「正気じゃない企画ばかり」松村邦洋が赤裸々に明かす『電波少年』時代の“とんでもエピソード”

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2023年11月02日 09:00  週刊女性PRIME

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松村邦洋と澤井直人(撮影:山田智絵)

テレビ、YouTube、CM業界などの放送作家として、数々のコンテンツを作り出してきた澤井直人(33)。今、ほかの誰よりも「人間」に興味がある平成生まれの彼が、「話を聞きたい!」と思う有名人と対談する、好奇心と勢いだらけのインタビュー企画『令和にんげん対談』! 

 第11回は、お笑いタレントの松村邦洋が登場! ビートたけしや掛布雅之をはじめとしたモノマネで注目を集め、『進め!電波少年』や『探偵ナイトスクープ』に出演。現在は『アッコにおまかせ!』や、多数のラジオ番組でレギュラーを務めるなど精力的に活動している。

 そんな松村は、今年で芸能生活35周年を迎えた。学生時代に片岡鶴太郎にスカウトされたデビュー当時の話から、電波少年の“アポなしロケ”をはじめ、かつての芸能界の逸話、そして35周年を迎えたいま思うことまで、大御所ベテラン芸人に芸能生活を振り返って頂きました!

澤井直人(以下、澤井)松村さんには、僕が作家を担当した『ものまね師弟バトル MANE-1』に審査員で出演頂いた事があり、お会いするのはそれ以来だと思います。その際はありがとうございました。

松村邦洋(以下、松村):そうでしたね! ありがとうございました。

「その人に似せたい」ではなく「なりたい」だった

澤井:最近だと、松村さんはご自身のYouTubeチャンネル(『松村邦洋のタメにならないチャンネル』)で、歴代の優勝監督になりすまして、六甲おろしを披露されていましたね。僕も野球ファンなので面白く観させて頂きました。

松村:あの動画は再生数が多かったですね。1985年の吉田義男監督、2003年の星野仙一監督、そして今年の岡田彰布監督……。僕は出身が山口なんですけど、親父が熱烈な阪神ファンでね。自然と阪神を応援するようになってて。

澤井:僕は滋賀のおごと温泉という街で育ちまして。野球をやっていたので、よく近江高校から中日ドラゴンズに行った小熊(凌祐)とも試合をしました。

松村:そうでしたか。僕も高校時代は軟式野球部で、ちょうど高校3年生の時に、阪神が日本一になったんですよ。今年はそれ以来の日本一を目指して欲しいですね!

澤井:また松村さんの六甲おろしが聞けそうですね(笑)。阪神の歴代監督もそうですが、松村さんはモノマネのレパートリーが豊富です。政治家や力士などもマネされている。なにかルーツはあったんですか?

松村芸能人とか野球選手とかジャンルで括っていたわけではなくて、小さい頃からテレビで面白いと思った人をマネするのが好きだったんですよ。純粋な好奇心です。

 小学生の時は、大河ドラマ『花神』に出演していた中村梅之助さんとか、お笑いグループの『ザ・ハンダース』とか。中学生では、『金八先生』の生徒役・加藤優さんとか、欽ちゃんバンドの小西博之さんとか。喋り方もそうなんですけど、身振りとか踊りとかもマネしていたので、純粋に気になっていたんでしょうね。

澤井:レパートリーの豊富さは、純粋な興味ありきだったんですね!

松村:ちなみに野球のジャンルだと、最初は甲子園の解説者のマネをしていました(笑)。当時、池西増夫さんという解説者がいましてね。鼻声のような高い声が耳に残るんですよ。なんというか演歌のようなコブシが軽く効いていて面白かったですね。

澤井:ものまね芸人さんって、マネする人のことをとことん好きになるっていう話はよく聞きますよね。松村さんにとって、モノマネは天職だったんですね!

松村:それは大きいですよね。やっぱり好きっていうのは、麻酔がかかっているようなものですから。僕もどちかというと、その人に似せたいというよりも「その人自身になりたい」という欲が強かった。

松村高校生の頃は、軟式野球部だったので、めちゃくちゃ声を出すんですよ。ノックの時に「ばっちこ〜い」とか「サードこ〜い」とか。サイレンみたいにコブシを聴かせて声出すじゃないですか。それがだんだん楽しくなってきちゃって、声がよく出るようなったんですよね。

澤井:わかります(笑)。モノマネのうまさのルーツは高校野球だったんですね。

松村:そうそう(笑)。高校生の時はね、世界史の先生のモノマネもよくやってましたよ。声がでかいのに、イントネーションがおかしくてね。そしたら先生も機嫌が良くなって、「お前代わりに授業しろ」って言われて、それでみんなの前で披露したらウケるもんだから気持ちよくなってね(笑)

 しかも高2の時に留年しているんですよ。さすがにクラスメイトも1年間同じネタをやってると飽きられるんですけど、留年したらまだ僕の芸を観てない後輩が入ってくる。そうするとまたウケるわけです。

 要は、お客さんの入れ替えみたいな(笑)。劇場でいえば、昼の部と夜の部のダブルヘッダーで両方とも調子良い感覚です(笑)。いま思えば、その頃から芸人になりたい気持ちが強くなった気がしますね。

芸能界入りのきっかけは片岡鶴太郎!?

