6月5日に発売した任天堂の次世代ゲーム機「Nintendo Switch 2」を、モバイル端末として徹底的に使い込んでみた。実際に使用してみて、携帯モードでの使い勝手がグンと向上していることを実感した。
価格は日本語版が4万9980円(税込み、以下同)。直販限定の多言語対応版は6万9980円だ。実際に手に取ってみると、7.9型のフルHD液晶ディスプレイの表示品質が想像以上だった。
初代の6.2型720pから大型化かつ高解像度化し、実機で「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」をプレイすると、遠くの風景の細部まで鮮明に描写される。コログの森のような処理が重くなりがちな場面でも、周りがよく見通せて美しいと感じた。本体ディスプレイのHDR対応により、携帯モードでの遊びごたえは確実に増している印象だ。
●「まるごと転送」でデータ移行もスムーズ
|
|
開封から初期設定については、初代Switchからのデータ転送機能「まるごと転送」を使用した。この機能は初期設定時にしか使えないため要注意だ。Switch本体とSwitch 2本体を近づけて、ライブラリのタイトルやゲームのセーブデータを丸ごと転送するというもので、およそ10分で完了した。おそらくWi-Fi Directを裏で使っていると思われるが、それをユーザーに意識させることなく、スムーズに転送できる。
SDメモリカードのデータ転送も簡単だった。旧SwitchからmicroSDを差し替え、新Switchの本体メモリにコピー。5000枚ほどのキャプチャーや動画が15分程度で転送できた。その後、Switch 2用のmicroSD Express Cardに差し替えて、メモリカード領域にさらにデータを移動する作業も10分ほどで終わった。
ただし、ゲームのソフトウェア本体はここでは転送されず、Nintendo Storeから順次自動でダウンロードされる仕組みだ。「ゼルダ」を起動できるまでに20分ほどかかった。トータル1時間は、PS5やXbox Series Xと比較しても標準的で、むしろセーブデータやキャプチャーの確実な移行を優先した設計といえる。
●NVIDIA T239カスタムプロセッサで性能向上を体感
NVIDIA T239カスタムプロセッサを搭載したSwitch 2。NVIDIAが公開している情報によると、初代と比較して約10倍のグラフィックス性能向上を実現したという。初代Switchはハードウェア性能の制約から、開発者の最適化努力に頼る部分が大きかったのに対し、Switch 2では余裕のある性能で安定した動作を実現している。筆者がよく遊ぶ「スプラトゥーン3」では、フレームレートを維持しつつ、フルHDや4Kでの描画も可能になっていて、画面内随所に施されている凝った装飾も鮮明に見えるようになった。
|
|
12GB LPDDR5Xメモリと256GBの内蔵ストレージにより、ゲームの起動やロード時間も短縮。microSD Expressへの対応により、メモリカードにゲーム本体を記録した場合のロード性能も大幅に改善している。特に重い場面でのカクつきが減り、携帯モードでも快適にプレイできる。ワイヤレスコントローラーの性能もプロコン2で改善したのか、ボタン操作に対する反応性がわずかに高まったように感じる。
通信性能も進化している。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応したことで、初代Switchと比べて通信速度が大幅に向上した。特にニンテンドーeショップからのゲームダウンロードで恩恵を実感する。数十GBもある大作タイトルのダウンロード時間が大幅に短縮され、アップデートの適用も快適になった。オンライン対戦の安定性も向上し、「スプラトゥーン3」や「マリオカートワールド」でのマッチング待ち時間も短くなった印象だ。ただし、Bluetooth LE Audioには非対応のため、ワイヤレスヘッドフォンでの音声遅延は従来通りだった。
TVモードでは4K HDR出力に対応し、最大120fpsでのゲームプレイも可能になった。大画面での高解像度グラフィックスは確かに魅力的だが、PS5には及ばない。それでも、携帯機として持ち運べることの価値は大きい。筆者の場合、新幹線で「ゼルダ」をじっくりプレイできたり、出張先のホテルで「マリオカートワールド」のオンライン対戦を楽しめたりする点が、Switch 2の最大の魅力だと感じている。
●Joy-Con 2のマグネット脱着とマウス機能も便利
Joy-Con 2は従来のガイドレール式の取り外しではなく、マグネットによる脱着になった。子どもが誤って反対方向に装着して壊れるというケースがあったが、そういうものをなくしている。ピタッと吸い付くような装着感は気持ちよく、本体背面のボタンでカチッと外れる仕組みも直感的だ。
|
|
そしてJoy-Conの装着部がマウスになっている点もユニークだ。低解像度のモノクロセンサーを仕込んでおり、デスク上の操作だけでなく、ズボンの上でのマウス操作も認識する特殊なマウスになっている。「信長の野望・新生 with パワーアップキット Complete Edition」のようなタイトルではマウス操作で広いマップを操って細かいコマンドを出すことができる。FPSゲーム系のタイトルでもマウス操作対応が増えてきそうだ。
