日産自動車が苦境に陥っている。2024年9月中間決算は連結営業利益が前年同期比9割減。9000人に上る大規模な人員削減や生産能力の調整に追い込まれた。主要市場の北米で人気のハイブリッド車(HV)を投入できず、劣勢に立たされたことが響いた。V字回復を果たしてトヨタ自動車やホンダと並ぶ国内自動車メーカー「御三家」の座を維持できるのか、正念場を迎えた。
◇トレンド見誤る
「ニーズに応える商品を提供できていない」。内田誠社長は先月の中間決算説明会で、コロナ禍後の業績回復に急ブレーキがかかった理由をこう説明した。特に北米事業の不振は深刻で、営業損益は41億円の赤字に転落した。2000億円前後の黒字を計上した過去3年から状況は一変した。
米国では環境意識の高まりから電気自動車(EV)化が進んでいたが、最近は充電設備の少なさなどから失速。HVなどの人気が再燃している。日産はHVの有力車種を持っておらず、4〜9月の米国での販売台数は前年同期比2.7%減少した。
◇苦肉の策
中国市場での不振も追い打ちとなり、4〜9月の世界販売台数は3.8%減の158万台と、低空飛行が続いた。この間、在庫を減らそうと値引きやローン金利の優遇に充てる販売奨励金を増額。ディーラーに支払った奨励金は値下げの影響額と合わせ、半年間で前年同期より1000億円余り膨らんだ。
ただ、多額の奨励金で販売を維持する手法は「安い車」との印象を与え、ブランド力の低下を招きかねない苦肉の策だ。潤沢だった手元資金も減少に転じ、3月末時点で1兆8964億円あった現預金は9月末に1兆3053億円と、3割も減った。
◇トランプ関税
日産は今年3月、26年度までに世界販売台数を23年度実績の344万台から100万台増やす目標を掲げたが、中間決算を踏まえて事実上撤回した。業界の内外に衝撃を与えた9000人削減は全体の約7%に当たる規模で、生産能力は2割削減する。しかし、縮小路線を続けても商品力を高めなければ抜本的な業績改善は期待薄。HVなどの開発には時間がかかり、特効薬は見当たらない。
「トランプ関税」も今後の不安材料の一つだ。昨年度、日産が米国で販売した91万台のうち、4分の1程度はメキシコからの輸入。トランプ次期米大統領がメキシコに追加関税を発動すれば、北米事業はさらに打撃を受けかねない。日産関係者は「このままの販売計画では立ち行かなくなるのでは」と不安の声を漏らしている。