トコジラミに「バルサン」は効かない、は本当なのか? SNSに流れる話の真偽、メーカーに聞いた

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2024年03月20日 16:31  ITmedia NEWS

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「ラクラクバルサン水」と「バルサンまちぶせスプレー」の併用がおすすめ

 3月10日、X(旧Twitter)に都内を走る電車のシートでトコジラミを見つけたという投稿があり、大手メディアも取り上げて騒ぎになった。刺されると激しい痒みが1週間も続き、駆除も難しいといわれるトコジラミだけに、世間の注目度も高い。


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 日本では戦後の衛生環境の改善でトコジラミの被害は激減していたが、2010年ごろから再び増加傾向にあるという。SNSにもトコジラミの目撃報告をはじめ、駆除方法、体験談などがあふれているが、その中で「トコジラミはバルサンを炊いても奥に逃げるだけで倒せない」「普通のバルサンを炊くとトコジラミは駆除できず生息場所を広げてプロの業者も対応が難しくなる」といった内容の投稿を見つけた。


 バルサンといえば、1952年の登場以来、メーカーは変わりつつも70年以上にわたって使われてきた、くん煙剤の代表格だ。「隅々まで効く」のテレビCMを覚えている人も多いだろう(注:当時は中外製薬)。筆者も万が一の時には頼ろうと思っていたので、現在バルサンを製造/販売しているレック(東京都中央区)に、事の真偽と、そうした話が出てきた背景について聞いた。


●刺されると激しい痒み


──最初にトコジラミとはどういった害虫なのか教えてください


レック:体長は5〜8mmほどで、とても薄い体型をしており、いずれの成育ステージ(幼虫〜成虫)、また雌雄で人や動物の血液だけエサとします(蚊の場合は成虫の雌のみが吸血します)。感染症を媒介するという報告はありませんが、刺されると激しい痒みを引き起こす害虫です。


 吸血行動は、主に消灯後に生息場所から這い出し、行います。自宅に持ち込んでしまうと、駆除しない限り、常に吸血されるリスクがあります。


 現在、日本でトコジラミが広がっているとされる理由は複数ありますが、例えば外国旅行者の荷物を通じて国内に持込まれ、公共空間や宿泊施設を通じて家庭内に持ち込まれることが多いといわれています。


──SNS上で「トコジラミはバルサンを炊くと奥に逃げるだけで倒せない」「普通のバルサンを炊くとトコジラミは駆除できず生息場所を広げてプロの業者も対応が難しくなる」といった投稿をみました。こういった話は事実なのでしょうか


レック:薬剤が十分に暴露されるような環境に潜むトコジラミに対しては駆除効果があります。しかし、くん煙剤の煙が到達しにくい場所に生息しているトコジラミ──トコジラミの体は非常に薄いため、畳と畳の間や、壁紙の継ぎ目の裏側、衣服の縁などに潜んでいることが多いです──に対しては、致死量の薬剤が到達する前に隙間の奥へ逃げ込み、駆除しにくいことが想定されます。


レック:「バルサンを使用することで生息場所を広げる」については、もし可能性があるとすれば、バルサンを処理することで、潜伏場所から這い出してくる個体を観察された可能性が考えられます。このような個体に対しては、後で詳しく話しますが「バルサンまちぶせスプレー」との併用により駆除効果が高まると考えています。


 また、「バルサンの使用によりプロの業者も対応が難しくなる」については、プロの駆除業者の方がトコジラミの潜伏場所を探すのに血糞(トコジラミが吸血後に排せつする赤黒い糞)を目印にしますので、血糞のあるところからくん煙剤によって這い出した個体がいたこと(=血糞以外の場所にもトコジラミがいる)で、そのような投稿につながったのかもしれません。


 いずれにしても、這い出した個体はより駆除しやすくなりますし、プロが駆除対象とするのは血糞のあるところだけではないため、そのような事実はないと考えています。


●「スーパートコジラミ」や卵には効く?


──「トコジラミの“卵”には殺虫剤はきかず、生き延びてまた増える」という話もありますが、これは事実でしょうか。家庭ではどのような対策が考えられますか?


レック:トコジラミ防除の専門家でも卵には効かないと言われることがあり、弊社でもその可能性はあると考えています。ただし、ふ化直後の幼虫はむしろ薬剤が効きやすいと考えており、トコジラミの潜伏場所にまちぶせ型のスプレー(バルサンまちぶせスプレー)の処理が有効です。この薬剤は効果が持続しますので、薬剤をスプレーしておけば、孵化した幼虫が薬剤に触れて駆除効果が期待できます。


──昨今は薬剤に耐性を持つ「スーパートコジラミ」が出てきているという話もあります。現行商品で駆除できますか?


レック:スーパートコジラミは、ピレスロイド系の殺虫成分(例えばペルメトリン、フェノトリンなど)に耐性を持ったトコジラミになります。ですので、対策としてはピレスロイド系以外の成分を使用することが基本となります。


 ピレスロイド系以外の成分(プロポクスル、メトキサジアゾンなど)を配合した殺虫剤であれば、スーパートコジラミに対しても駆除効果が期待できます。「バルサンまちぶせスプレー」(有効成分プロポクスル)だけを使って全く被害がなくなったという事例もあります。


 繰り返しになりますが、トコジラミは駆除するのがとても難しい害虫です。例えば、室内の潜伏場所の他、持ち込まれた荷物の中に生存個体がいる場合もあります。これさえやっておけば大丈夫、という考え方は、残念ながらできません。


──これまでの質問を踏まえ、正しいバルサンの選び方、使い方を教えてください


レック:弊社製品ですと、非ピレスロイド剤が配合されている「バルサンまちぶせスプレー」(有効成分プロポクスル)と「くん煙剤」──例えば「ラクラクバルサン水」や「バルサンプロEX 霧タイプ」(有効成分はメトキサジアゾン、ピレスロイド)を選択して頂き、併用することをお勧めします。


 トコジラミ被害が疑われる場合は、部屋をできるだけ整理した上で、人が長時間居続ける場所の近辺(例えばベットなどの寝具周り、ソファ周り、椅子など)や潜伏場所になりそうなすき間(畳と畳の隙間、壁紙の継ぎ目、カーテンの折り目、カーペットの下、家具と壁の間、壁がけ時計や額縁の裏など)、潜伏している場所(血糞が認められる)などに重点的に薬剤を散布して頂いた後、くん煙剤で部屋中を処理して頂くことが効果的かと思います。


──家庭用の商品だけで対応できない(駆除業者を頼んだ方が良い)場面というのはありますか?


レック:トコジラミ対策が正確にできてない(殺虫剤を使用しても毎晩、複数カ所を刺される)、または大量に発生していると推定される状況(血糞などが壁紙の隅など目につく場所に複数認められる)や、トコジラミの生息場所が全く解らない場合は、ペストコントロール業者(有害な生物の活動を、害にならないレベルまで制御する業者)に依頼して、生活空間全体を徹底的に駆除していただく方がよいと思います。


このニュースに関するつぶやき

  • トコジラミって何?と思ったら南京虫じゃないか。随分と古風な害虫が21世紀になって復活したもんだ。
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