※写真はイメージです いよいよ、春本番も目前。イベントの開催や春限定のスイーツ販売など楽しみなことが増え、ワクワクすることも多い季節です。一方で暖かくなると出てくる“虫”、とくに「ゴキブリの出現が心配」という人も多いかもしれません。
そこで創業150年余りの歴史を持ち、殺虫剤で知られるフマキラー株式会社で開発本部基礎科学研究部部長・主席研究員を務める虫博士・佐々木智基先生に詳しく話を聞きました。
佐々木先生は新商品開発のため虫の飼育や研究をおこなうとともに、人と虫との在り方についても追求。人の命と地球環境をみつめる情報発信もおこなっています。
◆春先は気づきにくいゴキブリの卵を掃除
――そろそろ「ゴキブリ」の出現が心配な季節に突入しましたね……。いまの時期だからやっておきたい駆除方法や対策などあれば教えてほしいです。
佐々木先生:掃除方法の前に、まずはおうちに出るゴキブリの種類や特徴についてお話させてください。
一般的なおうちに出るゴキブリの種類は、だいたい“クロゴキブリ”。このクロゴキブリは1年半〜2年と非常に時間をかけて成長し、成虫になります。
そして成虫として出てくるのは夏場がほとんどで、そこから秋口にかけて卵を産むため、冬場や春先に見かけるのは卵。春先だと成長途中の小さい幼虫を見かけることもあります。
――では、いまの時期は駆除に最適ということですか?
佐々木先生:放置すると餌を食べて大きくなってしまうので、いまのうちに駆除しておくといいですね。ただ、普通に生活をしていると卵には気づきにくいですし、見つけるのも至難のワザ。そのため冬場や春先は、「ゴキブリを見かけないから、対策しなくてもいいや」となってしまうことも多いです。
――気づきにくいなら、駆除するのは難しそうですね……。
佐々木先生:そこで駆除するというよりは、掃除をすることで卵を減らすという方法がおすすめです。シンクや洗面台下にある収納、食器棚など、ちょっとジメっとした暗くて普段はあまり人が来ないところの隅や端に卵を産むことが多いので、冬場や春先はそういう場所を重点的に掃除するといいですよ。
ただ卵は排泄物などで固定されているので、素手で触ると不衛生。使い捨て手袋をして、ガムテープなど粘着性のあるものを使って掃除するのが清潔です。
◆幼虫・成虫のゴキブリ対策と駆除方法
――春先の幼虫や夏場に出現する成虫の対策や駆除方法についても教えてください。
佐々木先生:ゴキブリは外からやってくるので、自宅周辺の雑草を抜いたりベランダの物やゴミを片付けたりして、隠れ場所を少なくすることも対策のひとつです。
あとは、エサを減らすこと。調理器具や食器はすぐに洗い、残飯はニオイの出ない袋に入れて口を縛り、ラップをしたままの食べ物や開封済みのお菓子などは虫の動きが鈍くなる冷蔵庫へ片付けるようにしましょう。
――ゴキブリの動きが活発になるのは何℃ぐらいからですか?
佐々木先生:虫が活発になるのは基本15〜30℃ぐらいで、ゴキブリも同じ。エアコンなどで部屋の温度が上がると出てくることもありますが、温度が低くなる冬場や春先は、冷蔵庫の下など温かい場所でじっと過ごして越冬することが多いです。なので、冷蔵庫の下などもしっかりと掃除しておきたいですね。
――冷蔵庫の下は掃除がしづらいです……。殺虫剤を振りかけておくだけではダメですか?
佐々木先生:冷蔵庫を動かさないと掃除が難しい場合はそのままスプレーしていただいても大丈夫ですが、ホコリがたくさんあると効果が半減する恐れもあります。噴射したスプレーが全体にいきわたるよう、まずはしっかりとホコリを取り除いてあげることが大切。
掃き掃除と拭き掃除をして、それからスプレーをします。動き回る幼虫や成虫には、置き型タイプの殺虫剤や粘着性のある捕獲器なども有効です。
◆クロゴキブリの幼虫は見た目でわかる?
――あとは遭遇したときに退治するしかないと思うのですが、クロゴキブリの幼虫は見た目でわかりますか?
佐々木先生:成虫が大体3〜4cmぐらいで、幼虫だと1cmぐらい。色は濃い茶色なので、こげ茶色の虫がいたら、ちょっと危ないという感じです。
卵から産まれたばかりだと小さくてどこにいるかわからないので、それを退治しようというのは難しいでしょう。なので、置き型タイプの殺虫剤や粘着性のある捕獲器などを設置して駆除します。
――成虫は黒いのに、幼虫は濃い茶色なのですね。
佐々木先生:クロゴキブリという名前ですが、成虫も真っ黒ではありません。よく見ると、茶色が濃くなっているのがわかります。黒く見える昆虫なんかも、実は真っ黒ではないことが多いです。
◆幼虫が薬剤を食べることで来年の出現数を抑えられる
――どれぐらいから見分けがつくようになるのでしょう?
