
未婚の子どもに代わって、親が結婚相手との出会いを探す「代理婚活」。親同士が交流会で相手を見極め、意気投合すれば子ども同士のお見合いへと進む─。はたしてこの方法で良縁は生まれるのか。そもそも、どのような仕組みなのか。未婚の息子を持ち、自ら代理婚活に参加したジャーナリスト・石川結貴さんの体験を伺った。
息子さんの年収はおいくらですか
いま、新しい婚活のカタチとして注目をされている「代理婚活」。新聞の広告などで、その案内を目にした人もいるのではないだろうか。初めての代理婚活で、衝撃的な現実を突きつけられた、と話すのはジャーナリストの石川結貴さん。
「代理婚活の交流会では、子どもの身上書といわれるプロフィールを持って参加しますが、最初にお話しした親御さんに、いきなり『息子さんの年収は、おいくらですか』と聞かれたんです。まず年齢、年収、学歴が一定レベル、クリアされないと、相手の親御さんには話にならない、という態度をとられてしまいます」
そもそも石川さんが代理婚活に参加したのは、2つのきっかけがあった。
「長男が34歳のときに、結婚相談所に入会したんです。アプリ内でお互いの条件が合うと、仮交際、真剣交際と進むシステムで、それでうまくいくどころか、全くうまくいっていないと聞いて、何に原因があるのだろうと思ったのが1つ。
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もう1つは、購読している新聞に、代理婚活の広告が頻繁に載っていたことです。検索すると、ネットでもたくさん出てきて、これは取材をしてみたいと思ったんです」(石川さん、以下同)
職業上の興味半分、息子の心配半分で参加したところ、冒頭のような洗礼を受けたというわけだ。
代理婚活が始まったのは15年ほど前で、実は少し前からあったもの。
「マッチングアプリや結婚相談所など手軽な婚活方法がどんどん普及するなかで、結婚支援事業者も当事者だけでなく、親をターゲットにした婚活ビジネスにシフトしてきました。50代以上の親御さんは、比較的生活にゆとりがある方が多いし、何より子どもの結婚相手への強烈な願望がある。そこを事業者は狙ったわけです」
しかし代理婚活での成婚率の数字は、はっきりと確認できないという。
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「事業者の会報には、子どもの挙式写真など成功例が載っているようですが、私の印象では、成功するほうがレアケースなのではないかと。というのも、参加する親御さんの『お相手に対する希望』欄を見ると、『医師なので生活を支えてくださる方』など、親の一方的な願望がありありと伝わってきます。大事なうちの子の結婚相手なんだから、この水準は当然、と思っている節があり、それが成婚につながらない理由の一つだと思います。
でも最も大きな理由は、その場に来ているのはあくまで代理の親ということ。子どもに内緒で来ている人も少なくないですし、仮に親同士が意気投合し、子ども同士でお見合いさせましょうという話になっても、当人から『いやだよ』と言われたらおしまいですから。やはりそこが、代理婚活の最大のハードルではないでしょうか」
とはいえ親が動くと、子どもの婚活へのハードルが低くなる利点もあるという。
条件検索の現実に失望する若者たち
「結婚を願う親に触発されて、子ども本人が婚活を始める気になることもあるでしょう。また逆説的ですが、代理婚活を通じて婚活事情の厳しさを目の当たりにし、子どもの結婚相手の条件を下げることもあります。
つまり、大卒以上じゃないとダメ、35歳までの女性じゃないとダメ、と親が言っていたのが、性格がいい人なら、学歴も年齢も関係ないわよ、と言えることで、子どもが婚活しやすくなるケースもあると思います」
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石川さん自身、交流会に3回参加し、一度は当人同士のお見合いに至ったが、結果的に成果はゼロ。しかしその後、長男は石川さんが取材中に出会った結婚相談所に入会し、2度目の婚活を行った。
「これも結局、うまくいきませんでしたが、長男はいろいろ婚活してみて、いい勉強になったと。結婚相談所に急かされて進んでいくのは、やはり合わないと言っています。それは本人の意思なのでよいのですが、私が気になっているのは、3歳違いの次男。『オレは薄給だから、結婚とか無理だし』と、はなから結婚願望を失っているんです」
聞けば、次男は専門学校卒業後、正社員として働き、家事もできるし、男友達にも恵まれている。ふつうに彼女がいてもおかしくない若者だが、自分は無理だとあきらめている。
「結局、今は条件で相手が検索される時代ですから、若い人たちは、その現実をよくわかっている。そして、そのスタートラインにすら立てないという失望感を抱えているのです。子どもが結婚しないのは、その本人の人間的な問題ではない気がしています」
それでも、子どもの結婚=幸せを願ってしまうのが、親というものだ。
「代理婚活でうまくいく確率は低いかもしれないけれど、何かせずにはいられないのが親の心境です。だからといって、子どもに黙って独断専行でやるのもよくないですし、何よりも親が先に結婚の条件設定をするのもよくない。親の勝手な願望を子どもに押しつけることは、百害あって一利なしです」
石川さんも当初、相手に求める条件を「年齢32〜38歳」としていたが、いま思えばこだわらなくてもよかったと振り返る。
幸せを見つけられる道筋が必ずあるはず
「厳しい現実を知ったからこそ言えるのは、いい意味でどなたでもいいということです。息子がこの人いいなと思い、お相手の方もいいなと思ってくれたら、条件なんてどうでもいいという気持ちです」
昭和世代の親とは異なる閉塞的な環境で、生きにくさを抱える現代の子どもたち。親が子どもに、希望を与えられるとしたら?
「親自身、結婚したり、子どもを産み育てたりする中での“幸せ”を突き詰めて考えて、そのことを子どもに伝えることが大事ではないでしょうか。苦労はしたけれど、夫婦が手を取り合ってやってこられた幸せがあると思うんです。自分自身の人生の中に、子どもが幸せを見つけられる道筋が必ずあるはず。それをまず、親が示してほしいですね」
親の歩いてきた人生の中にある幸せこそが、結婚を含めた、子どもにとっての将来の希望になるのかもしれない。
取材・文/池田純子
石川結貴さん ジャーナリスト。主に家族・教育問題、児童虐待、青少年のインターネット利用などのテーマを取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに書籍の刊行をはじめ、メディア出演や講演会など幅広く活動。著書も多数。
