歌舞伎町を凌ぐ、日本最大の歓楽街と呼ばれるミナミ(写真の場所は本文の内容と関係ありません) 大阪・関西万博の喧騒の陰で、裏社会ではIR開業後に待ち受ける巨大利権の争奪戦が起きている!?建設業界、民泊ビジネス、闇金、歓楽街……万博で動く莫大な“カネ”の争奪戦に迫った。
◆万博特需で潤う夜の街ではトクリュウの存在感が増大
「暴力団お断り」の張り紙のもとに進行する万博事業。その一方、そっぽを向いたヤクザたちが“特需先”と息巻いているのが夜の街だ。
万博には全国だけでなく世界中から観光客が押し寄せている。そうなれば当然、飲み屋の客足も伸びてくる。
「特に大阪一の歓楽街であるミナミは今なおヤクザたちが根を張っているエリア。ヤクザ本人が出資、また事実上の運営側に入っているキャバクラやガールズバー、コンセプトカフェも多い。ただ、ここ10年ほどは府警の目も厳しく、ヤクザの動きを追うためにミナミの至るところに防犯カメラが設置されて監視されているので、顔が割れたヤクザが店に出入りすれば一発で探られる」(歓楽街関係者)
さらに、昨今の警察の動きとしては、地元の飲み屋街を中心に夜の営業店への立ち入り調査が頻繁に行われているという。
府警の関係者は、「防犯カメラの映像や通報を基に、特定の店をピンポイントで調査することが増えている。実際、表向きは健全な飲食店でも、裏ではヤクザ資金が流れ込んでいるケースもあり、取り締まり対象となっている」と話す。
◆“トクリュウ”に東京の半グレも参入し混乱
そうした中で、一役買っているのが、トクリュウ(「匿名・流動型犯罪グループ」の略称)と呼ばれる犯罪集団だ。
「飲み屋は10代から20代の若いカタギのコたちに任せている。向こうからしても自分たちの収入になるし、もし他の組織から嫌がらせをされた時はこちらに相談できるから楽やろ」(前出の歓楽街関係者)
トクリュウの存在感が増している背景には、かつてのヤクザ組織が持っていた統制力が弱まっていることも関係している。
府警による徹底的な取り締まりと、暴対法の強化により、ヤクザの資金源は減少。代わって、若年層の半グレ集団が勢力を伸ばし、従来の勢力図を塗り替えつつある。
「最近は警察の締めつけで仕事ができなくなって、東京から流れてくる半グレも増えてきている。大手スカウトグループ『N』の残党が大阪に移り、仕事を始めようと動いていて、地元の半グレたちと小競り合いになっている話も聞いている」(府警関係者)
◆東京発の半グレが“地域密着”勢力とコラボ
一方で、東京から流入する半グレ集団は、地元勢力と連携するケースも少なくない。「N」の残党が狙うのは、ミナミ周辺の飲食店への出資や、風俗店への資金提供だという。
「東京での稼ぎが頭打ちになった半グレたちが、大阪の夜の街で活路を見いだそうとしている。特に万博に乗じて店を確保しておけば、観光客が押し寄せるほど大きな収益を見込める。彼らにとっては絶好のビジネスチャンス」(同)
さらに、ミナミの歓楽街では東南アジア系の外国人グループも暗躍しており、観光客をターゲットにした闇カジノや、闇金融業者の動きが活発化しているという。
万博需要は新たな群雄割拠を生み出そうとしている。
◆“規制強化なし”風俗街の謎
国際イベントの開催前には風俗街の取り締まりや整理が行われるのが通例である。’21年の東京五輪の際にも、台東区や新宿区など一部の風俗街で営業停止や移転が相次いだ。
しかし、大阪万博に際して大規模な取り締まりは断続的にしか行われていない。
「隣の兵庫の尼崎の風俗街が完全に潰されたにもかかわらず、大阪市内の風俗街の規制に関してはさほどやる気を感じられない。一つだけ例外的に、某立ちんぼゾーンの道路の一部が黄色く塗り替えられただけとも言われています」(風俗関係者)
この中途半端な対策に関しては“政治的な力学”が作用しているとの指摘もある。
飛田新地を含むこれらの地域は、特定の元政治家や裏社会の利権が絡み合うエリアとしても知られており、行政の動きに対する影響力が強いのではないかとの見方も存在している。
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
―[[大阪万博とヤクザ]の“裏”実態]―