ル・マンを夢見たきっかけは中嶋一貴。フォーミュラEとの二刀流でWECに復帰したキャシディ、来日機会が増え「とてもうれしい」

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2026年05月14日 18:00  AUTOSPORT web

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ニック・キャシディは今シーズン、WEC世界耐久選手権とABB FIAフォーミュラE世界選手権に並行参戦している
 2015年に来日し、全日本F3選手権を経てスーパーGTやスーパーフォーミュラで活躍した後、2020年シーズンを最後に日本でのレース活動から卒業し、ヨーロッパで新たな一歩を踏み出したニック・キャシディ。DTMドイツ・ツーリングカー選手権やフォーミュラEで活躍してきたが、今季2026年は電動フォーミュラの世界選手権と並行して、プジョー・トタルエナジーズからWEC世界耐久選手権の最高峰であるハイパーカークラスにも参戦している。

 そんなキャシディに、数年ぶりにWECへ戻ってきた心境や近況を聞いた。

* * * * * * *

⎯⎯ヨーロッパへ活動の拠点を移し、フォーミュラEではコンスタントにポディウムに立つなど活躍を見せていますね。今シーズンはWECでの新たな挑戦が始まりましたが、いつ頃プジョーから打診を受けたのですか?

ニック・キャシディ(NC)「プジョーのシートに関しては、すでに去年の初めに、今季のWEC参戦について話し合いを持っていた。そして8月に僕がチームに加わることが正式に決定し、公式発表となったんだ」

「ここ数年は本当に素晴らしいシーズンを過ごしていて、フォーミュラEをとてもエンジョイしているよ。そこで得られるチャレンジや経験にやりがいをとても感じているんだ」

「スーパーGTに参戦している頃から、『いつかWECに出てみたい』とつねに願っていて、『いつかはル・マン24時間レースに挑戦して総合優勝を目指す』と心に誓っていたし、それをいつも目標にしていた」

⎯⎯プジョーから打診を受け、正式に『9X8』のドライバーとして採用されることが決まった際にはどんな気持ちでしたか?

NC「本当に最高の気分だった。ハイパーカーでのWEC参戦は大きな挑戦になることも分かっているし、それは容易ではないことも充分理解している」

「正式に採用が決定した昨年の8月から、イモラの開幕戦を迎える準備までに実車をドライブするのをしばらく待つ必要があっただけに、今はここにいられて本当に本当にうれしいんだ」

⎯⎯「スーパーGT参戦時から」とありましたが、それには何かきっかけがあったのですか?

NC「日本にいた頃、僕はトムスのチームメイトだったカズキ(中嶋一貴/現トヨタ・レーシング副会長)から本当に多くのことを教わった。その中には彼が当時ドライブしていたLMP1カーのことや、WEC/ル・マンのことも含まれていて、よく話を聞かせてもらっていた。だから、カズキにとても影響を受けていたんだね」

「いつの日か彼のようになりたいと思っていたし、いつかカズキと一緒に世界で戦いたいとも強く願っていた。カズキは僕にも世界選手権やル・マンを目指す素晴らしさを教えてくれた恩人でもあり、彼のチームメイトになれたことは、僕のキャリアの中でも本当に幸運なことだった」

「残念ながらカズキは僕の予想より早くマシンから降りて、一緒に戦うことはできなくなってしまったけれど、あのトムス時代に彼が背中を押してくれたお陰で、僕はいま、ここにいることができるんだ」


■さまざまなカテゴリーでの経験が活きる

⎯⎯プジョーの第一印象やチームの雰囲気などを教えてください。

NC「チームが一丸となって良い結果を目指して一生懸命に取り組んでいる。これだけの台数が揃うハイパーカークラスなので、少し大変な時もあるけれど、チームの連携は抜群でここで仕事をするのはとても楽しいと感じているし、チーム内の雰囲気は本当に素晴らしいと思う」

⎯⎯プジョーはフランスメーカーです。チーム内では英語よりもフランス語が飛び交っていますが、あなたはフランス語を話せるのですか?

NC「僕の場合、フランス語よりも日本語の方が得意なので、フランス語をもっと勉強しないといけないね(笑)」

⎯⎯あなたは長年フォーミュラEに参戦されています。もちろんEVとハイブリッドは違いますが、ハイパーカーをドライブするうえで、例えばエネルギーマネジメントや回生ブレーキの使い方など、フォーミュラEでの経験を活かすことができますか?

