今年もあっという間に2月。バレンタイン時季の到来です。バレンタインといえば何といってもチョコレート。実は、40代から起こる身体の変化に優れた効果があるんだそう。教えてくれたのは、慶應義塾大学医学部化学教室の井上浩義教授。
肌の新陳代謝にもうれしい効果が!
「呼吸により体内に取り込まれた酸素の一部が化学反応を起こすときに発生し、体内でほかの物質を酸化させる力が強い酸素のことを“活性酸素”といいます。
もともと身体には活性酸素の働きを抑えるSODやカタラーゼなどの酵素があるのですが、これらの酵素をつくる身体の機能が、40代になると急激に減少するといわれています。
つまり、40代になると体内で発生する活性酸素を身体の機能だけでは処理できなくなり、活性酸素が過剰な状態になりやすくなるのです」(井上教授、以下同)
活性酸素は私たちの身体を守るため、ウイルスなど異物を撃退する役割もあるので、一概に悪いものともいえないが、増えすぎて身体の処理能力を超えてしまうと体内の正常な細胞や遺伝子まで攻撃してしまうことも。
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また、活性酸素の過剰状態が続くと動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞、がん、糖尿病などの疾患に罹患(りかん)するリスクが高まることも知られている。
そんな活性酸素を無害化してくれるのが、チョコレートに含まれるポリフェノールが持つ抗酸化作用。
「LDLコレステロール、マクロファージ、活性酸素。この3つが合わさると血管が詰まる原因といわれ、活性酸素を抑制するチョコレートの抗酸化作用がとても重要に。
また、人間の身体はよくできていて、ポリフェノールなどを過剰にとっても余分なものは体外に排出されます。だから不足分は、食べ物で口からどんどん補っていきましょうという考え方が、今は世界の主流になっているのです」
ほかにもチョコレートにはどんな効果が?
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「人を使った実験で、チョコレートを食べることによって、肌の新陳代謝が上がるという研究結果も出ています」
食物繊維が豊富で便秘改善にも期待!
「また、チョコレートに含まれる食物繊維が便秘の改善に効果があるという研究結果も出ています」
実は、チョコレートは発酵食品。カカオの種子であるカカオ豆を発酵、乾燥、焙煎(ばいせん)した後に、胚乳部分のカカオニブを細かくすりつぶしたものがチョコレートやココアの原料に。
カカオニブはポリフェノールのほか、食物繊維も豊富。すりつぶすことで繊維が細かく切断され、腸管のひだに入り込み、腸内の不要な物質をかき出したり、膨張効果もあるので便意を催しやすいそう。
「最新の研究でも1週間に排便が4回以内の便秘傾向の人は、チョコレートを食べることで排便の回数が約1.6回増え、改善が見られました」
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ちなみに、女性のがん死亡数1位は「大腸がん」。(国立がん研究センター 最新がん統計「がん死亡数の順位(2023)」)
「大腸がんを抑制するには、便秘をいかになくすかも重要になってきます。便秘傾向にある人にもぜひチョコレートを食べていただきたいですね」
どんな種類のチョコを1日にどのくらい?
では、どのような種類のチョコレートを、1日にどのくらいの量を食べれば効果的なのだろうか?
「健康の観点からなるべく糖分は控えめで、カカオ含有率が高いもの、メーカーによって呼称も含有率の基準もさまざまですが、カカオ含有率70%以上のものがよいとされています。
適量は諸説ありますが、1日約17グラム、板チョコでいうと約2列分の量がよいかと思います」
おすすめの時間帯は、
「絶対に朝ですね。紫外線を浴びる量も呼吸回数も夜寝ているときから、大幅に変わる朝は、いちばん身体が対応できず、酸化することが研究でわかっています。
ですので、身体の酸化を防ぐためにも朝にチョコレートを食べてほしいですね。最近は、40歳以上で朝ごはんを食べていない人も多いと聞きます。朝は時間がないという人も、せめてチョコレートをひとかけら、口に入れて出かけてください」
チョコレートと一緒に食べると効果アップが期待できるものは?
「ポリフェノールが入っていて組み合わせがいいものは、アーモンドやクルミ、ピーナツなどです」
最新のチョコレート健康効果情報も聞いた。
「認知症の約6割はアルツハイマー型認知症で、患者数の最も多くを占めています。実はカカオポリフェノールを含むチョコレートが、アルツハイマー型認知症予防や進行の遅延にも効果が期待できるという研究が進んでいます」
毎日「チョコっと」、ぜひ習慣づけたい。
井上浩義教授●1961年、福岡県出身。慶應義塾大学医学部化学教室教授。医学博士、理学博士。「食と健康」についても造詣が深く、『世界一受けたい授業』『あさイチ』などテレビ出演多数。『アルツハイマー病はタンパク質がすべて』(アーク出版)、『「老けない」「太らない」アーモンドミルクできれいに生きる』(主婦と生活社)など著書多数。
取材・文/住田幸子