【ワシントン時事】日米両政府は7日(日本時間8日)の首脳会談で、日本による米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大で合意した。日本にとって、安価なLNGを安定的に調達できれば電気・ガス代の抑制につながるだけに期待感がある。一方、トランプ米政権の狙いは対日貿易赤字の削減だ。量にとどまらず高値での輸入を迫られる懸念もくすぶる。
トランプ氏は会談後の共同記者会見で、「日本が近く記録的な量の米国のLNG輸入を始める」と表明。石破茂首相は「両国間でエネルギー安全保障の強化に向けて協力していくことを確認した」と合意の意義を強調した。
バイデン前米大統領の脱炭素政策を否定するトランプ氏は「(石油や天然ガスを)掘って掘って掘りまくれ」と号令をかけ、化石燃料増産でエネルギー価格を下げる方針に転換した。
日本の2024年のLNG輸入量は約6589万トン。米国はオーストラリア、マレーシアに次いで3番目に多く、輸入量は全体の1割を占めた。国内では「米国から安いエネルギーを安定的に輸入できるようになればメリットがある」(電気事業連合会の林欣吾会長)との期待がある。
ただ、米資源開発企業は収益性を考慮し、生産調整するとみられ、日本ガス協会の内田高史会長は「安いLNGが5年後、10年後も続くかは分からない」と指摘。開発費用がかさむアラスカ産は割高になる可能性が高く、「受け入れるのは難しい」とも語った。
トランプ氏は、日本を含め一律関税を導入する構えを見せつつ、2国間交渉を通じ貿易赤字の是正を迫る考え。LNG輸入拡大が対日赤字縮小にどの程度効果があるかについては、「多少プラスに作用しても、赤字解消に貢献する規模はない」(経済官庁幹部)との見方もある。