フジテレビ(C)ORICON NewS inc. 芸能界を引退した中居正広氏(52)をめぐる女性トラブルに局員の関与が指摘された一連の報道を受け、多くのスポンサー企業がCMを見合わせる事態となっているフジテレビ。同局は差し替えやキャンセル分の料金を請求しない方針を決定し、そのためCM収入はこれまでの予想より233億円減少。赤字転落する見通しだ。スポンサー離れの動きが未だ収まらない中、騒動の余波を追うとともに、CMの継続、再開を決めた企業の思いを探った。
【写真】愛人疑惑も?突如流れた企業CMの出演者 発端は、昨年12月下旬に、中居氏が女性との間に起きたトラブルを高額な示談金で解決していたことが一部週刊誌によって報じられ、同局関係者の関与が疑われたことに始まる。
フジ側は「内容については事実でないことが含まれており、記事中にある食事会に関しても、当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません」としていたが、当時社長を務めていた港浩一氏らが出席した1月17日の釈明会見が多くの非難を浴び、日本生命、トヨタ自動車など国内有数の企業がCM差し替えを発表。この動きを各企業も追随し、1月20日までに少なくとも75社が同様の措置を講じた。
一方で、この流れにいち早く異論を唱えたのは「高須クリニック」の高須克弥氏(80)だ。高須氏は1月20日、自身のXで「僕は風評に揺れ動く世間の目を気にしてフジテレビから離れるスポンサーにはなりたくありません」と思いを述べ、「僕は真実が明らかになるまでフジテレビのCMは変えません」と強調した。
高須氏はその後も自身のSNSでスポンサーを続行する意志を示し、2月1日にはXユーザーの「あれ?脱力タイムズって高須クリニックの一社提供だったっけ??」という投稿を引用し、「孤軍奮闘w」とポスト。同7日の番組放送回でも一社提供を継続した。
また大きな印象を与えているのが、独特のフレーズでおなじみの通信販売業「夢グループ」のCMだ。CM内では同社の石田重廣社長(66)とタレント・保科有里との掛け合いが人気を博しているが、同社は2021年10月から、同局ニュース番組「Live News イット!」(後3:45)内でのタイムCMを出稿していることもあり、多くの視聴者がCMを目にした。
番組へのCMを継続している理由について、取材に応じた石田社長は今回の一連の騒動について「あり得ないことです」と厳しい言葉を投げかけた一方、「イットを見ても、司会者だったり、皆さんは物事を一生懸命に伝えている。番組がいいかげんなものになれば、僕だって『冗談じゃない』ってなるけれど、今働いている99%の人たちは一生懸命にやっているわけです」と語った。
ただこうした社長の姿勢には視聴者からさまざまな意見が届いていることも事実で「会社には意見が来ています。『こういう状況なのになぜCMをやめないんだ』『信用を失うよ』『ここの商品は買わない』といった声がある。でも逆に『頑張ってほしい』といった声もあるんですよ」と明かした。
今後のCM継続に関しては「僕は番組そのものを見ています。その状況を注視しています」とした上で、「働いている人たちがいてこその会社。トップが変わったのなら新たな社長(清水賢治氏)に期待するしかない。現場の人たちは『どうなるんだろう』という心配を抱えながらも、仕事に取り組んでいる。僕は期待をしたい。これから頑張って、良い会社になってほしい」と語気を強めた。
未だ多くの企業がCM差し止めを続ける中、2月に入って新たな動きを見せたのが、給湯器の設置などを手掛ける「キンライサー」だ。同社は2月7日、公式Xで「フジテレビのCM放送を再開いたしました」と発表した。
同社は取り下げ後にフジ側の関係者との話し合いを持ったことを明かし、「報道の訂正がなされた一方で、いまだ議論の余地が残る点もあることを理解しております。また、第三者委員会の調査が進む中で、新たな事実が明らかになる可能性もあると認識しています」と問題が収束したわけではないとの姿勢を見せつつも、「私たちはフジテレビ様の中で誠実にこの問題に向き合い、より良い未来を築こうと努力されている方々がいることを知りました」と信頼を取り戻すための試みが始まっていることを評価した。
さらには「どのような困難の中にあっても、変わろうとする意思がある限り、そこには前に進む力が生まれます。今回のCM再開が、未来を信じて努力を続ける方々への励ましの一つとなることを願っております」と激励。「さまざまなご意見があることも承知しておりますが、私たちはこれからのフジテレビ様の歩みを見守ってまいります」とコメントした。
現状、多くの企業の判断の基準となっているのが、一連の問題を調査する第三者委員会の報告だ。調査報告書は3月末をめどに提出される予定で、状況が大きく進展するのは1ヶ月以上先となる。フジ側は若手・中堅社員を中心に構成した「再生・改革プロジェクト本部」を2月6日付けで設置し、第三者委の調査結果を待たず、速やかな企業風土改革を行ってく姿勢を打ち出している。こうした動きを、各企業はどう見極めていくのか、注目が集まる。