ブラックサンダー頼みから脱却 第2の柱「ミルクマニア」、発売4カ月で600万本

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2026年05月18日 07:51  ITmedia ビジネスオンライン

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濃厚なミルク感を打ち出したバータイプのチョコレート菓子「ミルクマニア」。1個86円

 「ブラックサンダー」シリーズを展開する有楽製菓が、新ブランド「ミルクマニア」の育成に力を入れている。ミルクマニアは、濃厚なミルク感を打ち出した、バータイプのチョコレート菓子だ。希望小売価格は1個86円で、主要コンビニエンスストアを中心に展開している。


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 2025年6月のテスト販売が好調だったことを受け、2026年1月に通年販売を開始。初月の出荷本数は約300万本を記録し、4月20日時点で累計600万本を突破した。同社が第2の柱として注力する存在だ。


 ブラックサンダーという不動の人気商品を持つ企業が、なぜ今あえて新ブランド育成に挑むのか。ミルクマニアの企画・開発も統括する杉田晶洋氏(執行役員 マーケティング部 部長)と、商品企画を担当した北島あや氏(マーケティング部 コミュニケーション企画課 課長)に話を聞いた。


●「ブラックサンダーへの依存度が高い」 社内で長年課題に


 ブラックサンダーは、1994年発売のロングセラー商品だ。累計出荷本数は17億本を超える。ほろ苦いココアクッキーとプレーンビスケットをチョコレートでコーティングしたバータイプ菓子で、ザクザクとした食感や、希望小売価格44円という手ごろな価格を武器に、コンビニやスーパーなどで広く展開されている。


 抹茶やいちごなどのフレーバーに加え、ご当地商品や他メーカーとのコラボ商品も展開しており、シリーズとして幅広い世代に浸透している。


 一方で、社内には以前から「ブラックサンダーへの依存度が高い状況を変えなければならない」という課題感があった。


 「長年にわたりその課題を抱えており、過去にはブラックサンダーに続く商品開発に取り組み、小規模で販売したこともあります」と杉田氏は明かす。しかし、限られた生産キャパシティーの中ではブラックサンダーの安定供給を優先する必要があり、本格的なブランド育成には踏み切れなかった。


 その状況を変えたのが、2024年12月の新工場の稼働だ。これにより、バータイプ商品を製造する「個食ライン」の生産能力が従来の約2倍に拡大。既存商品の安定供給を確保した状態で、新ブランドの育成に本格的に着手できる環境が整った。


●新ブランドの発想はどこから?


 新ブランドの構想はどこから生まれたのか。さまざまなアイデアを検討したが、その中で「濃厚なミルク感」を打ち出す企画が形になっていったという。


 その理由について、北島氏は「最近、素材を押し出した専門店が増えてきていると思います。ミルクは幅広い層に響く素材です。甘さや優しさ、濃厚感、全ての軸で多くの人がイメージしやすいです」と話す。


 新ブランドは、あえてブラックサンダーの冠をつけない方針で考えた。ブラックサンダーの知名度を活用すれば、新商品の認知獲得はしやすい。だが、「手ごろな価格でジャンク感のある菓子」という既存イメージが、新たなブランドの価値形成を妨げてしまう可能性もある。そこで同社は既存ブランドの延長線上ではなく、別ブランドとして立ち上げる判断をした。


 ブラックサンダーが「ザクザク感」「コスパ感」「満足感」を前面に打ち出しているのに対し、ミルクマニアは「濃厚なミルク感」「ご褒美(ほうび)感」を軸にしている。主要購買層も、ブラックサンダーは男性比率が約6割で、40代前後を中心に支持されているのに対して、ミルクマニアは30代前後の女性向けに設計。実際、ミルクマニア購入者の約6割が女性であり、ターゲット層に届いている。


 パッケージも異なるデザインを採用した。北島氏は、ブラックサンダーが一部の女性から「夫や子どもが食べるもの」という印象を持たれているように感じていたという。


 「ブラックサンダーの黒いパッケージや勢いのある表現は魅力的ではあるものの、女性視点では少し距離を感じている方もいるのではと考えていました。ミルクマニアでは、女性が『自分のための商品』として手に取りやすいよう、ミルク感が伝わる上品で落ち着いたデザインを意識しました」(北島氏)


 商品の軸やパッケージデザインは順調に進んだが、生産現場に大きな課題が立ちはだかった。ブラックサンダーで培ってきた技術を活用しながらも、従来の開発ノウハウだけでは対応しきれない課題が多くあったのだ。


