バズり連発の気象予報士・アバンギャルド河津に聞いた! 2024年の猛暑対策と天気予報の「活用方法」

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2024年07月28日 13:30  週プレNEWS

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Xでは「アバンギャルド河津」と名乗る河津真人さん。かつてはニュース番組に多数出演していたので顔に見覚えのある人も多いのでは

X(旧Twitter)でたびたびバズりを起こしている気象予報士、「アバンギャルド河津」こと河津真人さんをご存知だろうか。テレビやネットニュースの「ただ情報を伝えるだけ」の天気予報と異なり、「アバンギャルド(前衛的)な天気にツッコむ」という河津さんの投稿スタイルは、時にパロディーあり占いあり...と思わず笑ってしまいながらも、誰しも天気に関心を持てるような工夫がなされている。

今回はそんな河津さんに、天気予報で注目を集める秘訣や、これからの天気・天気予報とどう向き合っていけばいいのかなどを直撃する。

【写真】「アバンギャルド河津」こと河津真人さん

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■「気象予報士なのにそんなこと言うんだ!」みたいなギャップ

――これまで当たり前に天気予報を見ていたのですが、Xでたびたびバズっている河津さんのポストが面白くて天気予報を注意して見るようになりました。あまり気象予報士さんらしくない、私情を込めた投稿をするようになったきっかけは?

俺たちの夏はまだ始まったばかり pic.twitter.com/T3mdorLyvr

-- アバンギャルド河津 (@makotokawazu) July 25, 2024

河津 Xで天気予報の発信を始めたのはもう10年以上前なんですけど、当時は静岡のテレビ番組でキャスターをやっていたので、番組でまとめた資料をTwitterにも載せて発信するという、テレビの天気予報の延長線上のつもりでやっていました。

しばらくはそのスタイルだったんですが、ある時、北海道の近くで低気圧がものすごく発達した日があって、気象予報士仲間の間では天気図を見て「これは結構すごい!」なんて話してたんですね。その時、僕は普通に強風や高潮に警戒を促すようなツイートをしてたんですけど、同僚が「こんな天気図見たことない!」って感情が入ったようなツイートをしていて、そっちの方が断然反応が多くて。

その時に「ただ情報を伝えるんじゃなくて、共感が大事なのか」ということに気づかされて、天気予報のツイートでもバズるのを狙ったり、より多くの人に伝えることができるんじゃないかと思うようになったりしたんです。

――Xのプロフィールには「アバンギャルド(前衛的)な天気とコンビを組んでいる芸人系気象予報士」とあります。

河津 アバンギャルド河津という名前は、社内の人に「普通の気象予報士が言わないような発信をしてるよね」「アバンギャルドだよね」って言われたことがきっかけで名乗り始めたんです。漢字4文字の気象予報士さんなんてたくさんいますから、そっちのほうが目立ちますしね。

ところが最近は、「天気のほうがアバンギャルドだな」みたいなリプライをいただくことが増えて。だから以前は「天気にツッコミを入れるのが前衛的」だと思っていたのに、最近は「前衛的な天気にツッコミを入れる」方に軌道修正したんです(笑)。

――特に反響の大きかった投稿は覚えてますか?

河津 「雪予報早わかり」っていう投稿ですね。

よくテレビのスーパーやネットの見出しで「関東では雪が降りそう」なんて言葉がよく出ますよね。そうすると、例えば東京都民の人は当然「関東で雪が降りそうとはいえ、東京では実際に降るの?」って疑問に思います。

でもそういう見出しがついてる時って意外と「関東の山沿いで雪。東京はむしろ雨」みたいな時が多い。そういう、嘘ではないんだけど、やっぱり「釣り」っぽい見出しってあるよね、って思って投稿したんです。

天気予報ってどうしても「大雨」「積雪」みたいな悪いことを言いがちで、もちろんそういうところには特に注意してほしいんですが、一方でネットの世界ではPV数が大事なので、中には大袈裟な見出しのものも多い。「そういうのに惑わされないようにしようね」「記事の中身もしっかり見ないといけないね」という自戒の意味も込めた投稿でした。そしたら意外と反響が大きかったですね。

【写真】「アバンギャルド河津」こと河津真人さん

――中にはマンガやアニメのパロディー的な投稿もありますよね。

河津 使い始めた当時のTwitterは、まだ「ネットに強い人」たちばかりが多く使うツールだったので、そういう人たちが好きそうなマンガやアニメのセリフのパロディーをすることで、普段天気に興味がない人にも興味を持ってもらおうと思って使い始めました。

あとはギャップもありますよね、「気象予報士なのにそんなこと言うんだ!」みたいな。それによって、結果的に注意喚起ができればいいかなって思っています。

――集英社のマンガのセリフも結構登場します。

河津 『ドラゴンボール』とか『BLEACH』などは名言が多いからつい使っちゃうんですよね(笑)。「もうちっとだけ続くんじゃ」とか「変身をあと2回も残している」とか、「なん...だと...」とか。こちらも気付いてほしくてやっているので、リプライで気付いてもらえるとやっぱり嬉しいですね。

あと、これはジャンプ系ではないんですが、先日、7月の平均気温が高すぎて「人類に逃げ場なし」と投稿したんです。実は『スポロボα』(プレイステーション用ソフト『スーパーロボット対戦α』)のパッケージに書かれているキャッチコピーなんですけど、そういうのでもやっぱり一人ぐらいは気付いてくれる。それも皆まで言わずに画像だけが貼られたリプライが来るんです(笑)。

――毎日占いのような天気予報のポストをされているのは?