佐々木先生:産まれてから2年目に突入しているクロゴキブリの幼虫は、結構大きいです。まだ成虫との見た目に違いはありますが、ゴキブリだと分かる人もいるぐらい。
こういった幼虫が殺虫スプレーに触れたり置き型タイプの薬剤を食べたりして死ぬことで、来年の夏に出現するゴキブリを減らすことにつながります。
――それは嬉しいです!
佐々木先生:ただ生態系が崩れると、食物連鎖にも影響を及ぼします。そのため、ゴキブリに限らず、駆除するのは最小限に抑えたいものです。そのためにもまずは、先ほどお話した自宅周辺の草むしりやゴミの撤去などをして、家に入れない工夫をしてみてください。
◆ゴキブリの実害と駆除すべき理由
――地球の生態系を崩さないことも大切と教えていただきましたが、やはり家の中に入ってきたゴキブリは退治したほうがいいですよね……?
佐々木先生:ゴキブリの暮らしは、野外がメイン。冬場は外の気温が下がるので暖房であたためられた部屋を好みますが、外のほうが餌は豊富にありますから。
外をメインに暮らすゴキブリはどこにいたかわからない状態で入ってきますし、家の中に入ってきてからも排水溝やトイレなど、どこを移動したかわからないため不潔な可能性が高いです。
――あぁ……、そうですね。
佐々木先生:実は、はっきりとしたゴキブリの実害については判明していません。
ただ、いろいろなところを這いまわっているうちにO157やサルモネラ菌を媒介して食中毒を引き起こす原因になることもありますし、ゴキブリの排泄物がアレルギー反応を起こすこともあるといわれています。なので、家の中に入ってきたゴキブリは駆除するのがおすすめです。
――殺虫剤はベトつくので、床や壁を傷めてしまいそうで使いにくいです。
佐々木先生:殺虫するときに出てくるオイルを減らした「フマキラー ワンショット未来」だと、ベタつきも少ないです。俊敏なゴキブリにも直撃しやすいスプレーとなっています。
――ではやはり、家の外回りやベランダを清潔に保っておくことがポイントですね。
佐々木先生:はい。それに、除草したり物やゴミを減らしたりすることでゴキブリだけでなく、ほかの虫についても発生を減らすことができるので、ぜひ実践してみてください。
◆「譲れない」優先順位でゴキブリ駆除製品を選ぶ
――幼虫や成虫を駆除するとき、スプレータイプの殺虫剤だと床や壁がベタつくのが嫌だという人もいますし、お子様やペットがいる家庭では薬剤入りの商品に抵抗があるという人も多いようです。何か方法はありますか?
佐々木先生:床や壁のベタつき、お子様やペットへの影響が心配という場合には、オイルや薬剤が入っていない凍らせるタイプがおすすめです。当社の製品だと「フマキラーゴキブリ超凍止ジェット」が該当します。ただ、凍らせるタイプは薬剤が入っていないためゴキブリが再び動き出すこともあるので、直接しっかりと長く当てるように噴射してください。
――油や薬剤が入っていないのは嬉しいです。ただ、再び動き出すかもしれないというのは恐怖ですね。
佐々木先生:よく効くのは薬剤が入っている噴射タイプですが、製品や使う方の感覚によっては噴射後のベタつきが気になるという場合もあると思います。ご自身が“譲れないこと”に優先順位をつけ、ライフスタイルや感覚に合う対策製品を選ぶといいかもしれません。
◆まずはキッチン周りやベランダを清潔に保つことが大切
春以降は、ゴキブリも活発に活動をはじめる時期。
まずはシンクや洗面台下にある収納、食器棚などの隅や端をしっかり掃除してゴキブリの卵や幼虫を駆除し、家の外回りの除草やベランダにゴミ・物を置かないよう心がけて快適に過ごしたいものですね。
【佐々木智基】
フマキラー株式会社にて開発本部基礎科学研究部部長・主席研究員を務め、虫の飼育・研究をおこなう虫博士で、5年以上にわたり蚊・ゴキブリ・ダニ・アリ・外来種問題を担当。虫や植物がテーマのキッズ向けサイト「フマキッズこども研究所」内でも“虫はかせ”として活躍するほか、「虫や植物とふれあうコンテスト」の審査員も務めている。
<取材・文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。