
“倒産件数 過去最多”。
連日、このフレーズの報道を目にすることが続いている。
「さまざまな業種の2024年度の倒産件数についてのデータが発表されています。大きな話題になったのはカレー店の倒産。近年は“スパイスカレー”がブームとなっていることもあり、意外に感じた人が多かったようですね」(経済誌記者、以下同)
ラーメン、カレー、弁当店、倒産が続く飲食業界
昨年1年間だけの話ではない。6月8日の帝国データバンクの発表によると、2025年1月〜5月までに1000万円以上の負債で倒産した弁当店は22件。このペースが続くと、こちらも過去最多の倒産件数となるという。
「飲食業に限っていえばカレー店だけでなく、居酒屋、ラーメン店、焼き肉店、ステーキ店、洋菓子店などが2024年度のデータで倒産件数が過去最多となっています」
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飲食業各種でなぜこれほど倒産が増えているのか。
「業種によっての差異や特殊性、そして“味”の問題もありますが、やはり原材料・光熱費・人件費の高騰に尽きるでしょう。原材料については物流費の高騰も含み、スタッフについては人件費だけでなく人材難もありますね」(飲食コンサルタント)
さまざまな要因が店を苦しめるが、特に“何が”というのは。都内でカレー店を営む男性は次のように話す。
「世間で言われている米はやはり大きいですし、カレーなので具材となる肉も同じく。なんでも値上がりしているような状況ですが、カレー店特有のところだと玉ねぎは大きいかなと。提供するカレーの種類にもよりますが、よく飴色になるまで炒めるというようにカレー店の玉ねぎの消費量はかなり多い。
うちは小規模の個人店ですが、レトルト販売のものも含めて、一度に100キロ単位の玉ねぎを業務用の調理機器で炒めています。それだけの量になると値上がりは大きい」
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都内でオーナーとしてラーメン店と居酒屋を経営する男性は、原材料以外の面を嘆く。
「人件費の高騰は大変ですが仕方のない面がある。これだけ出さないと今の時代は来てくれないよなとは思いますから。ただ、ここ最近は結構な額を提示しても外国人の方ばかりですね。日本人にとって飲食イコールブラックみたいな感覚なのか」
求人で来るのは外国人ばかり……と嫌悪したり差別的な意味で言っているのではない。
「いや、むしろ優秀な人が多い。ただ、チェーン店だったり商品の内容・提供の仕方が決まっている業種はいいのですが、お客さんとの会話やフレキシブルな対応となると少し難しい。私の店でもラーメン店のほうではすごく助かっています。食券ですし、注文も“麺固め”とかくらいですから。
ただ居酒屋はさまざまなお客さんがいますし、注文もラーメンと比較すると多い。もちろんフォローしますが、教育の時間もかかります。外国人の方の場合、一定期間で辞めていく人も少なくないのもつらいところ」(前出・ラーメン店と居酒屋オーナーの男性)
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前出の飲食コンサルタントはさまざまな高騰以外の“理由”もあげる。
「調査会社による倒産件数のデータは、基本的に“法人格で店を運営しているところの倒産数”だと思います。でなければ算出は難しいでしょう。こういった倒産件数の裏には、数多くの“個人店の倒産”があり、実数はもっとあるはずです。
しかしながら、飲食店はコロナ禍に1日最大6万円がもらえた時代がありました。そのころにそのお金を使って“2号店”やキッチンカーをオープンさせたというのはよく聞いた話。それこそ流行のスパイスカレーなど、カレー屋も多かったと聞きます。そのような浅はかな形で出店してやめている、潰れている人は少なくないでしょうね」(前出・飲食コンサルタント)
カレーもラーメンも国民食であり、食事も酒も楽しめる居酒屋という日本独特の文化……。それらを気軽に日本人が楽しめないような時代も近い……?