80歳までにほぼ100%が発症し、誰もが避けられない白内障治療に、近視も遠視も老眼さえまるでなかったことにできる夢のような技術が現れた。治療法を選択する前に、知っておくべきリスクを聞いた。
■猛暑で白内障リスクが高まる!
「猛暑の夏が予想されるなか、白内障のリスクの高まりが懸念されます。2023年、金沢医科大学眼科学講座が255万8千人分の診察データを分析したところ、熱中症歴のない60代の白内障の発症率は5%ほどであるのに対し、5年以内に既往歴のある人の発症率は20%を超え、熱中症によって白内障リスクが4倍以上に高まることがわかりました。猛暑により体温が上がると、レンズの役目をする水晶体をつくるタンパク質が変性してしまうと考察されています」(医療ジャーナリスト)
熱中症予防も大事だが、白内障は、加齢が大敵だ。早い人なら50代、60代では7割、80代ともなればほとんどの人がするといわれるほど。大阪大学医学部附属病院眼科の後藤聡さんが解説する。
「白内障は水晶体が加齢によって白く濁ってしまう病気。レンズの役割が十分に果たせずに、視界がぼやける、かすむ、まぶしいなどの症状が出てきます」
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軽度であれば点眼薬などで対応するが、進行すれば手術になる。
「角膜を切開して水晶体を取り出し、眼内レンズに入れ替えます。手術時間は10?20分ほどで、日帰りで行っている医療機関が多いです」(後藤さん)
■多少点レンズ手術を受けた主婦は「メガネいらずになって人生バラ色!」
この眼内レンズが、近年、目覚ましく進化しているという。
「以前は単焦点眼内レンズが主流で、1カ所にしか焦点が合いませんでしたが、最新の多焦点眼内レンズは、3焦点、5焦点などにピントが合うように設計されており、メガネが不要になったり、使用する機会が減ったりします」(後藤さん)
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ある多焦点レンズの手術を受けた70代の主婦は、
「ずっと眼鏡生活だったけど、この年になって初めて眼鏡なしで生活できる。快適すぎてばら色!」?と絶賛するが、気になるのはその費用だ。
■近くも遠くも見えるぶん自己負担で高額に!
単焦点レンズは、手術を含めて保険適用となるため、3割負担の場合で片眼で4万5千円ほど。だが、多焦点眼内レンズの費用は基本的に自己負担だ。通常、保険診療と自由診療の組み合わせは混合診療となり、全額が自費となる。
秋葉原白内障クリニックの副院長・大上智弘さんが解説する。
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「白内障治療には『選定療養』という制度があります。厚労省に認可された特定の多焦点眼内レンズを使用した場合、レンズ料金は自費ですが、手術などは保険適用となります。ただし、認可外のレンズを使用する場合は、レンズも手術もすべて全額自己負担です」
主な眼内レンズの特徴や費用を見てみよう。
「多焦点眼内レンズの50%近くのシェアがあり、一般的なのがパンオプティクス。3焦点レンズで、近くや中間が見えやすいのが特徴。レンズの費用は医療機関によって異なり、片眼で28万〜40万円が相場です。選定療養の対象のため、レンズ代とは別に、手術代は4万5千円ほど(3割負担)別途かかります」(大上さん、以下同)
世界初の5焦点レンズであるインテンシティは、選定療養が認められておらず、手術費用を含めて全額自己負担となる。
「日常生活で必要な視界を高い精度でカバーします。レンズ費用、手術費や検査費用、薬代を含め、片眼で65万〜90万円かかります」
■強引な契約トラブルにはご用心
今後もニーズが高まれば、選定療養に含まれるレンズの種類も多くなることが予想されるが、医療費が高額になることを考えると、手術を受けるにあたってはトラブルも想定しなければならない。
「美容クリニックで問題となっているように、個室に閉じ込められ、契約を結ぶまで帰さないようなクリニックもあると聞きます。
また、受診日に『今日ならレンズの在庫があるからすぐにできる』と契約を急がせるケースも要注意」
説明費用として数千〜数万円を請求する医療機関があるという情報も。
「私のクリニックでは説明料をいただいていないので、なんとも言えませんが……。いずれにしても医療費は医療機関によって大きく異なるので、相場を知っておく必要がありますし、金額に納得がいかなければ、別の医療機関の情報を集めることも大事です」
信頼できる医療機関をネットで検索したいところだが、
「医療機関には、満足度の高い好意的な口コミを大量に投稿する企業の営業もあります。検索サイトで上位に来るからといって、安心できません」
前出の後藤さんもこう語る。
「白内障は、一部の病気を除き、ほとんどは緊急性がありません。数カ月、治療が遅れても取り返しがつかなくなることはないので、高額レンズを提案されても急がず、心配な場合はセカンドオピニオンを受診することをお勧めします」
当然、セカンドオピニオンを嫌がる医師も要注意だ。
見え方のデメリットもしっかり説明する医師のほうが信頼できる。
「夜間などに、光を見ると輪っかが浮かび上がるハロー、光がぼやけるグレア、光の線が見えるスターバーストといった現象が起こることがあります。
また、単焦点眼内レンズに比べ、多焦点眼内レンズのほうがコントラスト感度が低下する傾向があります」(大上さん)
見え方に慣れるまで、1〜2カ月ほど時間がかかることも。
「ものを見るということは、視神経の信号を脳が処理すること。多焦点眼内レンズで見た像をスムーズに脳が処理するには、単焦点眼内レンズに比べて時間がかかる傾向があります」(大上さん)
メリット・デメリットの両方を理解し、悪徳医師を見極めて、最新治療を受けることが求められる。
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