澤井:昼の部と夜の部の入れ替え(笑)。めちゃくちゃ面白い表現ですね!

松村:そうしたら学校でも、気にかけてくれる先生がちらほらいてね。物理の先生がビデオ撮ってくれていたり、国語の先生は「もう芸能界に行っちゃえよ」という雰囲気で。もちろん「ふざけたこと言ってんじゃない」と注意する先生もいましたけど、割と当時にしては応援体制だったんですよ。

澤井:学校の人気者ですもんね。じゃあそこから太田プロを目指すわけですか?

松村:当時、僕の動画を撮ってくれたビデオを物理の先生が吉本に送ってくれたことがあるんですよ。その時はビートたけしさんのモノマネでしたが、僕が高3の時にフライデー襲撃事件がありましてね。なんだか、たけしさんのモノマネやりづらいなあと。

 まあそれで結局、大学に進学するわけです。でも芸能界には進もうと思っていたので、当時からフジテレビ系列の『テレビ西日本』でケーブルさばきのバイトをしながら、素人のモノマネ番組のオーディションに出ていたんですよ。そのとき『ツノだせヤリだせ―たけし軍団物語』を読んでいたら、井手らっきょさんも大学出てから芸人になって、こういうパターンもアリだなと思っていたんです。

 その一環で、『発表!日本ものまね大賞』に出演した時、敢闘賞を取ったんですね。そのあと仕事でたまたま片岡鶴太郎さんにお会いしたら、ものまね大賞の時に披露してた松村達雄さんのマネが良かったよと褒めて頂いて、東京で話を聞いてもらう機会があったんです。

 当時、フジテレビのスタッフからは「期待するな、観光のつもりでこい」と言われながらも、『ひょうきん族』の撮影スタジオにお邪魔したんです。そこで思いきってたけしさんのモノマネを披露したりしてね(笑)。なんだかんだで鶴太郎さんが気にかけてくれて、太田プロに入ることになりました。

澤井鶴太郎さんからのスカウト! すごいシンデレラストーリーですね。

松村:鶴太郎さんはスカウトするのが非常に多いんですよ。山田邦子さんとか柳原可奈子ちゃんとか、最近ではレッツゴーよしまさもそうでしょ。「いいのがいるぞ」となれば、すぐに声をかけてくれる。

 時代の流れもあったんでしょうね。当時フジテレビは黄金時代で、『なぜフジテレビだけが伸びたのか』っていう本が売れたぐらい。モノマネ番組も色々ありましたから。テレビ東京で放送されていた愛川欽也さんの『全日本そっくり大賞』や、フジテレビの『オールナイトフジ』もその頃に出演させてもらいました。カメラの前であがっちゃって全然駄目な時もありましたけど、モノマネ番組のオーディションは当時多かったんですよ。

澤井:デビューしたての頃から、看板番組に出演するなんて、本当にすごい話です。その後は順調だったんですか?

松村:いや〜、どうなんでしょうね。ちょうどデビューから数年した頃に、電波少年が始まるんですよ。もうあの時は本当にしんどかった……(苦笑)

澤井:電波少年といえば、アポなしロケで有名ですよね(笑)

松村アポなしどころか、当時は企画がめちゃくちゃだった。会議でありもしない企画ばかり出てきて盛り上がってるんですけど、正気じゃ実現できないネタばっかなんですよ。村山富市の長い眉毛を切ってあげようとか、ユン・ピョウ(香港のアクション俳優)は本当に強いのか戦ってみようとか、榊原郁恵さんの次男が生まれた時に母乳を飲ませてもらおうとか……(苦笑)

過酷過ぎた企画で「俺、死んだわ」

澤井:とんでもないですね(笑)。電波少年は、小山薫堂さん、海老克哉さん、鮫肌文殊さんなどなど、僕からしたら大先輩の作家さんがたくさんいらっしゃったイメージです。

松村:そうでしたね。作家さんはいいのですが、現場のディレクター同士は結構バチバチしてましたね。みんな「良い映像を撮ってやろう」と競っているし、左右のインカムで指示が違う時はしんどかったですね。片耳ずつから「お前はどっちのADにつくんだ!」「なんで俺の言うこと聞かねえんだバカ!」とか聞こえてきてね。

澤井:コントみたい……笑

松村だからADさんも辞めていく人が多かったですね。「ジュース買ってきます」と言ってそのまま失踪したり、「ちょっとアポ取ってきます」と言って帰ってこなかったり。辞めたディレクターを集めたら、オールスター感謝祭ができるくらい(苦笑)。

 ちなみにユン・ピョウに襲いかかった時は「その映像は番組で使えない」って、プロデューサーから指示が出てたんですよ。でもその後、演出(土屋敏男さん)が、勝手に映像を放送して……。電波のスタッフさんたちは、本当に野武士のような人でしたよ。

澤井:今の時代だったらありえない逸話じゃないですか!

