2025フォーミュラE東京E-Prixでチームひとつめのホームレースを迎えるローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム。写真はルーカス・ディ・グラッシ 5月16日にフリー走行1回目が行われたABB FIAフォーミュラE世界選手権 2024/2025年シーズン11第8戦&第9戦『東京E-Prix』。同日にはローラ・ヤマハABT、ニッサン、DSペンスキーのチーム代表3名が参加する会見が実施され、それぞれの東京E-Prixへの想いが語られた。
■3つのホームを持つローラ・ヤマハABT、最初の母国東京に凱旋
今季からローラ、ABT(アプト)と提携するかたちでフォーミュラEに参戦するヤマハ発動機にとって、今回の東京E-Prixは初の母国開催になる。会見に出席したABT最高経営責任者のトーマス・ビアマイヤーは「ヤマハにとって非常に重要な週末」と東京E-Prixを評した。
「チームのホームレースは3つあり、ローラのロンドン、ABTのベルリン、そしてヤマハの東京だ。マイアミE-Prixでのルーカス(・ディ・グラッシ)の2位表彰台はすごく重要なレースだったが、私たちはまだ学習段階にある」
「だが、すべてがうまくいけばポイントを獲得することができるのは分かっているし、ときには上位を争えることもある。良い状態で週末を迎えたいし、もちろんポイントを獲得したい。そのためにチームのモチベーションも高まっている」
ローラ・ヤマハABTは、その名のとおり3つの会社がパートナーシップを結んで運営されているチーム。3ブランド混合ということもあり、ビアマイヤーは「異なる3つの文化を持つチームをひとつにまとめるのは容易ではない」と言い、ここまでの7戦を振り返りつつ、チームの目標に向けて進み続けると語る。
「正直に言うと、18ポイント獲得は素晴らしいと思っているが、他チームと勝利を争うためには改善の余地が明らかにある。私たちの明確な目標は勝利とチャンピオンシップを争うことだ」
「フォーミュラEの競争が非常に激しいことは私たちも理解している。そして、まだ大きな課題が待ち受けていることも分かっているが、勝利という目標に向けて旅を続けていく」
■日産自動車が厳しい状態だからこそ勝利を目指すニッサンFE
オリバー・ローランドがドライバーズランキングトップに立つニッサン・フォーミュラEチームからは、バイスプレジデント兼フォーミュラEチームのマネージングダイレクターを務めるトマソ・ヴォルペが参加した。
「チームにとって素晴らしい週末を迎えた。マシンは新カラーリングで、ドライバーはチャンピオンシップをリードし、マニュファクチャラーズ選手権もリードしており、まさに素晴らしいシーズンと言っていいだろう。しかし、まだチームチャンピオンシップはトップではない(編注:チームランキング1位はポルシェ)。すなわち、まだ改善の余地があるということだ!」とヴォルペ。
「冗談はさておき、日本に戻ってこれて本当に嬉しい。私たちにとっては母国レースで、まさに我が家のような場所だ。昨年は非常に良い結果を残すことができているから、今年はパッケージをさらに改善し、強力なドライバーとともに結果を残せることを願っている」
そう語るヴォルペには、親会社である日産自動車が『非常に厳しい状態』に置かれていることについて記者から質問が飛んだ。東京E-Prixの数日前に行われた決算発表では、2025年3月期が6708億円の赤字になることや、計2万人におよぶ大規模人員削減の実施などをイバン・エスピノーサ新社長が明かしていた。
もちろんヴォルペ代表もその状況を理解しており、日産自動車とチームの士気を上げるためにも、多くの応援団が来場するホームレースでの勝利を目指すとコメントした。
「もちろん、ホームレースの東京E-Prixで勝つことができれば最高だ。また、今の自動車業界は全体的に難しい状態に直面しており、それはニッサンも同じ。だからこそ、今回私たちが勝利できればニッサンの士気が高まるはずだ」
「また、東京E-Prixにはニッサン新CEOであるエスピノーサも来場する予定だ。彼と、サーキットに集まる多くのニッサンファンの前で勝利することができれば、本当に素晴らしいことだろうね」
■3度目のピットブーストは「これまでと別物」と予想するDSペンスキー
昨年の東京E-Prixで初代ウイナーに輝いたマキシミリアン・ギュンターを擁すのがDSペンスキー。会見には副チーム代表のフィル・チャールズが参加し「昨年の勝者がいるのはとても心強い。ジャン-エリック(・ベルニュ)とのラインアップも強力で良いコンビネーションだ」と語るも、問題点もあると続ける。
「ひとつ問題なのは、昨年と同じことをしても勝つことはできないということだ。今季のマシンはGEN3エボに変わり、タイヤも昨年と比べて大きく異なる。つまり、たくさんの小さな違いが積み重なっていて、昨年と同じセットアップを当てはめるだけではダメなんだ」
「コースの変更も考慮しなければならず、本当に集中して取り組む必要がある。非常に有能なドライバーと素晴らしいチームを擁していることは分かっているが、今季は細かい部分を正しく調整していく必要があり、それがどうなるか見守っていくしかないんだ」
また、今回の東京E-Prixでは第8戦にシーズン3回目のレース中急速充電『ピットブースト』が導入される。DSペンスキーの技術責任者も務めるチャールズは、ダブルヘッダーレースでの「微妙な違い」を説明する。
「過去2回ピットブーストが導入されたレースでは、どちらも周回数は同じだったが、東京E-Prixはピットブースト導入の第8戦は35周、ピットブーストがない第9戦は32周で周回数が異なる。そうなるとエネルギー管理が変わってくる」
「つまり、以前のレースでは同じ周回数のレースを通して、マシンに3.85kWの余剰エネルギーが蓄えられていたが、今回は周回数が異なるのでそうではない。つまり、東京E-Prixは両レースともエネルギー管理が難しく、エネルギーが不足気味ということだ」
「また、今回はピットブーストのウインドウがかなり長くなっており、前回のピットブーストレースとは別物になるだろう。非常に興味深いレースになるだろうし、何よりも第8戦は雨予報だ。これまでの経験が役に立つはずだが、天候の違いも考慮に大きく入れなければなならないはずだ」
三者三様の声を聞いた2025フォーミュラE東京E-Prixのチーム代表会見。今年は土曜日と日曜日にレースが行われるダブルヘッダー、まず17日の第8戦で笑うのは誰になるのか。ピットブーストを含め、見どころの多い一戦になりそうだ。
[オートスポーツweb 2025年05月17日]