●ミルク感へのこだわり 製造現場で大きな課題に


 同社がミルクマニアで目指したのは、「ただ甘いだけではない、ひと口目から分かる圧倒的なミルク感」だった。その実現に向け、噛んだ瞬間にミルクの香りとコクが広がる粉末原料を、通常の約5倍まで増量した。


 しかし、この“ミルク感”へのこだわりは、製造現場では大きな課題にもなった。


 粉末原料は、チョコレートに混ぜ込むと均一になじみにくく、固まりにくい特徴がある。さらに配合量を増やしたことで、クッキーなどの具材をまとめるチョコレートの役割が弱まり、生地がうまく固まらなくなった。冷却後に規定サイズへカットする工程でも型崩れしやすくなり、安定した生産が難しかったという。


 それでも、粉末原料を投入するタイミングやチョコレートの温度、冷却工程や油脂の配合などを細かく調整。ブラックサンダーの新商品などでは試作回数が10回前後に収まるのに対し、ミルクマニアでは40回以上の試作を重ねた。その結果、ほろっと崩れながら、口の中でミルク感が広がる独特の食感が完成した。


 ミルク感を追求した商品設計を実現できた背景には、新工場に導入した「個食ライン」の存在が大きい。


 同ラインは、ブラックサンダーのようなバータイプ商品を高速かつ省人化して生産できる設備だ。形状や規格などの制約がある反面、高い生産効率を実現できる。その結果、製造コストを抑えながら、ミルク感を出す粉末原料にコストをかけることが可能になった。


 ブランドは切り分けつつ、製造面では既存設備を活用する。ミルクマニアの開発では、ブラックサンダーとの差別化と生産効率を両立させた。


 価格設定にも、その考え方は表れている。ブラックサンダーの約2倍となる86円という価格には、社内から「高いのではないか」という懸念の声もあった。しかし、原材料にコストをかけながらも100円未満に抑えることで、手に取りやすさと満足感の両立を狙った。


 実際、2025年6月のテスト発売時にはSNS上で味わいへの好意的な反応が多く寄せられ、通年販売を後押しする材料になった。


●カニバリゼーションを越え、合わせ買いの相乗効果も


 新ブランドを立ち上げる際、多くの企業が懸念するのが、既存商品とのカニバリゼーション(共食い)だ。特にコンビニの売り場は限られており、同じメーカーの商品が増えればその分、既存商品の棚が圧迫される可能性もある。


 有楽製菓も当初は、ブラックサンダーとの競合を懸念していた。しかし実際には、ミルクマニアの販売は好調に推移。小売店側からブランクサンダーの棚を減らされることもなく、むしろ両商品の合わせ買いといった相乗効果も見られているという。


 また、同社ではミルクマニアを他社と競合する商品とは捉えていない。


 杉田氏は「他社のチョコバーとは売り場が異なるケースもあり、完全な競合にはなっていないと見ています。価格と品質のバランスを考えても、むしろ新しいカテゴリーの商品になっているのではないかと考えています」と話す。


 消費者からは「ブラックサンダーより高いけれど買ってしまう」という声も寄せられているようだ。ブラックサンダーよりも上質だが、専門店のスイーツより手ごろ――ミルクマニアは本販売から半年足らずで、独自のポジションを築きつつある。


 新商品は話題性によって一時的に売れても、その後失速するケースが少なくない。しかし、ミルクマニアは2025年6月のテスト販売から本発売後にかけて販売数を伸ばしており、同社ではリピート購入による定着が進んでいると分析している。


 さらに興味深いのは、その販売規模だ。


 有楽製菓では、ブラックサンダーシリーズの売り上げを「ブラックサンダー」「白いブラックサンダー」といった個別商品ではなく、シリーズ全体で管理している。一方、ミルクマニアは単独ブランドでありながら、そうしたシリーズ商品群と比較できる規模にまで成長しているという。


 さらに3月末には、「ミルクマニアいちご」(希望小売価格86円)も発売した。レギュラー品と並行して開発を進めていた商品で、季節限定ではなく2商品を通年販売することで、売り場での存在感を高める狙いがある。いちごもレギュラー品とそん色ない初動を記録した。同社は今後もフレーバー展開を進めながら、ミルクマニアブランドを育成していく考えだ。


 強すぎる看板商品を持つ企業は、その成功ゆえに次の挑戦が難しくなることも多い。有楽製菓は、ミルクマニアで「ブランドを分け、製造を共有する」という選択を取り、新たな収益の柱として育てようとしている。



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  • お菓子は海外南国産の安いのでいいや。
    • イイネ!1
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