
都内でパートとして働くAさんには、最近気がかりなことがありました。同居している一人息子のBさんが、最近明らかに元気がなくなっていることです。以前は明るくおしゃべりだったはずですが、この数カ月食卓ではほとんど口を開かなくなりました。大好きだったはずの唐揚げにも箸をつけず、青白い顔でため息ばかりついています。
【漫画】父の死後、1000万円の借金が発覚 銭湯を継いだ女性にヤクザは告げた「一緒に返していきましょうね」
ある週末の夜、Aさんは意を決してBさんの部屋のドアをノックします。憔悴しきった彼を問い詰めると、ぽつりぽつりと重い口を開きました。なんとBさんは、消費者金融から200万円もの借金があること、そしてその返済に窮していることを打ち明けたのです。
Aさんの頭は真っ白になりました。しかし話を聞くうちに、借金の理由がギャンブルや浪費ではないことが分かりました。数年前に友人が事業を始める際、軽い気持ちで連帯保証人になってしまい、その友人が自己破産してしまったというのです。息子の人の良さがあだとなった結果でした。
このままでは息子が自己破産してしまうかもしれない。真面目な息子の将来にそんな傷をつけてはならないと思ったAさんは、Bさんの借金を全額肩代わりすることを決意しました。
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数日後、パート先の同僚との雑談の中で「そういえば親が子どもの借金を代わりに返すと、贈与税がかかることがあるらしいわよ」との話を耳にします。実際に子どもの借金を親が肩代わりすることは、贈与とみなされるのでしょうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞きました。
原則として贈与。しかし扶養義務の範囲内なら対象外に?
ー子どもの借金を肩代わりすると贈与とみなされますか
原則として贈与とみなされると考えます。税法では、「個人から財産をもらったとき」に、もらった側に贈与税がかかります。親が子どもの借金を返済するということは、子どもが本来支払うべきだった借金200万円を、親が代わりに支払ったということです。これは子どもが親から「200万円分の現金をもらって、それで借金を返済した」ことと同じです。
したがって、子どもは親から200万円の財産を「贈与」されたとみなされ、原則として贈与税の課税対象になるのです。
ー贈与とみなされない場合もあるのでしょうか
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国税庁は「資力を喪失して債務を弁済することが困難である」と認められる場合には、その肩代わりは「扶養義務の範囲内」とされ、贈与税がかからないとしています。この「資力を喪失」の判断は非常に厳格です。単に「収入が少なくて返済が苦しい」というレベルでは認められません。例えば、病気や失業で収入が完全に途絶え、預貯金などの資産も全くない、というような客観的に誰が見ても返済不能な状態を指します。
ー贈与税がかからないように借金を肩代わりする方法はありますか
最も現実的で確実に贈与税を回避するためには、肩代わりした200万円が「贈与」ではなく「貸付」であったことを証明できればよいのです。金銭消費貸借契約を結び、実際に返済を行うようにします。
どうしても返済が難しい場合は、贈与であることを認めた上で、贈与税の基礎控除の範囲内に納める方法もあります。年間110万円の基礎控除があるため、Aさんの場合であれば2年に分けて合計200万円を返済すればいいということになります。
◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。
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(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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