「ググる」が死語になる日 Google検索が“入口”ではなくなった背景

216

2026年06月12日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

若者は本当にググらないのか

 2024年、英調査会社バーンスタインのアナリストが「若い世代は『検索』はしても、『ググる』はしなくなった」と指摘した。買い物ならAmazonへ、宿題ならChatGPTへと直接向かい、Google検索を経由しないケースが増えているという。


【その他の画像】


 米調査会社が米国の2000人を対象に実施した調査によれば、Z世代の45%が情報収集の際にGoogleよりもInstagramなどの「ソーシャル検索」を使う傾向にあると回答している。ミレニアル世代は約35%、X世代は20%、ベビーブーマーは10%未満で、若い世代ほどこの傾向が顕著になっている。


 Google幹部も、こうした世の流れを認めている。同社幹部のプラバカール・ラガヴァン氏は2022年、「若者のおよそ40%が、昼食の店を探すときにGoogleマップや検索ではなく、TikTokやInstagramを使う」と、社内データをもとに語っている。


 そしてもう一つの大きな変化が、生成AIの普及だ。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが2025年に行った調査では、米国の10代の約3分の2(64%)が、すでにAIチャットボットを利用しているという。Z世代の61%が「従来の検索エンジンの代わりにAIツールを使う」と答え、回答者の42%が「Googleなどの検索エンジンは以前より役に立たなくなっている」と感じているという調査結果もある(米Search Engine Land)。


 つまり若い人たちは、テキストの羅列を読むのではなく、ショート動画を見たり、AIに質問したりして知りたい情報を得るようになっている。これは単なる好みの変化ではなく、情報経済の土台を揺るがす地殻変動だといっていいだろう。


●Google検索も「Webサイトへの入り口」ではなくなった


 この変化の核心は、検索が「Webサイトへの入り口」でなくなりつつある点にある。知りたい情報が検索結果ページ上で完結し、どのサイトもクリックされない。要するに、「ゼロクリック検索」である。


 2026年時点で、Google検索の約65%は、ユーザーが検索結果に表示されたサイトを一度もクリックしないまま終わっている。2019年時点では約50%だったことを考えると、その割合は大きく増えたことになる。特にモバイル端末では、77%超がゼロクリックだ。


 この傾向を加速させているのが、Googleの検索結果上部に表示されるAI要約「AIによる概要」欄である。検索結果の約3割で表示され、要点を即座に提示するため、ユーザーはリンク先のサイトを開く必要がない。


 分析ツールを提供する米ZipTieの分析によれば、「AIによる概要」はオーガニック検索(広告を除く自然検索)のクリック率を61%、有料広告のクリック率を68%も押し下げるという。若者がプラットフォームを乗り換えるだけでなく、Google検索そのものも、外部サイトへ誘導しにくい構造へと変わりつつある。


 最も大きな打撃を受けるのが、検索流入に依存してきたメディアだろう。事実、英国のメディア企業DMG Mediaは2025年9月、「AIによる概要」の登場でクリック率が89%も下落したと報告した。また、英紙ガーディアンは、検索結果で1位のサイトがAI要約の下に押し下げられると、最大79%のアクセスを失う可能性があると指摘している。


●ブランドを「発見」する場が変化


 一方、影響をあまり受けていないサイトもある。米国の上位4万サイトを分析した調査結果によると、オーガニック検索からの流入は全体で2.5%の減少にとどまり、上位10サイトはむしろ1.6%増えていた。打撃が集中するのは、製品レビューやハウツー記事など、AIが要約しやすい情報を扱うサイトだった。


 ユーザーがサイトに来なければ、ディスプレイ広告は表示されず、アフィリエイトリンクはクリックされず、動画広告の配信機会も減少する。サブスクリプションのメディアにとっては、そもそもペイウォール(有料の壁)まで来てもらえないため、AIに答えだけ抜き取られて購読者を獲得できないという問題が起きる。広告依存度の高いメディアは、検索流入の6割を失う可能性があり、中小の出版社は統合や廃業へ向かうとする報告もある。


 第2の変化は、ブランドが「発見」される場所の変化だ。Z世代が新しいブランドと出会うのは、2018年から2023年にかけてソーシャルメディア経由は36%増えた一方で、検索経由は15%減ったとされる(米Butler/Till)。TikTokの独自データでは、ユーザーの61%が同プラットフォームで新しいブランドや商品を発見しており、これは他のプラットフォームの1.5倍だという。


 マーケティング業界では、SEO(検索エンジン最適化)に代わる新たな潮流として「GEO(生成エンジン最適化)」という考え方が広がりつつある。つまり、ユーザーがChatGPTなどに助言を求める世界では、SEOで勝つという旧来のやり方は意味をなさない。指標も、クリック数ではなく、AI上でどれだけ取り上げられるか、どのように言及されるかへとシフトしつつある。


●「検索順位を上げる」発想から脱却へ


 もっとも、この変化には無視できないリスクもある。第一に、情報の正確性だ。AIは、もっともらしいが誤った答えを生成する「ハルシネーション(幻覚)」を起こす。科学論文の参考文献作成能力を検証した研究では、ChatGPTなどが提示した参考文献の25%以上に、実在しない文献や記載ミスが含まれていたと報告されている。


 また、10代などの若者は批判的思考力が発達途上であるため、直感や慣れ親しんでいることに頼りやすく、ソーシャルメディア上の誤情報の影響を受けやすいとされる。アルゴリズムによる心地よい答えにあふれた情報環境は、視野を狭めかねない。


 実のところ、これは規制と市場構造の問題でもある。2024年、米連邦地裁はGoogleが検索市場で違法な独占を維持していたと認定し、2025年末には是正措置が確定した。事業分割こそ免れたものの、Googleは検索インデックスやユーザーの行動データの一部を競合に開放するよう命じられている。


 企業に求められるのは、検索順位を追う発想からの脱却だ。AIに取り上げられる独自データや一次情報を持つこと、SNSで発見される設計をすること、そしてニュースレターなどを通じて、顧客と直接つながるチャネルを強化すること。若者が「ググらない」流れはもう止まらない。すべてのビジネスにおいて、情報の届け方を問い直すべきだろう。


(山田敏弘)



このニュースに関するつぶやき

  • チャピる( ゚Д゚)
    • イイネ!10
    • コメント 1件

つぶやき一覧へ(134件)

ランキングIT・インターネット

前日のランキングへ

ニュース設定