松村:いやいや当時でもありえないですよ(笑)。それぐらい現場は、おもしろい映像を撮ろうと殺気立ってるんで、俺なんかもう怒鳴られてばっかでしたね。特にインターナショナル(海外版スペシャル)の時は、何回も死ぬかと思いましたよ。

澤井:ちなみにどんな窮地に……?

松村過酷すぎて元の企画を覚えていないんですけど、砂漠で遭難した時は死ぬかと思いましたね。脱水症状で唇が真っ白のなか、飛行機やヘリコプターが僕の上空を通過したんですよ。後から振り返ってみれば、状況を確認するためだったらしいのですが、その時は置いてかれたと思って「俺、死んだわ」と……。

 最近だと、『VIVANT』で堺雅人さんが砂漠を歩いているシーンがあったんですけど、あんなもんじゃない(笑)。たまたま電波のディレクターと話す機会があったのですが、彼も「あの時は口が真っ白になって、身体のアチコチが砂まみれで、砂漠なんてスーツじゃ歩けねえしリアルじゃねえよな」って。「いやそこはドラマですから」って返しましたけど(笑)。

澤井当時と今を比較すると、番組の規模からコンプライアンスまで全然違いますよね。それこそ電波少年のように、今に比べて放送作家も多くいたし、作家と演者との付き合いも深かった気がします。僕が作家をやっているもので気になるのですが、作家さんに求めることはありますか?

松村:楽にさせてくれる作家さんは嬉しいですよね。タレントっていつも不安だし緊張しているから、いるだけでほっとするような空気感を出してくれるというかね。そんなの百も承知だと思うんですけどね。

『サンクチュアリ』を見て貴闘力に直球質問

澤井:モノマネ番組だと、披露した後で芸人さんにアドバイスしたり、二人三脚でやっていくようなところもあります。そうした関係は、ゆくゆくは安心感につながっていくんですかね。

松村:例えば、30年近くラジオ(『高田文夫のビバリー昼ズ』)をやられている高田文夫さんとは、デビュー当時からお世話になっています。高田さんは若手からベテランまでコミュニケーションをとりますし、映画や演芸番組もくまなくチェックしているような方で、造詣も深くて頭の回転も早い。安心できるんですよね。

 高田さんは「こういう世界は、高さも大事だけど、長さも大事なんだよ」ってよく言うんですよ。売れたり有名になるのも大切だけど、コツコツ続けることも大事だっていうことですね。「高さにこだわって萎縮したり、病気になったりする人も多いから、継続することが一番大事だ」と仰るんですね。そういう格言をくださる方は頼れますよね。

澤井:電波少年時代のエピソードを聴いているからこそ、その言葉には説得力がありますね(笑)

松村:ほんとですね(笑)。僕ももう56歳ですから。

澤井:今は、この人をマネしたいというのはあるんですか?

松村最近はテレビやサブスクで話題の番組を観てアンテナを張るようにしてますね。『ラストマン』の上川隆也さんとか、Netflixだと『サンクチュアリ』を観て、貴闘力に「相撲部屋はああいう雰囲気なのか?」とメールをしたら、「俺ならもっと激しいよ」って返ってきたりとか(笑)。若い人たちが、僕のモノマネのレパートリーがわからなくなったりとかもありますから、もう1回学生の頃のような感覚でいたいなと。

澤井:じゃあ、結構テレビとかサブスクも観られたり?

松村:そうですね。割と情報番組とかワイドショーが多いかもしれませんね。午前中は『サンジャポ』とか『ワイドナショー』とか。あとプロ野球のニュースとかですね。自分がバラエティーばかり出ていると、報道系とかそっちの方が観たくなりますね。

澤井:わかります(笑)。僕も『情熱大陸』などのドキュメンタリーとかノンフィクションが多いですね。あとは開高健さんとか、向田邦子さんとか、昭和の作家の小説ばかり読んでます。

松村:太田光さんみたいですね。あとはもう健康志向で、いまはほぼ毎日ウォーキングとか散歩ですね。近所の1周1キロぐらいの公園を2〜3周したり、中野区や杉並区あたりを歩いてロケ地巡りとか神社にお参りに行ったりね。

 毎日ウォーキングしていると、公園でラジオ体操なんかをやっているメンバーは変わらないことに気づきます。芸能界だとメンバーの入れ替わりが激しいですが、ラジオ体操しているおばあちゃんは10年間も顔ぶれが変わっていないですから。自分も息が長く活動していけたらと思いますね。

澤井:僕も放送作家を始めてから20キロ近く太ってしまいましたから、ほどほどに健康にも気をつけていきたいですね(苦笑)。今日はありがとうございました!

松村:ありがとうございました!

 

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