
ソニーは、Xperia 1シリーズの最新モデルとなる「Xperia 1 VIII」を発表した。Xperia 1は、Xperiaのフラグシップに位置付けられる製品で、カメラ、映像、音楽にソニーの技術を詰め込むことを売りにしてきた。最新モデルのXperia 1 VIIIでも、この方針は継続しており、望遠カメラのセンサーに1/1.56型の比較的大きなセンサーを採用。3つのカメラにRAWの重ね合わせ処理を入れ、画質を向上させた。
Xperia 1 VIIIでは、よりユーザーの間口を広げる機能も搭載されている。写真の彩度や明るさなどを自動で調整する「クリエイティブルック」を自動適用したり、画角やボケの提案をしたりする「AIカメラアシスタント」が、それだ。公式サイトなどのキャッチコピーでは、望遠カメラ以上にこの機能をアピールしている。構図や設定に自信のないユーザーには、便利な機能といえる。
もともとXperia 1シリーズはフラグシップモデルとして、クリエイターのコンテンツ制作を助ける道具と位置付けられてきた。一方で、AIカメラアシスタントは、撮影にあまり慣れていない初心者のユーザーに向けた機能のようにも見える。Xperia 1 VIIIで、何か戦略の転換があったのか。ソニーのスマホに対するスタンスを読み解いていく。
●望遠カメラ刷新でデザインもリニューアル、売りとして打ち出したAIカメラアシスタント
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Xperia 1 VIIIでは望遠カメラを刷新し、センサーサイズを先代比で4倍に拡大。RAWのままでの重ね合わせ処理を行うことで、全てのカメラの画質を向上させた。そのアップデートに伴い、デザインを変更。「Xperia 1 II」以降、同シリーズのトレードマークにもなっていた背面端の縦に3つ並んだカメラのデザインを変え、スクエアな台座の上に、2×2でレンズが入るスペースを取ってそれぞれのカメラを配置した。空いたスペースには「Sony」のロゴが入る。
Xperia 1 VIIでは左上の端にあった超広角カメラがXperia 1 VIIIでは広角カメラの右隣に移動したので、超広角撮影時でも指が写り込みにくくなった。スピーカーも上下(横にした場合左右)で同じものを搭載できるようになり、より音量が上がった他、低音や高音が改善されて音の解像感が高まっている。機能的には「Xperia 1 VII」から正統進化している部分も多いが、それに合わせて設計を大きく変え、フルモデルチェンジを果たした格好だ。
1月にイメージングコミュニケーション事業部門 事業部門長に就任した大澤斉氏は、「3眼全てがフルフレーム並みの暗所性能」と、その実力をアピールする。確かに、暗所で望遠カメラを使って人物を撮影しても、前モデルのXperia 1 VIIよりノイズが少なく、人の肌も滑らかに表現できている。背景の照明が、キレイな玉ボケになっているのも、新しい望遠カメラの実力といえる。
その望遠カメラ以上にソニーがアピールしていたのが、新機能のAIカメラアシスタントだ。この機能は、Xperia 1 VIIIの開発コンセプトにもつながっている。大澤氏は、同機を紹介する際に「新しいフラグシップのXperia 1 VIIIは、感性とテクノロジーの距離をできるだけ近づけ、撮ることをもっと自然に楽しめるようにしたいという思いから生まれた」と語っている。その自然な撮影ができるのが、AIカメラアシスタントというわけだ。
AIといっても、生成AIで撮った絵そのものを大きく編集してしまうのではなく、この機能はあくまで“助手”に徹している。もともとデジタルカメラの「α」に搭載され、Xperiaにも受け継いだ「クリエイティブルック」を被写体に合わせてワンタップで適用するというのがその中身。これに加えて、レンズの変更や背景ボケの提案をしてくれるのがAIカメラアシスタントの全体像だ。
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GoogleのPixel 10シリーズには「カメラコーチ」と呼ばれる機能があり、構図や画角、ポートレートモードなどの使用を提案する。Xperia 1 VIIIのAIカメラアシスタントでは構図の提案までは踏み込んでいないものの、設定の変更をワンタッチで済むようにしているのが特徴だ。両機種ともに、AIはあくまでユーザーの撮りたいであろうイメージを実現するために補助する存在で、写真そのものを生み出すものではないという点で共通している。
ただし、AIカメラアシスタントは、まだ導入したばかりの機能で、不完全な部分もある。個人的には、レンズ選択のアシスタントが出づらく、さり気なさ過ぎて目立たないところが気になった。「画作りには、ソニーが長年培ってきた膨大なデータを解析した」(同)というが、「フィードバックもいただき、この後どんどん進化させていく」(同)といい、今後も継続的にアップデートしていく方針だ。
●AIで間口を広げたXperia 1シリーズ、Xperia 5ユーザーの受け皿にも
一方で、ソニーのデジタル製品はクリエイター向けを明確化し、プロユースに耐えるものが多い。Xperiaも、一時は「Photography Pro」のように、αのユーザーインタフェースをスマホの画面に最適化したアプリを標準で載せ、デジタルカメラのように設定を工夫しながら撮るユーザーに最適化していた。大澤氏も、「われわれはクリエイターエコノミーを非常に意識している」と語っている。
