう。同国で16回首位種牡馬の座についています。第1回エプソムダービー馬ダイオメド(1777年生)の直系子孫で、1861年から74年までの14年連続と、76、78年の2回を足した計16回です。これだけ偉大な種牡馬だったにもかかわらず、父系としては徐々に勢いを失い、20世紀末に絶滅しました。
ただ、アメリカ史上最もポテンシャルが高かったともいわれる名種牡馬ドミノ(1891年生)は、父系こそ受け継がなかったものの、レキシントン3×4・4というインブリードを持ち、多大な影響を受けています。同馬はわずか2年間の供用で20頭の産駒しか残しませんでしたが、英オークス馬キャップアンドベルズやベルモントS優勝馬コマンドを含めて8頭がステークスウィナーとなりました。
20世紀以降ではボールドルーラー(1954年生)の8回が最高記録。現役種牡馬のイントゥミスチーフ(2005年生)が6回でそれを追っています。ボールドルーラーは米三冠レースの勝ち馬を1頭しか出せませんでしたが、イントゥミスチーフは今年の優勝馬ソヴリンティを含めてケンタッキーダービー馬を3頭出しています。ただ、ボールドルーラーが出した1頭は、アメリカ競馬史上最強馬ともいわれる三冠馬セクレタリアトです。