1か月前に父親を亡くしたAさんには、世界中を放浪している兄・Bさんがいます。いつもふらっと旅に出ては連絡先も伝えずにしばらく帰ってきません。長い時には1年以上も海外にいて連絡すらしてこない時もありました。
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父親の遺品整理をしていると、そのなかに古いアルバムがありました。アルバムの中には父と一緒に写る幼い頃のBさんの姿があり、Aさんも想い出に浸ります。「今、どこで何をしているのだろうか」と、父親の葬儀にも現れなかったBさんに想いを馳せるのでした。
現実に目を向けると、父親の相続手続きを進めなければなりません。ただ相続人であるBさんに連絡が取れないと話を進められないのです。AさんはBさんから教えられていたメールに連絡するものの、返事は返ってきません。
途方に暮れたAさんは、Bさんの旧友たちにも連絡を取ってみましたが、誰もBさんの居場所を知りませんでした。SNSでも検索しましたがアカウントすら見つかりません。
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このままBさんと連絡が取れなければ、父親の遺産はどうなってしまうのでしょうか。北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞きました。
ー1年以上連絡が取れない相続人がいる場合、相続手続きはどうなりますか
相続による遺産分割協議をおこなう際には、相続権を持つ相続人が協議をおこない、遺産分割内容に関して同意(=遺産分割協議の成立)が必要です。Bさんのように連絡が取れない相続人がいる場合は、同意が得られないため、遺産分割協議を進めることができません。
Bさんのように行方が分からない相続人がいる場合には、家庭裁判所に申し立てをおこない、不在者財産管理人の選任を求めます。事案によっては失踪を申立て、失踪宣告を得ることも考えられます。
ー不在者財産管理人とはどういうものですか
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不在者財産管理人は、従来の住所又は居所を去って容易に帰ってくる見込みのない者(=不在者)の財産が放置されて散逸することによって受ける不在者の損失を防止し、不在者の財産を保存することを主な職務とします。管理人候補者には親族、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、その他会社関係者などが挙げられます。
家庭裁判所に選任された不在者財産管理人は、不在者の財産管理の要請から、不在者である相続人に代わり分割協議に参加できます。ただし、不在者財産管理人の管理権限は保存行為や利用・改良行為の範囲に限られるため、遺産分割協議の成立にあたってはあらかじめ家庭裁判所から「権限外行為許可」を得る必要があります。
遺産分割を主目的とする不在者財産管理人の選任を求める場合には、不在者が不在となった経緯や今後の帰来可能性を立証するなどに加えて、その者の相続関係を立証するための資料提出が必要です。
個々の事案により事情が異なることから詳細は専門家に相談されるといいでしょう。
◆松尾武将(まつお・たけまさ)/行政書士 長崎県諫早市出身。大阪府茨木市にて開業。前職の信託銀行員時代に1,000件以上の遺言・相続手続きを担当し、3,000件以上の相談に携わる。2022年に北摂パートナーズ事務所を開所し、相続手続き、遺言支援、ペットの相続問題に携わるとともに、同じ道を目指す行政書士の指導にも尽力している。
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(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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