自宅に「生卵」を投げ込まれ…犯人は近所の高齢者だった 引越し代は請求できるのか?

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2024年09月08日 09:50  弁護士ドットコム

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家に生卵を投げ込まれましたーー。


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そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。



相談者は数年前、家に生卵を2回ほど投げ込まれました。敷地に割れた卵が転がる光景に恐怖を覚え、すぐに警察に相談したそうです。



その後、自宅前に住む高齢者が生卵を投げ入れていたことが分かり、「しっかりと賠償、謝罪をしてほしい」と考えています。



理由は明確ではないものの、家の外で子どもを叱った際にうるさがられた可能性があるといいます。



このほかにも、ベランダやドアの前で生卵が割れていたという相談が寄せられています。



このように生卵を他人の家に投げつける行為はどのような罪に問われるのでしょうか?



また、近隣住民に生卵を投げつけられたことで引っ越しを決めた場合、引っ越し代金を相手に請求することはできるのでしょうか? もしくは、相手に引っ越しを求めることはできるのでしょうか?



坂口靖弁護士に聞きました。





●迷惑防止条例や軽犯罪法に違反する可能性

生卵を家に投げつける行為については、各都道府県に設けられているいわゆる迷惑防止条例違反の罪に問われる可能性があるように考えられます。



この点、例えば東京都では、条例5条の2第1項第3号「著しく粗野又は乱暴な言動をすること」等に該当すると評価され、1年以下の懲役または100万円以下の罰金とされる可能性があるように思われます。



また、軽犯罪法第1条11号「相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者」として、軽犯罪法違反の罪に問われる可能性もあるように思われ、拘留又は科料の刑罰を受ける可能性もあるように考えられます。



●建造物損壊罪で起訴されたケースも

他方で、建造物損壊罪(刑法260条)に該当する余地もあるようにも思われますが、「損壊」があったと評価されるためには、一度に投げつけられる卵の量が極めて多く、容易には原状回復が困難であると言えるような場合でない限りは、建造物を損壊した(建造物の効用を害した)とは評価できず、同罪は成立しないものと考えられます。



本件のように2回卵が投げ入れられたのみということであれば、その1回の卵の量にもよりますが、同罪の成立は認められないように思われます。



なお、最近の類似事例では、1回に20個ほどの卵を4年間にわたって投げつけた事件では、建造物損壊罪での起訴がなされたようです。





●引っ越し代は請求できる?

近隣住民から2回卵を投げ入れられたとの事実を原因として、引っ越し費用を相手方に請求することは、原則的には直ちには因果関係が認められず難しいものと考えられます。



この点、卵を投げ入れる行為をやめるように何度も警告等をしているにもかかわらず、継続的に迷惑行為が続き、さらには今後においてもそのような行為が継続すると予測できるような場合には、引っ越し費用の支払いが認められるという可能性はあるように考えられます。



逆に、相手方に引っ越しをしてもらうというのは、和解により相手方に任意に応じてもらう場合でない限りは、難しいものと考えられます。



●損害賠償を請求しても低額か

卵を投げ入れてきた相手に対しては、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。



そして、請求が認められる可能性のある損害としては、卵の撤去(掃除)費用が考えられますが、本件のように2回のみの行為では、その損害金額は極めて低額な金額しか認められないものと予想されます。



また、相手方に対し、慰謝料を請求するということも考えられますが、仮に認められるとしても2回の卵を投げ入れられる行為では、その慰謝料金額も極めて低額(10万円以下等)なものに留まるように予想されます。





●警察に対応してもらうのが効果的

本件のような迷惑行為の被害にあった場合、まずは犯人を特定するために、防犯カメラの設置等、証拠を確保する必要性があります。



また、証拠によって犯人を特定できたとのことであれば、それらの証拠を元に、警察に事件として受理してもらう等し、警察から厳重に注意喚起をしてもらったり、場合によっては刑事事件として立件をしてもらったりするというのが再被害の防止や謝罪を得るというためには、最も効果があるように思われます。



他方で、弁護士に依頼し、弁護士から謝罪や賠償、再発防止を求める通知をだしてもらい、相手方と交渉をしてもらうとか、卵を投げ入れる行為を禁止する仮処分の申し立てをする等ということも考えられます。



もっとも、弁護士に依頼する場合、相当程度の費用もかかる反面、相手方が資力が十分にない方であるような場合や弁護士や裁判所に対して特に権威性を感じないような人物であるような場合には、相手方の行為を予防することは難しいことも多いため、強制力を持った警察に対応していただくことが最も効果的であるように考えられます。




【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」 <https://www.youtube.com/channel/UC0Bjqcnpn5ANmDlijqmxYBA> も更新中。
事務所名:プロスペクト法律事務所
事務所URL:https://prospect-law.com/



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