F1コラム:マグヌッセンとハースの稀有な歴史(1)性格が似ていたシュタイナーとの蜜月期と、小松体制での変化

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2024年08月23日 12:50  AUTOSPORT web

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2017年F1日本GP ケビン・マグヌッセン(ハース)の誕生日を祝うギュンター・シュタイナー代表(当時)
 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、2024年末で長年のパートナーシップに終止符を打つことを決めた、ケビン・マグヌッセンとハースの歴史を振り返る(全3回)。

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■マグヌッセンとハース:7年の提携という特殊性

 ケビン・マグヌッセンは12月8日のアブダビGPをもって、ハースF1チームから離脱する。

 2024年はマグヌッセンにとってハースでの7シーズン目に当たる。グリッドの後方に位置するチームでこれほど長く過ごしたドライバーは非常にまれだ。F1ドライバーは通常、ハースのようなチームには1年か2年しかとどまらず、その後はより上位のチームに移籍するか、F1活動そのものをやめてしまうものだ。しかし、マグヌッセンとハースは7年間共に過ごし、今シーズンが終わる時、彼はこのアメリカのチームで147回のグランプリに出場することになる。同じチームで多くのレースを走ったF1ドライバーのリストにおいて、これは6位に相当する記録だ。

■マグヌッセンとチームボスとの関係

 マグヌッセンは、ハースでの7シーズンのうち6シーズンはギュンター・シュタイナーの下で、今年のみ小松礼雄の下で戦った。マグヌッセンはシュタイナーを「今までで一番のボス」と呼んだことがある。それは、多くの面でふたりは同じ性格を持っているからだろう。ふたりとも率直で、結果重視で、“政治”に興味がなく、不必要な話で時間を無駄にしない。

 マグヌッセンとシュタイナーは時には意見が合わず、ドアを叩きつけるようなこともあったが、揉め事が長く引きずられるようなことはなかった。マグヌッセンは多くの面でシュタイナーの“プロジェクト”だった。そのため、2022年の初めにニキータ・マゼピンを降ろさなければならなくなった時、シュタイナーは迷うことなくマグヌッセンを呼び戻した。

 このようにシュタイナーとマグヌッセンの関係は良好だったが、チームオーナーのジーン・ハースが今シーズン前にシュタイナーを降ろして代表の座に小松を据えた時、マグヌッセンはその決定を支持した。そのとおり、これは正しい決定だった。なぜならハースF1チームは、今年、大きな進歩を遂げているからだ。

 シュタイナーと小松はひとりの人間としてもチーム代表としても、全く別のタイプだ。マグヌッセンと新しいボスとの関係は、シュタイナー時代に経験したものとは異なり、マグヌッセンはもはやハースチームの“家具の一部”ではなくなったことがはっきりした。小松はマグヌッセンの才能を疑ったことはないものの、ニコ・ヒュルケンベルグがもたらすリザルトと技術的フィードバックの一貫性を高く評価し、マグヌッセンにはそれが欠けていると考えている。

 小松がシュタイナーの“遺産”をできるだけ多く置き換えたいと考えていたことも影響したかもしれない。7年間のコラボレーションの後にマグヌッセンを外すという決定は難しかったかもしれないが、おそらく必要な決断でもあったのだろう。

(第2回に続く)

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