河津 ただの天気予報だけで終わるのももったいない気がしていて、朝の情報番組を参考に、天気予報だけじゃなくより総合的に、かつ人を元気付けるような一言を言おうと思って占いの形式を取り入れています。別に占いの内容に根拠があるわけではないんですけど(笑)、実はラッキーカラーは天気と連動させています。

でも、「頑張りましょう」とかそこまで前向きなことは言いたくなくて、「辛い時は無理しないでね」とか「休める時は休もう」みたいな、ゆるいスタイルを心がけています。

――Xでは頻繁にバズっていますが、バズればバズるほど河津さんが儲かるわけではないですよね? そもそも河津さんの本業は?

河津 そんなことは全然ないです(笑)。会社からやれと言われてるわけでもなくて、仕事ではあるんですけど趣味でもあって、やりたいからやってるだけなんです。

本業としては、ウェザーマップという天気予報の会社に在籍していて、以前はテレビにも出演していたんですが、今は予報自体はあまりしていなくて、主に民間企業や自治体の方に向けて「ピンポイント予報」をお届けする、その営業活動をしています。でも、元々テレビに出る気象予報士として会社に入ったというのもあり、あの頃のカンを忘れないように今はSNSを続けています。

――「前衛的な天気さん」とコンビの相方として向き合うのはいかがですか?

河津 面白いですよ。天気予報を始めて約15年になるんですけど、15年前よりも明らかに情報が増えて、ニュースで扱われることも多くなりました。天気自体も、やっぱり2020年代入ってからは特に気温が高くなっていて、最高気温で40度も普通に出るようになってしまった。そういう意味でもツッコミどころは多いですし、驚かされることも多いので、Xでは実際に驚いた時に思ったことをそのまま書くこともあります。

先日は「耐えられる気がしない」っていうポストをしたんですけど、これも思ったことをそのまま投稿しています。「猛暑日になります」「熱中症にご注意ください」といった紋切り型のポストよりもやっぱり多くの共感を呼ぶんですよね。

【写真】「アバンギャルド河津」こと河津真人さん

■「雨の時に傘差すじゃん、暑さが降ってきてる時も傘差そうよ」

――今年の実際の天気についてもお聞きしたいんですが、すでに今年の夏はかなりの猛暑です。今後はどうなっていくのでしょう?

河津 毎年暑いですけど、今年もかなり暑いです。7月は月末にかけて一度暑さのピークが訪れて、東京でも35度以上の猛暑日が続くと思います。耐えられる気がしないですよね(笑)。

8月以降は台風の動向次第ではあるんですが、やはり基本はかなり暑いだろうなという予想です。太平洋高気圧の勢力が強いという予想が出ていて、これに覆われるほど晴れて暑くなります。8月は例年に漏れず、かなり暑いと思います。

――気象予報士さんオススメの猛暑対策はありますか? 「ハンディファンはあまり意味がない」といった話も聞きます。

河津 そうみたいですね。空調服を着る人も出てきていますけど、そのもうひとつ手前の話として、まず日傘をオススメしたいですね。だって日陰に入ると涼しいじゃないですか。弊社でコラボしている日傘のキャッチコピーが「日陰を持ち歩く」なんですけど、日傘はまさに「自分で日陰を作り出せる」んです。

最近は男性の使用率も増えてきましたけど、おそらくまだ半数以下ですよね。でも晴雨兼用のものもあるし、デザインも男性が無難に使えるものが多い。「雨の時に傘差すじゃん、暑さが降ってきてる時も傘差そうよ」という感覚で使うといいと思います。全然違いますよ。

――天気予報を見る際に気を付けることはありますか?

河津 今の季節、テレビでもよく言われる「大気の状態が不安定」というワードがありますけど、そういう時はにわか雨やゲリラ豪雨が起こりやすい。でも、その予想をピンポイントで当てるのはかなり難しいんです。

「関東のどこかで雨が降る」という予報はかなりの確率で当たるんですけど、「東京23区で降るかどうか」となると外れる時も多い。そういう時は本当に予報が難しい時なので、悪めに考えてもらった方がいいですね。

あとは台風の予報円。実はかなり頻繁に変化していて、直撃するにしても台風のどの部分が当たるかによって天候への影響の度合いも違います。そういう時は天気予報で必ず「最新の情報にお気を付けください」と言っていますので、数日前の予報などは当てにせず、1日2回くらいは天気予報をチェックしていただきたいですね。

――最後に余談ですが、天気にまつわる迷信ってたくさんありますけど、ああいうのに根拠はあるんですか?

河津 一番スタンダードな迷信で言うと、「夕焼けは晴れ、朝焼けは雨」というのがありますけど、それはやはり天気は西から東に変わってくることに由来しています。夕方に西が晴れていると翌日は晴れやすい。朝、東の空が晴れていると、だんだんと曇ってきやすいということですね。

他にも「ツバメが低く飛ぶと雨」というのは、湿度が高いと昆虫は低いところを飛ぶので、それを狙うツバメも低く飛ぶとか、「ネコが顔を洗うと雨」というのも、湿気が多くなるとネコのヒゲが湿ってくるらしく、迷信って実はある程度、信憑性が高いものが多いんです。

「観天望気」という言葉がありますが、空や自然をいろいろ眺めたりすることで天気を予測するということは昔からありました。私のXもそうですが、いろんなところから天気に興味を持っていただけたら嬉しいですね。

【写真】「アバンギャルド河津」こと河津真人さん

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●河津真人(かわづまこと) 
1983年生まれ。ウェザーマップ所属の気象予報士。TBS『あさチャン!』、NHK『あさイチ』などメディア出演経験多数。Xでは「アバンギャルド河津」としてユーモアを交えた気象情報を投稿し、たびたび話題になっている 
X:https://x.com/makotokawazu 

取材・文/酒井優考 撮影/山添 太

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