値千金の好スタートとアウトラップ。野尻を抑えた坪井が今季初優勝【第5戦決勝レポート】

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2025年05月18日 19:30  AUTOSPORT web

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今季初優勝を飾ったVANTELIN TEAM TOM’Sの坪井翔/
2025スーパーフォーミュラ第5戦オートポリス
 2025年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦が大分県のオートポリスで行われ、予選5番手からスタートした坪井翔(VANTELIN TEAM TOM'S)が同時ピットインした野尻智紀(TEAM MUGEN)とのアウトラップ勝負に競り勝ち、今季初優勝を飾った。2位は野尻、3位には山下健太(KONDO RACING)が入った。


■後半、トップ走行の岩佐に悪夢のトラブル

 依然としてどんよりとした雲が立ち込めていたオートポリス。スタート進行はレコノサンスラップから20分間のウォームアップ走行へとスケジュールが変更された。そのウォームアップ走行時は気温17度、路面温度は20度。時おり雨がぱらつき、ウエットタイヤを履いてピットアウトしていく車両も数台いたものの、基本的にはドライコンディションでセッションは終了。その後、霧が下りてきたところもあったものの、レースフィニッシュまで何とか雨は持ちこたえた。

 14時42分にフォーメーションラップが始まり、全車がグリッドに着くと41周の決勝レースがスタート。ポールシッターの野尻は順当なスタートを切るが、その後方から抜群の蹴り出しで大きくポジションアップに成功したのが坪井と岩佐歩夢(TEAM MUGEN)だ。それぞれ2番手、3番手に上がり、フロントロースタートの山下はアウト側にはじかれる形で4番手にドロップする。また、大きく順位を下げたのは、イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)とサッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM'S)。2台は早めのピットイン戦略を採り、2周目を終えたところでタイヤ交換に向かった。

 3周目を終えたところでピットに向かったのは牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と大嶋和也(docomo business ROOKIE)。2台はフラガとフェネストラズの前でコースに復帰するが、すでにアウトラップを終えてタイヤが温まっていたフラガが大嶋をとらえてポジションアップした。続く4周目には小林可夢偉(Kids com Team KCMG)と三宅淳詞(ThreeBond Racing)がピットイン。可夢偉は牧野の前でコースに戻るも、ダブルヘアピンの2つ目で牧野がアウト側からオーバーテイクし、タイヤ交換を終えたグループでのトップを取り戻した。

 その後、8周を終えて福住仁嶺(Kids com Team KCMG)がタイヤ交換に向かい、牧野の前でコースに復帰。後ろからは接近戦を展開しながら牧野と可夢偉が迫ってくる。9周目の1コーナーで、牧野がややワイドに膨らんだところを可夢偉がインから切り込んでオーバーテイクする。しかし、牧野もクロスラインを取って3コーナーで可夢偉の前に出ると、そのまま福住にも襲い掛かった。4コーナーで福住をとらえ、タイヤ交換組の中で1番手をキープした。

 牧野にかわされた福住だが、そのまま食らいつきテール・トゥ・ノーズの戦いに。接近戦は数周続いたが、13周目のさよりんブリッジに入る手前で福住が痛恨の単独スピンを喫し、ふたつポジションを落とすことになった。

 早めにタイヤ交換を済ませたグループの中ではさまざまにバトルが繰り広げられていたものの、トップの野尻は2番手の坪井に対し3秒のギャップを築いて快走。追いかける坪井もペースは良く、3番手の岩佐まで3台は等間隔で周回を重ねていった。3台の中では岩佐が早めに動き、14周を終えるところでピットイン。左リヤタイヤからインパクトレンチが外れるのにわずかに時間がかかったように見えたが、牧野の前でコース復帰すると、フレッシュタイヤでプッシュ。16周目には1分30秒201でファステストラップを更新し、野尻と坪井との差を詰めていった。

 トップ2台は18周を終えるところで同時にピットイン。ピット作業はTOM’Sの方が速く、坪井は野尻の真後ろまで近づいてコースに戻る。そのままタイヤスモークが上がるほどの激しいブレーキングでさらに詰め寄ると、2コーナーで野尻に並びかけオーバーテイクし、実質的な1番手に躍り出た。しかし、2台が争っている間に後ろから迫ってきていたのが岩佐。坪井に抜かれたばかりの野尻を4コーナーでとらえると、まだタイヤが温まっていない坪井にも近づき、100Rでオーバーテイクしてタイヤ交換組トップを取り戻した。

 19周目、ザック・オサリバン(KONDO RACING)がさよりんブリッジの手前で単独スピンを喫しコースオフ。レースに復帰できずリタイアとなると、車両回収のためにセーフティカー(SC)が導入された。この時点でタイヤ交換を済ませていなかった山下、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、高星明誠(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)の4台はこの機にピットインする。真っ先にピットを離れた山下は、トップの岩佐、坪井、野尻、牧野に続く5番手でコースに復帰し、可夢偉を挟んで、佐藤、阪口と続くオーダーとなり、24周を終えるところでリスタートが切られた。

 リスタートでは、山下がニュータイヤのアドバンテージを活かし、牧野を抜き去って4番手にポジションアップ。その後方では佐藤も同じように可夢偉をとらえると牧野にも襲い掛かり、27周目には5番手に浮上した。

 ここで、トップを走る岩佐がまさかのスローダウン。車両トラブルのようで、「タイヤが外れた」と岩佐の悲痛な叫びが響く。坪井をはじめ、次々とライバル勢にかわされていき、最終的に10コーナーでマシンを止めた。スーパーフォーミュラ2年目にしてついに初勝利に手が届くかと思われたが、ここでレースを終えることとなった。

 代わってトップに立ったのはディフェンディングチャンピオンの坪井だ。この時点では2番手の野尻とは1秒以内の差で争っていたものの、30周目あたりからじわじわとその差を広げ始める。35周目には2秒差となると、そのまま守り切ってトップチェッカーを受け、嬉しい今季初優勝を飾った。

 野尻は、最終ラップで約1秒差まで近づいたものの、逆転には届かず2位。悔しい結果ながらも今季初表彰台を手にした。3位の山下も今季初表彰台。終盤は佐藤に迫られていたが、しっかりとポジションを守り切ってフィニッシュした。

 以下、阪口、牧野というトップ6に。ポイントリーダーでオートポリスラウンドを迎えていた太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は13位フィニッシュでノーポイントに終わり、牧野が4ポイント上回ってチャンピオンシップリーダーに躍り出た。ランキング3位には今回の優勝で20ポイントを加算した坪井が入り、岩佐は選手権4位となっている。

[オートスポーツweb 2025年05月18日]

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