HD振動2も進化している。ローンチタイトルの「Nintendo Switch 2 のひみつ展」では3D振動のデモとして“マラカス”体験ができる。Joy-Con 2をマラカスに見立てて振ってみると、中につぶつぶとした物体やボールが入っているかのような細かな振動表現が体感できる。この表現を生かしたゲームも遊んでみたいものだ。
●フリーストップスタンドで膝の上にも置いてプレイできる
先代のSwitchはデスクで立てかけるための格納式スタンドだったが、Switch 2は幅広のフリーストップスタンドになっている。目線の近い位置に置いて上からのぞき込んだり、膝の上に置いてプロコンでプレイしたりするシーンにかなりハマる仕様だ。
携帯モードでの使い勝手を大きく向上させているのが、Switch OLEDモデルと同じ浅い角度までフリーストップで可動するスタンドだ。筆者は初代Switchしか使った経験がないため、この進化には感心した。膝の上にSwitch 2を置いてプロコンで操作すれば、長時間プレイしても手が疲れない。7.9型の大画面と組み合わせることで、「スプラトゥーン3」のような競技性の高いゲームも、携帯モードで本格的に楽しめるようになった。カフェのテーブルでも、新幹線のテーブルでも、安定して設置できる点がうれしい。
さらに地味ながら便利なのが、USB Type-C端子が本体下部に加えて上部にも追加されたことだ。主な用途はボイスチャットのマイクをつなぐことだが、卓上モードで充電ケーブルを上から接続することもできる。膝置きプレイでもこれが便利だった。下部の端子だとケーブルが邪魔になりがちだが、上部からの給電なら操作の妨げにならない。
●バッテリー持続時間はどう?
実際に携帯モードで複数タイトルを連続プレイして検証してみた。「ゼルダの伝説 風のタクト」(ゲームキューブ)30分で15%消費、「マリオカートワールド」のオンライン対戦30分で22%、「スプラトゥーン3」のオンライン対戦30分で19%、「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム Nintendo Switch 2 Edition」30分で20%、「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」のオフラインプレイ30分で14%、最後に「あつまれ どうぶつの森」を20分プレイして10%消費し、バッテリー残量がゼロになった。
トータル約3時間20分の連続プレイが可能だった。高性能化されたにもかかわらず、初代Switchと同等の持続時間を確保している点は評価できる。オンライン対戦やグラフィックス負荷の高いタイトルでは消費が多めだが、通勤時間程度なら十分カバーできる。長時間の移動時にはモバイルバッテリーがあると安心だろう。
●サードパーティータイトルが充実
興味深いのは、「ストリートファイター6」「エルデンリング」「Cyberpunk 2077」などのサードパーティータイトルの移植が発表されていることだ。これらは初代Switchでは動作させることが困難だった重量級タイトルばかり。Switch 2の性能がXbox Series S相当まで向上したことで、現世代のマルチプラットフォームタイトルの移植ハードルが大幅に下がったのだろう。
任天堂ハードは長らく「任天堂のゲーム専用機」という印象が強く、サードパーティータイトルの充実度で他社ハードに後れを取ってきた。その状況がSwitch 2で大きく変わろうとしている。Steam Deckのように、主要なマルチプラットフォームタイトルを携帯機で楽しめる性能を獲得したことで、ゲーム体験の幅が格段に広がった。任天堂タイトルもサードパーティーの大作も、1台のハードで完結できるようになった意味は大きい。
●買い替えの判断基準はどう考える?
Switch 2は間違いなく携帯ゲーム機の新しいスタンダードになるだろう。フリーストップスタンドとプロコンの組み合わせで実現する「膝上プレイ」の快適さ、Joy-Con 2のマウス機能による新たな操作体系、そして大幅に向上した処理性能。これらが組み合わさることで、モバイルゲーミングの可能性が格段に広がった。
初代Switchユーザーなら、携帯モードでのプレイ頻度が高い人ほど恩恵を受けるはずだ。7.9型のHDRディスプレイと安定したフレームレートは、通勤電車でも出張先でも、据え置き機に近い体験を提供してくれる。サードパーティーの大作タイトルも遊びたいという人にとっては、待望のアップグレードといえる。
主にTVモードで遊んでいる人や、任天堂の定番タイトルだけで満足している人は、初代Switchでもまだ十分かもしれない。4万9980円という価格は決して安くはないが、携帯機として据え置き機並みの性能を実現したことを考えれば妥当な価格設定だ。モバイルゲーム機として、Switch 2は新たな境地を切り開いたといえるだろう。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。