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壱番屋が運営する「カレーハウス CoCo壱番屋」(以下、ココイチ)の“客離れ”が進行中だ。2025年2月期上期(2024年8月)までの間、既存店客数は前年を上回っていたが、下期から前年比を下回っている。2025年2月期の前年比客数は通期で98.5%で、2026年同期は96.5%となった。2026年3〜4月は前年比98%台を推移している。
背景にあるのが2024年8月に実施した値上げだ。注文金額が1500〜2000円超えの客も多く、値上げ耐性が強いはずのココイチだが、度重なる値上げで消費者の限界を超えたとみられる。
●運営企業の「壱番屋」は増収続き
ココイチは自分でトッピングを選べるのが特徴のカレーチェーンだ。ポークカレー、ビーフカレーといったルーの種類や辛さ、ライスの量などを選択できる。トッピングも豊富で、客はハンバーグやソーセージなどの肉類、イカやエビなどの魚介類、なす、ほうれん草などの野菜類からトッピングを選べる。報道によると、客の約4割が2品以上のトッピングを注文するという。後述の通り、客単価は1000円台前半だ。
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ココイチの客離れが進んでいる一方、運営企業の壱番屋は好調続きだ。1978年に1号店を出店した後、順調に店舗数を拡大させ、1994年には300店舗を突破した。2004年には1000店舗を達成。2026年2月期末時点で国内約1200店舗、海外約200店舗を展開している。
全社売上高はコロナ禍で500億円から440億円台まで減少したものの、V字回復を遂げ、2026年2月期は655億円となった。この間に店舗数は横ばいで推移しており、1店舗当たりの売り上げ(FC主体なので店舗への卸売り)が伸びた構図だ。
近年の増収は外食産業全体の好調に加え、段階的に実施した値上げの影響が大きい。過去記事でも解説した通り、2024年2月期の客単価はコロナ禍以前と比較して115%を超えた。
客数は以前の9割程度にとどまる一方、客単価は前年比100%超えの状態が続いていた。トッピング数が多く単価が高い”太客”に支えられており、彼らは値上げへの抵抗も少なかったため、客離れは進まなかった。
●値上げの受け入れも限界か
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しかし冒頭の通り、直近の1年半は客離れが進行している。既存店客数は2024年9月から前年割れが続いており、2025年11月を除いて前年比90%台で推移している。壱番屋が公表している「1店舗当たりの月間来客数」は、2022年2月期の4995人から2024年2月期は5362人まで伸びたものの、2026年2月期は5131人に減少。このペースが続けば、今期は2021年度の水準を下回る可能性が高い。
客数の減少は、2024年8月に実施した値上げの影響が大きいと考えられる。同社は2022年12月にベースカレーを平均7.4%(44円)、トッピングを平均5.4%(5〜20円)引き上げた。さらに2024年8月にはベースカレーを10.5%(43〜76円)、トッピングを13.5%(5〜50円)値上げした。
例えば「ポークカレー」(300g)に「チキンカツ」と「チーズ」をトッピングする場合、1回目の値上げで合計金額は1075円から1159円へ、2回目では1200円を超えた。決算資料によると、2回目の値上げにより客単価は1161円から1257円に膨らんだ。
実際、この頃からSNSなどで「高い」といった否定的な意見が目立ち始めた。1200円の大台に乗ったことで割高感が認識されるようになり、“太客”の来店頻度が減少した、もしくは低価格客の離脱が進んだと考えられる。
●牛丼各社も競合に
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他業態が展開しているカレーも、ココイチの客離れを進行させた可能性がある。牛丼業界では近年、牛丼の値上げを進める中で、差別化のためにカレーを強化する動きが出ている。
すき家は2024年にカレーを甘口に変更し、別添えの「すき家の特製辛口ソース」で客が好みに合わせて辛さを調節できるようにした。松屋フーズも松屋業態でカレーを扱うほか、「マイカリー食堂」との複合店を出店し、カレーを提供する店舗を増やしている。
牛丼各社は牛肉入りのカレーを800円前後で提供しているのに対し、ココイチは具無しのビーフカレーを同程度の価格で販売しており、後者の方が割高だ。また、トッピングが2種類ほど入ったカレーでも牛丼各社は1000〜1200円未満に価格を抑えており、ボリュームのある商品でもココイチの割高感が目立つ。
同様にとんかつチェーンの「かつや」もカレーを提供しているが、カツカレーは松竹梅それぞれ869円、1089円、1199円である。各社が意識しているかは不明だが、カレーの価格をココイチの客単価より安い1200円未満に設定している。
●値上げも値下げもできないココイチ
加盟店への卸売価格を下げ、商品価格を値下げして集客を図りたいところだが、ココイチは身動きが取りづらい状況にある。
近年は増収続きでも収益は伸びておらず、営業利益率は2024年2月期の8.6%から2026年2月期には7.2%に減少した。決算資料によると2026年2月期は物流費もかさんだという。一方、同じメニューでさらに値上げすれば客離れが加速する恐れがある。
筆者の所感だが、ココイチのカレーはトッピングや辛さの自由度が強みである一方、ルー自体のうま味や特徴は弱いように思える。松屋が期間限定のバターカレーを単品600〜800円台で提供する現在、具無しで同価格帯のココイチは割高である。
今後も客離れが進行する場合、ルーを改良・追加するなど、客が価格を受け入れられる施策が求められそうだ。壱番屋の親会社であるハウス食品グループ本社の開発力が問われる状況にある。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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ココイチ「1200円」の壁で苦戦?(写真:ITmedia ビジネスオンライン)188

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