限定公開( 1 )
福岡県の市街地から1時間ほどの場所に作ったビオトープの様子がYouTubeに投稿されました。動画は記事執筆時点で2万回以上再生され、「驚きました」「最高です」といった声が上がっています。
動画を投稿したのは、YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」。「生物多様性を全力で楽しみたい、だから生物多様性を保全する」という考えを持つ小宮春平さんが、池の水を抜いたり外来種を捕獲したりする様子を公開しています。
以前には”底なし食欲モンスター”がいる池の水を全部抜いた様子を紹介しましたが、今回は視聴者の1人が福岡県のある場所に作った、田んぼの横にあるビオトープの様子を見に行くようです。
ビオトープは田んぼの横の水路という環境下にあるとのこと。2024年まで埋まっていた場所を掘って開放水面を作り、こういった湿地帯の環境にしたのだとか。
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小宮さんがビオトープの作者である福岡県の生物屋・ヤマサキさんと一緒に水路でガサガサをしてみると、網に大量のイモリが入ってきました。イモリたちはオタマジャクシなどを狙って、この湿地帯に集まってきているのかもしれません。
ひとすくいで大量のイモリが捕れるこのビオトープは、実は福岡県の市街地から1時間かからないところにあるそうです。明るくなって大量のゼンマイが生え、アカガエルのオタマジャクシが泳ぐこの水路がそんな場所にあるだなんて、驚くばかりですね。
作ってから初めての春を迎えたとは思えない湿地には、さまざまな生物の姿がありました。水路でトノサマガエルを発見した小宮さんはとってもテンションが上がっている様子。というのもトノサマガエルは普通に見られる地域がある一方、福岡県では絶滅危惧1B類で、2025年からようやく絶滅危惧2類にランクが下がった状態なのだそうです。
福岡県のトノサマガエルは平野部ではほぼ姿が見られず、山間地の環境がいい湿地に若干数残っている程度とのこと。数十年前は当たり前にいた生物が容易に消えていく典型的な例であり、この場所がいい湿地であることの証明でもあるそうです。なお先ほど驚くほど大量にいたイモリも、福岡県では絶滅危惧2類なのだそうですよ。
このビオトープには福岡県内では珍しい存在であるドジョウがいて、ヒメガムシやヒラタガムシなども2、3種類確認されているのだとか。さらにハイイロゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、ウスイロシマゲンゴロウ、コシマゲンゴロウがいる可能性もあるとのこと。現時点でもかなり多くの生物が住み着いているようですが、今後さらに種数が増えていくことが期待できそうです。
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引き続き水路の脇を歩いていくと、シュレーゲルアオガエルの卵やオタマジャクシの群れを発見しました。生物にとってこのビオトープのように田んぼの横にあり、田んぼに水が入っていない時期にも逃げ場所になる環境があることはとても大切なのだそうです。そんな話をしながらガサガサをしてみると、激レアな福岡県産ドジョウに遭遇できました。
ドジョウ、トノサマガエル、メダカといったかつては当たり前だった存在が今や当たり前ではなくなっている。小宮さんはそういった現実がもう少し世間に認識されてもいいのではないかと思っているそうです。
湿地や里山の生物は、人間が里山を管理することによって生きていくことができる。それでは人間が管理する前はどうしていたのだろうかと疑問に思う人もいることでしょう。
小宮さんによると湿地は洪水や土砂崩れによってだったり、イノシシや絶滅してしまったゾウの仲間などの哺乳類が掘り返すことによってだったり、自然と作られてきたのだそうですよ。
実はこの湿地を作ったヤマサキさんは2024年、小宮さんのアメリカザリガニ調査に参加していたのだそうです。こういった人たちが核になって全国で活動することにより、守られる生物の種類は確実に増えてくるだろうとのこと。
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生物を捕って楽しむ側だった生物趣味の方々が、生物を守りながら捕って楽しむ形になっていけばいいなと話す小宮さんなのでした。
初めての春を迎えたビオトープを調査した結果に、コメント欄では「湿地帯を作るだけでこれだけの生物が戻ってくるのですね」「在来種の楽園になれば最高です」「トノサマガエルすごく懐かしい」「いい取り組みだと思います」「湿地ってやはり豊かですね」「まだまだ希望はありますね」といった声が寄せられています。
小宮さんは、生物多様性を保全する活動の様子をYouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」やX(@ariake538)で発信中です。
動画提供:YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」
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