万博開催で“抗争自粛”?ヤクザ界に暫時の平穏「摘発強化への対策というよりは…」

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2025年06月13日 16:10  日刊SPA!

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兵庫県警を訪れた後、車に乗り込む大同会・森尾卯太男会長(左)ら。万博直前の“休戦”が話題となった
 大阪・関西万博の喧騒の陰で、裏社会ではIR開業後に待ち受ける巨大利権の争奪戦が起きている!?建設業界、民泊ビジネス、闇金、歓楽街……万博で動く莫大な“カネ”の争奪戦に迫った。
◆万博開催で「抗争自粛」?ヤクザ界に暫時の平穏

 ’25年4月7日、六代目山口組(司忍組長)傘下組織の幹部3人が兵庫県警本部を訪れ、「今後は揉め事を起こさない」などと書かれた「誓約書」を提出したことが報じられた。

 大阪・関西万博開会式6日前というタイミングでの「抗争終結宣言」。

 前年から警察庁と兵庫県警が万博を機に抗争を終わらせるよう働きかけていたといわれるが、さらに九代目住吉会・小川修司会長と六代目稲川会の内堀和也会長による「要望」もあったとされる。

 週刊誌報道によれば、両会長は「日本の任侠界の総意として諸事情に鑑み、抗争相手に対して今後は襲撃を控えていただきたい」と六代目山口組に「要望した」という。

 関東の大手組織の元構成員D氏は、「そもそも『誓約書』は、六代目山口組が単独でまとめてますから、神戸山口組や絆會、池田組など対立している組織からすれば『ウチは知らない』という話。これで収束するとも思えませんが、今どきは抗争もカネがかかるだけでメリットもないから、かつてのような大抗争に発展することはもうないでしょう」と分析する。

◆抗争自粛は摘発対策のためではない?

 とはいえ、万博やオリンピックなど国家的イベントに際する「抗争自粛」は以前からあった。東京五輪の前(’19年)にも都内の主要組織が加盟する「関東親睦会」が銃器使用の自重を求める通達を発している。

「摘発強化への対策というよりは、ヤクザも単純にイベント好きなんだと思います(笑)」(同)

 山口組は、’15年8月の分裂から10年を迎える。

 当初は「離脱組」が結成した神戸山口組にも約6100人が参集したが、膠着状態が長引くにつれて勢いは衰え、’24年末の構成員と準構成員の数は六代目山口組が約6900人、神戸山口組は約320人と格差が拡大している。

「山口組の歴史の中で、ここまで分裂抗争が長引いたことはなかった。暴排条例によってヤクザは銃器の調達どころか生活そのものが難しくなり、犯罪に対する厳罰化もあって、縄張りを奪うようなことはできなくなっている。とはいえ今さら『手打ち』は無理なので、万博はいいきっかけになったのでは?」(同)

◆真の狙いは万博後の“甘い汁”

 元ヤクザのVチューバー・懲役太郎氏は、大阪・関西万博自体が利権と一体化しており、裏社会が入り込む間隙があると指摘する。

「万博がIR事業に向けた布石であったことは既に周知の事実です。能登半島地震の復旧・復興工事を後回しにしてまで無茶な予算配分、中抜き、手抜き工事をし、さらには工期遅れ。まさにグダグダのまま開催にこぎつけたわけです」

 一方、元暴力団関係者のK氏は、「むしろ万博後こそがヤクザにとって本番」と語る。

「IR建設を見据えて、既に建設業界との関係を強化している組織が増えている。建設会社の人間や政治家たちが“カタギ”の顔をしたフロント企業から接待を受けて、IRに関する内情を漏らすケースも少なくない。情報を流したり、入手したりと、裏取引が盛んに行われているのが現状」

◆あまたの業者を挟めばヤクザとバレない

 さらに、万博開催による観光客の流入で、ホテルの宿泊料金が高騰していることもあり、民泊の需要は依然として高い。

 これに目をつけた不動産業者と繋がりのある組織は、既に多くの民泊物件を確保しているという。

「万博終了後も観光客が増えることを見越して、民泊ビジネスで莫大な利益を狙う構図が既に出来上がっている」

 加えてK氏は、カジノ開業に向けたギャンブラー向け闇金の準備も着々と進行していると話す。

「直接的に闇金を展開するのはリスクが大きい。そこで、IT企業と提携してアプリを作り、そこから貸し付ける手法が計画されている」(同)

 懲役太郎氏は、暴力団排除条例が裏社会に与えた影響にも触れる。

「万博会場の施設解体と産廃処理、さらにIR施設の建設工事までの利権は、既に“分配”が終わっている。表向きにはカタギの企業が受注し、実際には裏で組織が絡んでいたとしても、多くの人間や業者を介することでいくらでも隠し通せてしまいます」

 ヤクザたちは既に、万博終了後のシナリオを描き始めているのだ。

【Vチューバー・懲役太郎氏】
元暴力団員のVチューバー。SNS総フォロワー数50万人以上。著書『塀の中の元極道YouTuberが明かす ヤクザの裏知識』(宝島社)

【元暴力団関係者・K氏】
大手暴力団に20年間所属し、主に建設業界との仲介役を務める。現在は完全に足を洗い、飲食業やコンサルタント業を営む

取材・文/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社 時事通信社

―[[大阪万博とヤクザ]の“裏”実態]―

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