米関税への言及なし=G7、「苦肉」の声明採択

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2025年05月23日 21:01  時事通信社

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時事通信社

記念撮影に臨む先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁ら=21日、カナダ・バンフ
 カナダで開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が22日、閉幕した。トランプ米政権の高関税政策で高まる世界経済の不確実性に懸念が相次いだものの、共同声明に関税への直接的な言及はなかった。対立を避け、米国を含む全参加国の合意を優先した構図が透ける。

 「(G7の)中核的な使命に立ち戻る。それは、世界経済に安定と成長をもたらすことだ」。閉幕後に記者会見した議長国カナダのシャンパーニュ財務相は、関税問題に触れなかったことに関してこう説明した。

 声明では、不確実性をもたらす「主犯」として、中国の過剰生産問題を念頭に置き、巨額の政府補助金などの非市場的政策・慣行を問題視。「同じルールに従わず透明性を欠いている国々によって引き起こされる損害に対処する」と明記した。

 ただ、G7が推進してきた自由貿易の重要性などの指摘もなく、「50年間にわたり協働し、国家間の違いを乗り越え、世界の繁栄を促進してきたことを踏まえると、G7の価値は明確」との表現にとどめた。

 カナダがG7議長国になるのは2018年以来。当時は第1次トランプ政権下の米国と各国が通商問題を巡って対立、共同声明の発出を見送った経緯がある。さらに今回の会議に先立ち、米当局者は米国の優先課題に一致した場合のみ声明に署名する意向を表明。こうしたことが「苦肉」の採択の背景にあるとみられる。

 声明では関税を巡る米中対立の緩和を背景に「不確実性はピーク時から低下した」とも指摘。日本政府関係者は「米国に対する特別な遠慮や、書きたいことも書けなかった感は全くない」と強調した。

 来月中旬のG7首脳会議(サミット)には、トランプ大統領本人の出席が予定される。シャンパーニュ氏は「われわれの仕事は、首脳たちに安定と成長に関して報告することだ。任務を果たした」と述べた。加藤勝信財務相も「取り組むべき課題についてかなり突っ込んだ議論をできた」と満足げに語った。(バンフ時事)。 
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