NC「まさにそのとおりで、フォーミュラEでの経験はシステム面で間違いなく役立っている。例えば、ハイパーカーはスーパーGTのクルマよりも複雑なシステムになっているのだけど、フォーミュラEよりは少ないので、ちょうど中間くらいの感じなんだ」

「またハイパーカーとフォーミュラEには共通点も多々あるので、間違いなく僕のフォーミュラEでの経験は、ハイパーカーをドライブするうえで役に立っていると実感しているよ」

「スーパーフォーミュラやスーパーGT、DTMのGT3、そしてフォーミュラE。さまざまなカテゴリを経験しドライバーとして得た数多くの引き出しが、どこかしらでいつも僕の役に立っているし、ドライバーとして多くの経験を積み重ねることの大切さを自らとても実感している」

⎯⎯WECにはアルピーヌのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタをはじめ、トヨタのニック・デ・フリース、セバスチャン・ブエミ、キャデラックのノーマン・ナトといったフォーミュラEドライバーがハイパーカークラスに参戦していますね。

NC「WECで上位を争うラインアップの中にフォーミュラEのドライバーが揃っているということは、フォーミュラEのレベルが非常に高いことを示していると思う」

「だから、彼らがWECで活躍しているのを見ると、僕もいつかWECで良い成績を残せる可能性があるという自信が湧いてくるんだ。フォーミュラEのドライバーは世界でもトップクラスのレベルのドライバーが揃っていると思うよ」

⎯⎯WEC最高峰カテゴリーでの最初のシーズンにおけるあなたの目標はなんでしょうか?

NC「自分のベストを尽くすこと。学び続け、成長し続けること。今のところ、それを一番の目標にしている」

⎯⎯あなたは以前、AFコルセが走らせるLM-GTEアマクラスのフェラーリでル・マン24時間に初参戦しましたが、今年はいよいよハイパーカーでの挑戦となります。

NC「ル・マンは、2022年に初参戦したときから『いつか必ずこの場に戻ってきたい』と願っていたので、本当に楽しみにしている」


■今年は御殿場にも行ける

⎯⎯ところで、あなたは数年前にモナコへ引っ越しましたね。日本のニックファンは、あなたがモナコでどのような生活を送っているのか気になるかと思います。

NC「モナコでの生活は東京での生活と比べるととても静かで、今はちょっと退屈な生活を送っているのかなと感じているよ。僕も歳をとったせいかな(笑)」

「フォーミュラEとWECに参戦しているので、その両シリーズの準備でシミュレーターを使った練習を数多くするし、マーケティング活動なども増えたので、レースとレースの合間にもすることが随分と増えて、かなり忙しい毎日を送っている」

「日本にいた頃は、タイヤテストもあったけどレースとレースの合間に東京で過ごす時間が多かったし、基本的にレース以外では移動をする機会はそう多くなかった」

「ちなみに、日本に住んでいた外国人ドライバーたちは六本木が大好きだったようだけど、僕はまったく違うよ(笑)。誤解しないでね!」

「ヨーロッパではチームのファクトリーによく行き、シミュレーターを使ったテストを多く行うこともあり、家にいる時間が減ったことが僕にとって一番大きな変化かもしれないね」

⎯⎯2024年から東京でフォーミュラEが開催されていることもあり、日本には少なくとも年に1回訪れる機会がありましたが、今年はWECを含めて2回訪日することになりますね。

NC「僕にとっては非常にうれしいことで、いまからその時がとても待ち遠しいよ。フォーミュラEで東京へ行く際には、レースの前の週の日曜日に着くようにして毎回1週間滞在するようにしているんだ。数多くの友人とも再会できるとても良い機会になっている」

「そして今年はWECで富士へ行けるのが、とくにうれしいんだ。フォーミュラEで東京に滞在する際には御殿場まで行くのは難しく、トムスの全員と会うのは難しいのだけど、富士なら館(信秀/トムス会長)さんをはじめ、メカニックやエンジニアの皆にも会えるね。かつて僕をサポートしてくれた人たちとなるべく多く会いたいんだ」

「フォーミュラEで来日する際にも、日本のファンが応援に来てくれていてうれしかったけれど、今年は皆と富士でも会えるかと思うと、なおのことうれしいよ。まさかプジョーのハイパーカードライバーとして富士を訪れる日が来るなんてね!」

[オートスポーツweb 2026年05月14日]

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