「リュックの重さを肩で感じない」――そんな驚きの新商品が6月1日に登場した。「えっ、本当なの?」と思わず疑いたくなるが、実際に使った人からは“軽さ”を実感する声が上がっている。累計販売数70万本を突破した商品「ガードナーベルト」のオプションアイテム「エアロトレック」だ。
ガードナーベルトは「真剣にふざける」をモットーに、モノづくりに挑戦する「ガードナー」(福岡市)が開発したベルト型器具。2020年の発売以降、SNSを中心に話題を集めている。
ガードナーベルトおよびエアロトレックの開発を手がける、同社専務取締役の福山剣介さんに、開発のきっかけや今後の販売戦略について聞いた。
●従業員の健康管理にも期待されるガードナーベルト
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ガードナーベルトは、欧米の医療現場で生まれた「10個の動滑車の原理」を利用し、少ない力でヒモを引くだけで心地よく締まる骨盤ベルトだ。強度にこだわった同社オリジナルの構造により、腰の負担軽減や骨盤の補正、座り仕事のサポート、腹圧ベルト代わりなど、さまざまな用途で活用できる。
動滑車の原理を利用したベルトは米国などでも販売されていたが、当時はどれも高額で気軽に手が出せるものではなかったという。ガードナーベルトは、シンプルながら軽い力でよく締まる独自構造により、1個当たり1万円を切る価格(9900円)での販売を実現した。
公式Webサイトで販売しており、医療介護施設や整体院などで利用が広がっている。2025年4月には初の直営店舗を新宿マルイ 本館7階にオープン。スタッフが製品について説明し、お客はその場でガードナーベルトを試して購入できる。
2025年には、観光学修士/医学博士の喜瀬真雄氏監修のもと、従業員の健康管理と職場の生産性向上の両面から、ガードナーベルトを評価する効果検証を実施した。実際に生産性が上がるなどデータ上でも優位差が見られる研究結果が得られたという。
●肩の負担を軽減する「エアロトレック」
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エアロトレックは、6月1日にガードナーベルトのオプションアイテムとして公式Webサイトで販売を開始した。
ガードナーベルトのスリット部分に装着するだけで、リュックの重量を肩と腰に分散できる。腰ベルト付きのリュックもあるが、エアロトレックは「肩50%:腰50%」「肩70%:腰30%」など、体の疲れ具合や状況に応じて負荷の割合を自在に調整できるのが特徴だ。
装着すると、リュックと肩の間にすき間が生まれ、荷物が宙に浮いているように見えるのが最大の特徴だ。実際に体験した人からは「まるで無重力!」と驚く人が多いという。
●「8キロの重さを肩に感じなくなった!」
ガードナーベルトにはこれまで、公式オプションとして交換用ストラップやストリング(ひも部分)を販売していたが、なぜ今回エアロトレックを開発しようと思ったのか。それは、福山さんが移動中に偶然起きたある出来事がきっかけだった。
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映像クリエイターでもある福山さんはある日、撮影機材を入れた重いカメラバッグを背負って出張していた。その際、偶然バッグがガードナーベルトに引っ掛かり、「8キロもの重さを肩に感じなくなった!」と驚いたという。
周囲を見渡すと、電車内やオフィス街で重いリュックで背中を丸める人々、子どもを抱えながら荷物と格闘する育児中の親たち、重装備で体力を消耗するアウトドア愛好家たちがいた。日常のあらゆる場面で「人々を肩の負担から解放できれば、より活動的で快適な生活が実現できる」と考えた。
福山さんは「なぜリュックは肩だけで担ぐのか」という常識に疑問を抱き、ガードナーベルトの構造をさらに生かす新たなギアの開発に着手。約2年で30種類以上の試作品をつくり、試行錯誤を重ねた。
最初はプラ板を使った試作品づくりから始まり、赤ちゃんを支えるヒップシートからヒントを得た折りたたみ式のモデルなども開発。3Dプリンタでデザイン性の高いものも試作したが、うまくいかなかった。そこで、板状の形から棒状で分割式にするという発想の転換を行い、ついにリュックの重さを「体感0グラム」にするエアロトレックが誕生した。
●ターゲットや今後の展開
エアロトレックのメインターゲットは、トレッキングやハイキングを楽しむ登山の初級〜中級者層を中心とした人々だ。推奨する耐荷重は、最大15キロとなる。
そのほか、重いリュックを長時間背負うビジネスパーソンや、子育て中の人などにも向いている。「過去に趣味で登山をしていたものの、腰痛や年齢を理由に諦めてしまった人にも使ってほしいですね」
今後については、引き続きWebマーケティングを中心に販促を進めていく。エアロトレックについては、肩への負担が軽減される瞬間を、動画などで分かりやすく伝えていきたいとしている。
ガードナーベルトでは、子ども向け商品の展開も検討している。ランドセルの重さに悩んでいる子どもに向けて、負荷を分散できるエアロトレックをおすすめしていきたいとしている。
子どもの中には、大人がガードナーベルトの良さを伝えても「付けたくない」と感じる子もいるという。そういう子にはランドセルが軽く感じることに加えて、姿勢が良くなることで「ほめられる」体験も伝えていきたいとしている。
今後どのような商品やオプションが登場するのか。引き続き注目したい。
(熊谷ショウコ)
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