ただ、「1億総クリエイター状態になっている中、より簡単に、あまり難しいことを意識せず、美しい写真や素晴らしい動画を撮りたい方は増えている」(同)。AIカメラアシスタントは、「そちらのお客さまにも、きちんとXperia 1シリーズを使っていただけるアプローチ」(同)だという。より間口を広げ、「これまで少しハードルが高いと思って使えなかったお客さまにきちんと使っていただけるようにした」のがXperia 1 VIIIというわけだ。
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背景には、ハイエンドモデルをXperia 1シリーズに集約していることもありそうだ。ソニーは、Xperia 1シリーズよりもコンパクトなXperia 5シリーズを投入してきたが、2023年の「Xperia 5 V」を最後に、以降の新機種投入を見送っている。よりライトにXperiaのハイエンドモデルを使っていた層が、Xperia 1シリーズとミッドレンジのXperia 10シリーズに分かれてきた経緯がある。
大澤氏は、「Xperia 5シリーズのユーザーはまだたくさんいるので、その方々がさまよわないようなことは考えなければいけない。Xperia 1や10で受け切れるかが、われわれのラインアップの議論になる」という。実際、Xperia 1シリーズは、2024年に投入した「Xperia 1 VI」でカメラのUIをそれまでのPhotography Proから現行のスマホライクなスタイルに変更。2025年のXperia 1 VIIでも、それを踏襲した。AIカメラアシスタントの搭載で、その方向性をさらに強めたといえる。
もちろん、これまでのXperia 1シリーズと同様、「プロの方や、豊富な知識を持っている方にも使っていただきたいので、(カメラのUIには)プロモードも準備している」(同)。プロモードは、「シャッター速度優先」「プログラムオート」「マニュアル」を切り替えることができ、他社スマホのプロモード以上に作法がデジタルカメラに近く、デジタルカメラに慣れたユーザーには操作がしやすい。
プロでも使えるツールをベースにしながら、より間口を広げていき、スマホで撮影を楽しむユーザーも取り込んでいくというのが今のXperia 1シリーズの方向性だ。画質向上や高倍率のズームにAIを多用する他社とはアプローチが異なるが、ラインアップにαを持ち、プロユーザーからも一定の信頼があるソニーらしい戦術といえる。
●広げた間口と上がった価格、値上げの影響はどう出る
ただ、機能的に間口を広げた一方で、購入のハードルはXperia 1 VIIのときよりも上がってしまった。価格が大きく上がったためだ。ソニー自身が販売するオープンマーケットモデルは、メモリとストレージが最も少ない12GB+256GBモデルで23万5400円。Xperia 1 VII発売時の20万4600円から3万円程度高くなってしまった。大澤氏も「価格については、2025年モデルから上がっている」と認める。
価格上昇の背景には、「メモリ需要の急増による価格(部材費)アップや、人件費、工場での製造費、物流費など、いろいろなものが値上がりしている」(同)という事情がある。「メーカーとしてはもちろん価格を抑える努力はしているが、今回はこの価格付けになった」と同氏。数を追うモデルではないとはいえ、ソニーにとって、「23万円という価格は、本当にチャレンジ」(同)になる。
20万円を超えるのは、他社だと「Pro」や「Ultra」を冠する最上位モデルが多い。ハイエンドモデルの中にバリエーションを設け、数を稼ぐのが定石だ。これに対し、Xperia 1 VIIIは上下にバリエーションがなく、ベースモデルが23万円を超えているため、どうしても割高に見えてくる。最上位モデルには、20万円を超える価格をユーザーに納得させるだけの、分かりやすい売りがあることが多い。折りたたみしかり、1型センサーしかりだ。
これに対し、Xperia 1 VIIIは望遠カメラのセンサーを大判化したものの、メインの広角カメラは1/1.35型どまり。大澤氏は「センサーサイズが全てではなく、アウトプットのクオリティーを、今持っている技術をどう組み合わせて最上までいけるのかというバランス」だと言うが、一芸に秀でた端末と比べ、その魅力を一発で伝えづらいのが難点になりそうだ。
とはいえ、ラインアップを拡大し、Xperiaの中で「すっぽり空いている」(同)10万円台の端末を投入できるかというと、それも現時点ではハードルが高いという。10万円台前半のモデルはキャリアによっては、契約とひも付ける形で月額1円になり、2年後の下取りで残価が免除されることがある。大澤氏は、この実質24円を「非常にビジネスがやりづらい領域」と評する。
「あそこに追従していくと、長い目で見てビジネスを壊していくことになるので、悩んでいるが、ボリュームのシェアを追うつもりはない」(同)というのがソニーの考えだ。メモリ不足や物価高で価格が上がったうえに、強力な競合がひしめく安価なハイエンドモデルを作りづらい環境になっているのが、今の課題と言えそうだ。
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