AIで可能性が広がる!? 折りたたみスマホの光と影(後編)

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2025年05月17日 18:01  BCN+R

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折りたたみスマホはAIで可能性が広がるか!?
 前編では、折りたたみスマートフォン(スマホ)の登場からカバーディスプレーの進化までを概観した。後編では、折りたたみスマホの課題と今後の展望、そして、筆者が注目するChatGPTを代表とするAIとの相性についても考えてみたい。

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●折りたたみスマホをどんな時に広げる?

 普通サイズのスマホをタブレットサイズに画面拡張できることはスマホの画期的な進化だが、広げるのは地図の詳細を確認する時や、Webなどを複数人で見る時、ペンによる入力、あるいは先進的な折りたたみスマホを知人に見せてドヤ顔で優越感に浸る時などに限られる。

●「フォールド」と「フリップ」の違い

 大きなメインスクリーン向きのアプリとして思い当たるYouTube動画の再生やマルチアプリの同時起動によるコピペなどもあるが、実際には登場機会は少ない。開くと正方形に近いメインスクリーンは、昭和の4対3映像ならまだしも、アスペクト比16:9や21:9、まして1:2.35のシネマサイズの動画視聴には残念過ぎる。

 この点は、携帯時にコンパクト、使用時に拡張してストレートスマホ・サイズになるフリップモデルとは大きく異なる。タブレット端末の使用シーンに主軸を置いて「横折り」してストレートスマホとしても使えるようにカバーディスプレーを取り付けた「フォールド」と、ストレートスマホの可搬性と携帯性を加速し「縦折り」して必要な情報だけを見ることのできるカバーディスプレーを取り付けた「フリップ」。これらは全く異なるDNAを持つ兄弟プロダクトだ。フォールドとフリップは、それぞれ異なるユーザーニーズに応える製品だ。

 両者の大きな差異は、重量差でも理解できる。2019年に登場したGalaxy Foldは276g。そして技術革新で最新のGalaxy Z Fold 6は239gと、15%ほど軽量化している。大きく高価な液晶画面を折り畳むというデリケートな構造ゆえユーザがタフなケースを装着すれば直ぐに350g越えだ。折りたたみスマホの携帯重量は機種選択の重要な要素だ。

 一方、フリップタイプなら初代から最新のGalaxy Z Flip 5まで、その重量は185g前後と変わっていない。まだ折りたたみスマホを発表してはいないアップルのiPhoneは、Galaxy Foldが登場した19年のiPhone 11 Pro Maxが226g、最新のiPhone 15 Pro Maxが221gと、普及価格帯のAndroidスマホより20%増しだ。単純比較だとフォールドのスマホが飛び抜けて重量級だ。「折りたたみスマホ」ではなく「折りたたみタブレット」なので当然といえば当然だ。

●Galaxy Z Fold 4のリペアをお願いすると……

 前編でも述べたが筆者は現在、折りたたみスマホを使っていない。実は昨年6月に1年のメーカー保証期間の過ぎたGalaxy Z Fold 4のメインスクリーンの液晶フィルムの中央部分が突然浮いてきたので、原宿のGalaxy Harajukuへリペアに出向いた。その1年前にも同様のフィルム浮きが起こったが、保証期間中だったので無償修理をしていただいた。

 ところが、今回は購入後1年半ほど経過していたので有償修理となったが1万円少々ということでお願いした。同時に、折りたたみを開いた時、完全に180度開かずテーブル上で左右にガタガタと揺れる状態だったことも最近気になっていた。

 ヒンジ部分の不調なのでその修理も依頼したところ、係の人が調べてくれた結果に唖然とした。Galaxy Z Foldの場合、ヒンジ部分とメインスクリーン液晶部分とは一体化部品で修理交換となれば12万円ほど必要らしい。液晶フィルムとあわせると13万円超えで驚いた。折りたたみスマホは、構造が複雑なため、耐久性や修理コストも課題となる。

 筆者が過去長く勤めていたPC業界でも身近なサービスセンターでの交換修理はこういったFRU(Field Replaceable Unit:現場交換可能ユニット)という考え方が一般的で、複雑な構造だと予想されるGalaxy Z Fold系も同様の修理スタイルのようだった。

 購入時に約25万円だった折りたたみスマホの18カ月後の修理が13万円超えはなかなか厳しい。このことがきっかけで、折りたたみスマホは現在休止中だ。その翌月に同じサムスンのストレートスマホであるGalaxy s 24 UltraにオプションのGalaxy Care(2年保証)を付けて約25万円を支払い現在使用中だ。

 今年発売予定のGalaxy Z Fold 7を次期スマホの候補には入れているが、まだ購入は決めていない。価格はきっと2年保証保険などを含めると、30万円超えは確実かもしれない。折りたたみスマホの価格は依然として高価であり、今後の価格動向が重要な鍵だ。

●再び折りたたみスマホの購入を考えている理由

 折りたたみスマホの使用を止めた筆者がGalaxy Z Fold 7の購入を考えているのは、最近お世話になっているChatGPTの使い勝手に大きく影響を受けたからだ。当初は写真のアニメ化やジブリ化で遊んでいたが、真面目に仕事に使い出すとストレートスマホの画面では狭過ぎて必要な時に大画面を使えるスマホが欲しくなってきた。ChatGPTの登場は、折りたたみスマホの新たな可能性を示唆している。

 自宅の自室でChatGPTを使う時はほぼ100%大型液晶のデスクトップPCだ。一方、モバイル環境時にスマホでChatGPTを活用する時には、大きな画面を含め音声入力、音声応答など、多様で便利なUIを利用した最高のモバイル環境を実現したいと考え出した。

 筆者がChatGPTを使っているケースの多くでは図版や枠組み比較表などの応答が多い。残念ながら、これらの出力形態は一般的なストレート型スマホやフリップタイプの折りたたみスマホでは実現が難しい。横折りスマホだけが実現できる大画面は、AIとのインタラクションにおいて、より快適なユーザーエクスペリエンスを提供できるだろう。さて、フォールドかフリップかどっちにする!?(T教授)



T教授

日本IBMでノートPC「ThinkPad」のブランド戦略や製品企画を担当。その後、国立大学芸術文化学部の教授、非常勤講師として10年間、「ブランドデザイン」などを教える。オリジナルのツバメノートなどをプロデュースする「Thinking Power Project」の創設メンバー。現在はパートタイマーで、熱中小学校の用務員。

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