物価高対策、最大の争点=「減税か給付」で与野党対立―「深掘り・日本の課題」【25参院選】

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2025年07月06日 07:02  時事通信社

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アイリスオーヤマ傘下のホームセンター「ダイシン幸町店」で備蓄米の店頭販売を前に、整理券を求めて並ぶ人たち=5月31日、仙台市宮城野区
 20日投開票の参院選は、長引く物価高に苦しむ家計への支援策が最大の争点だ。与党の自民、公明両党が国民1人当たり2万円の給付による負担軽減を打ち出した。一方、野党は軒並み消費税減税を訴え、対立軸が明確になった。ただ、いずれも目先の「痛み」に対応するための「バラマキ」につながりかねず、将来の財政や社会保障の基盤を大きく損なう恐れがある。

 自公は選挙公約で、国民1人当たり2万円を給付し、子どもと住民税非課税世帯の大人には追加で2万円を上乗せすると明記した。連合が3日発表した2025年春闘の最終集計結果は、平均賃上げ率が5.25%と34年ぶりの高水準を記録。しかし、物価変動の影響を除いた実質賃金は今年に入り毎月マイナスに沈んでいる。石破茂首相(自民党総裁)は「物価上昇に賃金上昇が追い付いていない」として、マイナンバーカードを活用した迅速な給付を進める方針を示した。

 これに対し、立憲民主党と日本維新の会は、期間限定で食料品の消費税を0%とすることを掲げた。国民民主党は、「実質賃金が持続的にプラスになるまで」との条件付きで、消費税の一律5%への引き下げを訴える。共産党は緊急に5%へ引き下げた後、廃止を目指す。れいわ新選組も即時廃止を主張する。

 消費税は年金、医療、介護などの社会保障の財源に充当すると消費税法で規定されている。24年度の税収は約25兆円に上り、基幹3税(法人税、所得税、消費税)のうち最大の安定財源だ。立民と維新の引き下げ案が実施されれば、税収減は年5兆円、国民民主の案は年15兆円に上る。石破氏は「社会保障の大切な財源を本当に今使っていいのか」と批判する。

 減税の財源について、立民は、基金の取り崩しや外国為替資金特別会計の剰余金などで捻出すると説明。野田佳彦代表は「赤字国債を発行しない」と強調するが、与党側は財源が不透明と批判のボルテージを上げている。

 一方、自公は給付に必要な3兆円台半ばの財源に、25年度税収の上振れなどを充当する考えだ。赤字国債の追加発行は回避するので、石破氏は「財政を悪化させない。将来世代に負担を負わせない」と強調する。

 もっとも債務残高対GDP(国内総生産)比が200%超と、日本が主要国で最悪の財政状況にある中で、「税収の上振れは本来、国債発行の圧縮に充てるべきだ」(エコノミスト)との指摘もある。各党のバラマキ合戦への警戒から、債券市場では30年債など超長期国債の金利が一時急上昇し、財政の持続可能性に警鐘を鳴らした。

 与野党は短期的な「減税か給付」の論戦に終始するが、本来は物価上昇を上回る賃上げを持続的に実現するために、労働生産性を引き上げる成長戦略が欠かせない。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「与野党は物価高対策ではなく、日本経済の活力を取り戻す成長戦略の優劣を競ってほしい」と苦言を呈している。

 ◇消費減税、やるなら恒久的に

 永浜利広・第一生命経済研究所首席エコノミストの話 給付は早く実施できるのが利点だが、貯蓄に回り経済効果が乏しい。消費しないと恩恵がない消費税減税は時間はかかるが、費用対効果は高い。財政が悪化しない範囲で行う必要がある。

 食料品の消費税率0%の場合、自然増収を勘案すると3兆円程度の税収減だが、0.5%程度の物価上昇で債務残高対GDP比の悪化はカバーできる。格差是正や再分配の機能を高める社会保障政策に近く、やるなら恒久的にするべきだ。



 ◇税収上振れ、絞って使うべきだ

 藤本一輝・日本総合研究所研究員の話 給付も減税も家計支援の対象が絞れていない印象だ。防衛費増額やインフレに応じた制度の見直しなど、歳出の拡大圧力は強まっている。税収の上振れは本当に必要なところに絞って使うべきだ。消費税は一度(税率を)下げると簡単には戻せない。

 支援ばかり注目され、財政規律や成長戦略はろくに議論されていない。経済成長のために必要な支出は削るべきではないが、成長実現に何が必要かを議論する体制すら整っていないのは問題だ。 

このニュースに関するつぶやき

  • 外国人政策もだよね。さっさと自民党と財務省の傀儡政権から脱却するための政権選択選挙よね。
    • イイネ!9
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