内燃機関vsフルBEVの直接対決は互角の展開。“絶対王者”の対抗馬は24歳のクララか/WorldRX開幕戦

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2024年07月10日 13:00  AUTOSPORT web

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異なるパワーパックを搭載するモデルがその57年の歴史で初めて、世界チャンピオンの栄誉をかけて直接対決を繰り広げる
 スウェーデンが誇るラリークロス伝説の地、ホーリエスにて7月6〜7日に迎えた2024年WorldRX世界ラリークロス選手権開幕ラウンド『マジック・ウイークエンド』の週末は、今季より導入された“バトル・オブ・テクノロジーズ”の構想に基づき、新たに持続可能燃料採用の内燃機関(ICE)搭載モデルを製作した“絶対王者”ヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ポロKMS 601 RX)が連勝発進を決める結果に。

 しかし初日予選では、引き続き電動最高峰のRX1eモデルで出場する24歳のクララ・アンダーソン(CEディーラー・チーム/PWR RX1e)が意地を見せ、予選ヒート連勝からファイナルで2位に喰い込むなどキャリアハイの活躍を演じている。

 グラベルとターマックが混合されたデュアルサーフェスのトラック競技となるラリークロスにて、その57年の歴史で初めて、異なるパワーパックを搭載するモデルが世界チャンピオンの栄誉をかけて直接対決を繰り広げる。

 また今季より北米発のフージャー・レーシングタイヤが選手権の独占タイヤサプライヤーに就任し、フォーマット改訂によりドライバーはすべてのヒートで選手権ポイントを争う形態とされるなど、タイムではなくトラックポジションを競う必要に迫られる。

 電動最高峰のRX1eが制定されてからの過去2年間、同クラス連覇を達成しているクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)は、エースのクリストファーソンと僚友オーレ・クリスチャン・ベイビーのために、サステナブルフューエルによるICE搭載車『フォルクスワーゲン・ポロKMS 601 RX』を2台新造。新たに提携する技術企業集団の名を冠しKMS・ホース・パワートレインとしてエントリーする。

 一方、昨季までのタイトルウイニングカーである電動モデルの『フォルクスワーゲンRX1e』は、ポルシェ・カレラカップ・スカンジナビア経験者のグスタフ・ベリストロームと、サポートカテゴリーに位置するEuroRX1で優勝経験を持つソンドレ・エヴジェンに託す4台体制とした。

 そんな盟主KMSの牙城を突き崩すべく、シリーズでは長年プジョーを走らせるハンセンWorldRXチームは、引き続き100パーセント電動モデル『プジョー208 RX1e』でケネス・ハンセン代表の子息であるティミー&ケビン兄弟を起用。同じくSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の強豪PWRレーシングが運営するCEディーラーチーム・バイ・ボルボ・コンストラクション・イクイップメントからは、ともに3年目のペアとなるニクラス・グロンホルムとクララ・アンダーソンが参戦し、引き続きオリジナル車両『PWR RX1e』のステアリングを握る。

 迎えた開幕戦のレースウイーク。ノルウェー国境にほど近いスウェーデン・ヴェルムランド地方の森の奥深くに位置するホーリエス・モータースタディオンでは、新型車両の習熟と競技バランスの見極めを狙い、7月1日と翌2日に集中テストが実施された。

 最終的に初日、2日目ともに新型車両のクリストファーソンが最速タイムを計時したものの、最初のセッションとなる7時間半の走行の後でも、合計339周を走行したランキング上位9人のドライバーのタイム差は1秒未満と、電気自動車RX1eと持続可能な燃料を使用する内燃機関RX1は、ほぼ互角の勝負になることが予想された。

■日曜の第2戦はクリストファーソンが他を圧倒

 新時代幕開けとなる6日土曜の第1戦では、予選ヒートで先行したグロンホルムが最終ラップで電気系統の問題に見舞われ失速。これで辛くも勝利を挙げた“絶対王者”に対し、他方のピラミッドではクララが快走を見せ、中間リザルトの折り返しでクリストファーソンと同率首位に立つ。

 セミファイナルで2019年の世界チャンピオンであるティミー・ハンセンを撃破し、王者とともにヒート2勝を飾って重要な決勝で初のポールポジションを獲得したクララは、迎えたファイナルで通算55勝と6回の世界タイトルを獲得するチャンピオンに挑んだが、スタートラインでわずかに先行され惜敗の2位に。それでも自身のWorldRX最高位に手応えを得る緒戦となった。

「私たちが成し遂げたことをとても誇りに思う。チームは冬の間、素晴らしいパッケージをまとめるために信じられないほど懸命に働き、私はFPから自信を感じていた」と2年前の世界選手権デビュー以降、着実にステップを重ねてきたクララ。

「決勝ではヨハン(・クリストファーソン)についていこうとしたけれど、彼がチャンピオンになったのには理由がある。今日は完全ではなかったけど、とにかくとてもうれしい」

 一方、決勝前のヒート2ではグロンホルムとの接触でスピンを喫し、内燃機関モデルの危うさを指摘していた絶対王者は、その新型を評して「クリーンエアでは抜群に速い。とても快適で、リズムも良く、最後はミスもなかった」と開幕勝利を飾ると、悪天候で水浸しの路面に転じた日曜第2戦では早くも“無双状態”に突入。

 午前のヒートで後続に10秒近い差をつけて連勝を飾ると、午後のセミファイナルでも「ラリークロスの世界で言えば永遠に等しい」12秒もの大差で勝利。決勝ではポールポジションから追随する集団を振り切り、完璧なスコアを達成して22ポイントの圧倒的リードを築いて開幕ラウンドを終えた。

「コンディションは非常にトリッキーで決勝ではホイールスピンが少し多すぎたが、アスファルトからグラベルへの出口で非常に良いグリップを見つけ、ニクラス(・グロンホルム)に追いつくことができた」とクリストファーソン。「このクルマは雨の中でドライブするのに夢のような性能だ。とても満足しているよ」

 併催カテゴリーとなるフル電動ワンメイクのFIA RX2eチャンピオンシップでは、そのKMSジュニア的存在のチームEから参戦する昨季王者ニルス・アンダーソンが、僚友のミカエラ-アーリン・コチュリンスキーやアイザック・シェクヴィスト、モリー・テイラー(#YellowSquad)らを退け、意外なことに自身のシリーズ初優勝を達成。同じくEuroRX1では、前年度覇者のパトリック・オドノヴァン(チームRXレーシング/プジョー208WRX)が大会連覇を成し遂げている。

 新たな“バトル・オブ・テクノロジーズ”の時代が幕を開けたWorldRX、続く第2戦は「赤い大釜」の異名を持つハンガリーのニーラドで、7月27〜28日に引き続きのダブルヘッダー・ラウンドが予定されている。

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