【トライアスロン】五輪メダルから遠ざかった現状 オリ・パラ合同強化の新体制で結果を出せるか

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2025年05月17日 21:03  日刊スポーツ

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エリート女子でゴールに向かって力投する林愛望(左)(撮影・井上学)

<トライアスロン:世界シリーズ横浜大会>◇17日◇横浜市山下公園周辺特設コース



28年ロサンゼルスオリンピック(五輪)、32年ブリスベン五輪に向けて、日本トライアスロンのメダル獲得作戦がスタートした。五輪、世界選手権に次ぐ世界シリーズ(WTCS)に日本選手15人が出場。20歳の林愛望(日本福祉大・まるいち)が日本女子の2番手となる25位でゴールするなど、7人のWTCS初出場組が躍動した。


林らは日本トライアスロン連合(JTU)が今年1月に発足させた「次世代ナショナルチーム」のメンバー。同チームのヘッドコーチに就任した五輪4大会出場の「ミスター・トライアスロン」田山寛豪氏は「この大会で、選手たちはいい経験を詰めたはず」と話した。


「五輪メダル獲得」は、日本トライアスロン界の悲願だ。パリ五輪実施32競技のうち、過去を含めてメダルがないのはハンドボール、ラグビー(7人制)、ローイングとトライアスロンだけ。「メダル獲得は最大の目標」と田山ヘッドコーチも力を込めた。


2000年シドニー大会から正式競技となって日は浅いとはいえ、東京大会からのスケートボードはメダル量産競技、スポーツクライミング、サーフィンはデビュー大会でメダルを獲得し、パリ五輪で初採用のブレイキンもいきなり金メダルをとった。これまでメダルのなかった近代5種がパリ五輪で銀メダルを獲得し、完全に置いていかれた。


過去にはメダルのチャンスもあった。00年シドニー大会から全大会に男女の代表を送り、08年北京大会女子では井出樹里が5位入賞。16年リオデジャネイロ大会は女子の上田藍が世界ランク3位で臨むなど、メダルは手の届くところに見えていた。


ところが、表彰台は近づくどころか遠ざかった。パリ大会男子はニナー賢治の15位、女子は高橋侑子の40位が最高。1カ国1チームで「可能性あり」とされた混合リレーも初めて実施された東京大会で13位、入賞すらできなかった。


上位の顔ぶれが変わらないのも課題。女子は庭田清美の時代から井出樹里、上田藍と続き、近年は昨年引退した佐藤優香と高橋侑子の時代が長かった。WTCS横浜大会の日本人トップは第1回の井出を除けば高橋がこの日が6回目、上田と佐藤が4回。男子も田山が日本選手権を11回制するなど、目立った若手の台頭がない。


「強さ、速さだけでは勝てない。駆け引きなど経験値が順位を上げるところがトライアスロンの魅力でもある」と田山ヘッドコーチは話しながらも「だからこそ、そこを若手がどう脅かすか」。次世代担当の立場で「待ってろよ、エリート」とも言った。


悲願のメダル獲得のために、JTUはパリ五輪後、強化体制を一新した。次世代ナショナルチームの発足とともに、柱となるのがオリ・パラ合同強化。パラリンピック代表のヘッドコーチにシドニー五輪代表の福井英郎氏を据え、両代表チームが連携を深めて「チームジャパン」として結果を残すことを目指す。


実は、オリ・パラをJTUという1つの競技団体が統括するトライアスロンでは逆転現象が起きている。横浜大会は両レースが同日開催されるが、取材する記者の数は早朝から行われるパラの方が多い。


東京パラリンピック銀メダルの宇田秀生やパラの「顔」谷真海らの存在もあるが、何よりも大きいのはパラはメダルを獲得しているということ。28年ロス五輪の目標も五輪の「メダル獲得」に対し、パラは「金メダル獲得」。パラの福井ヘッドコーチは「どう連携するかなどはこれからだが、パラの活躍がオリを刺激することはあると思う」と話した。


JTUがスタートさせた強化プロジェクトの名は「ON THE PODIUM(オン・ザ・ポディウム=表彰台)」。トライアスロンの新たな価値を発信し、応援してくれるファンを増やすために、16日からは個々の選手にスポットを当てた動画配信も始まった。


目指すは28年ロス、32年ブリスベン五輪。「これまでは所属チームでの強化が主だったけれど、これからはJTUのもと各代表、チームジャパンでメダル獲得に取り組む。夢を夢で終わらせず、必ずメダルを」。JTUの大塚真一郎専務理事は決意を込めて話していた。

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