ひろゆき―[ひろゆきの兵法〜われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?〜]―
就職氷河期世代はこれまでの人生においてさまざまな困難を乗り越えてきたわけだが、40〜50代になって改めて向き合う難問が「人間関係」だ。将来不安から必要以上に貯蓄を追い求めてしまう彼らに、同世代のひろゆき氏がシンプルな指針を示す。
◆人生後半の人間関係は、「付き合う残り時間」を意識したほうがうまくいく
世の中には契約やルールがあるので、「ルール上正しいことを主張すれば利益を守れる」と思っている人は多いです。それは間違いではないのですが、実際にはルールを盾にして強く出ると、お互い消耗して終わることが結構あります。
例えば、飲食店で注文した料理と違うものが出てきたとして、ルール上は返金を求めたり、店員に文句を言うこともできますよね。でも、そこで強く出るとその店には行きづらくなったりします。逆に「ミスは誰にでもありますよ」と言っておくと、次に行ったときにサービスしてくれるかもしれません。
仕事でも、支払いが少し遅れているときに「すぐ払ってください」と強く言ったり、法的な手段に出ることもできます。でも、自分の中で譲れる部分を見つけて「社内処理とかいろいろあると思うので、来月までに入れば大丈夫です」とか言うと、相手に好印象を与えます。すると、その後に何かお願いしたときに優先して対応してくれる、みたいなメリットが生まれます。
人はどうしても目の前の利益を取りにいきがちです。ルール上取れる利益があるなら回収したくなるし、自分が正しいなら相手にそれを認めさせたくなる。短期目線で物事を見がちになるんですね。
一方、そこで少し譲って相手に“逃げ道”をつくると、感謝されるだけでなく、後で別の恩恵が返ってくることがあります。人間関係やビジネスでは「貸し」という概念で動くパターンが多々あるので、すぐに小さな利益を回収するより、信用をつくって後で大きな利益につなげる「損して得取れ」的な考え方です。
◆一度は信用しても、裏切られたら倍返し
ただ、その判断が常に正しいわけではありません。ゲーム理論の「囚人のジレンマ」という実験では、基本的には相手を信用して協力するけど、裏切られたら徹底的に対抗する、という戦略が一番良い結果になると言われています。つまり最初は信用するけど、相手が裏切るなら徹底的に闘う……という感じです。
世の中には気分次第で感情的に動いてトラブルを起こしてくる人もいて、そういう人と長く信頼関係を築こうとしても、正直意味がないです。つまり、相手が長期的に信頼関係を築こうとするタイプなのか、それとも短期で利益を取りにくるタイプなのか――その見極めをしたうえで付き合い方を変えたほうがいいと思うのです。
氷河期世代の人に当てはめてみても、仕事という意味では現役期間はそれほど長くありません。だから、50歳から人間関係を一からつくっても、回収する前に自分が引退してしまう可能性もあります。
だから氷河期世代の場合、少なくとも仕事においては「損して得取れ」の一辺倒で考えないほうがいい。「今、利益を取るか」「後で大きな利益を取るか」は、相手のスタンスと付き合う残り時間を天秤にかけて決めるしかないのかなと。目の前の利益を優先するのか、損をしてでも信頼関係を残すのか。その判断を間違えない人だと、結果的に長く得をする気がします。
構成・撮影/杉原光徳(ミドルマン)
―[ひろゆきの兵法〜われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?〜]―
【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。東京都・赤羽に移り住み、中央大学に進学後、在学中に米国・アーカンソー州に留学。1999年に開設した「2ちゃんねる」、2005年に就任した「ニコニコ動画」の元管理人。現在は英語圏最大の掲示板サイト「4chan」の管理人を務め、フランスに在住。たまに日本にいる。週刊SPA!で10年以上連載を担当。新刊『賢い人が自然とやっている ズルい言いまわし』