すでに見た目が違う。(左上から)セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン ※セブンイレブンでは東京都心の多くの店舗で「ななちき」は取り扱いなし。そのためからあげ棒を比較対象にしました 食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、食トレンド、スーパーマーケットやスタバ、ダイエットフード、食育などの情報を“食の専門家”として日々発信しています
コンビニで盛り上がりを見せている食べ物があります。それは、“唐揚げ”。レジ横に肉まんや焼き鳥などのホットスナックがズラリと並ぶ中で、今ひときわ目立っているのが、唐揚げなのです。
これは2009年頃からはじまった第2次唐揚げブームの流れの延長として、中食やインバウンドの需要が後押しする形で、身近なごちそうである唐揚げにひときわ人気が集まっていると考えることができます。
でも純粋に、どこのコンビニの唐揚げがおいしいのでしょうか? 実は比較して食べてみると、三者三様。同じ唐揚げでも個性が大きく異なることに気がついたのです。
ガツンとガツンと大ぶりなのはどこ? ジューシーなのは……? そこで今回は、三大コンビニ(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)の唐揚げを比較してみることに。それぞれの特徴を知っておけば、その日の状況や気分によって使い分けができますから、唐揚げを買う参考にしていただければうれしく思います。
◆見た目が大きく違う! おいしそうなのはどれ?
現在コンビニ各社で販売されている唐揚げは、セブンとファミマが1個単位から、ローソンが2個セット(4個セットが基本)から。
この“小単位で購入できるスタイル”は、お弁当にちょっと追加したい、カップ麺や菓子パンのお供にしたいというニーズに応えたもの。1個から買えるとなると、唐揚げがますます身近に感じられますよね。
さっそく3社の唐揚げを購入して並べることに。ファミマではしょうゆ味と塩味の2種があり、両方食べつつも、比べるのはローソンのLからと同じ「しょうゆ味」にそろえることにしました。
そして今回比較のために東京都心のコンビニを回ってみたところ、東京都心のセブンイレブン5店では単品唐揚げ「ななから」(81円)の取り扱いがありませんでした。店員さんに聞いてみると、「以前はあったのですが、最近はないですね」という回答が。代わりに並んでいたのは、「からあげ棒」(180円)、「揚げ鶏」(240円)、「ななチキ」(240円)。
鶏の揚げ物としてのレベルを冷静に判断するためにも、すべて実食した上で、比較対象はからあげ棒にしました。
◆ファミマのビッグな存在感にそそられる
すでに大きさや見た目の色が大きく異なります。ファミマがダントツに大きくて色が黒っぽく、セブンは一番小さくて竜田揚げのような白い衣をまとい、ローソンはその中間といった雰囲気。
おいしそうに見えるのはどれでしょうか? 見た目のおいしさは個人の好みによるものが大きいため一概には断定できませんが、がっつり食べたいときにはファミマのビッグな存在感にそそられる人は少なくないでしょう。
【比較対象にした唐揚げ】
セブンイレブン:からあげ棒 180円
ファミリーマート:ファミから(醤油) 1個108円
ローソン:Lから 4個298円
◆いちばん重かったのはどれ?
実際に1個あたりの重量を計測してみました。重量はかぶりついたときの食べ心地や口の中での存在感に大きく影響しますから、とても重要な要素。
計ったところ、ファミマ→54g、ローソン→29g、セブン→23gという結果に。ファミマが圧勝です。
セブンは同条件として比べることはできませんが、1個を口に入れたときの幸福感は重量感が大きく左右するということに、改めて気がつきました。
◆ジューシーな肉質、衣がおいしいのは
次に味の違いです。唐揚げ全体の味付けとしては、ファミマが濃いめ。しょうゆ風味がしっかり感じられ、にんにくがしっかり効いていて、パンチのある強さを感じます。
一方ローソンは上品でまろやかな味付けで、ファミマの逆を行く世界観。セブンも比較的あっさりとしています。
衣の厚みは、ローソン→セブン→ファミマの順。ローソンのサクサク衣が絶妙においしく、複数個を味わうなら間違いなくコレ。唐揚げ弁当にゴロゴロ入っていたらうれしいのはローソンです。
ファミマは1個食べた時の満足感という点ではインパクトがあり優秀。にんにく感で好みが分かれる可能性もあります。
また、肉のやわらかさやジューシーさを比べると、ローソンが秀逸。しっとりジューシーな肉質は冷めてもおいしく、断面を見てもパサパサ感はゼロでした。
ファミマはブリッとした肉感があり、セブンは衣を目立たせる控えめながらもやわらかさが印象的です。
◆3社に共通していたのは、脂っこくないこと
まとめると、強い個性感じる大ぶりな唐揚げはファミマ、しっとりジューシーでまろやかな味わいで飽きずに食べられるのはローソン、スナック感が楽しめて衣と肉のバランスが良い教科書的な唐揚げはセブンと言えるでしょう。
同じ人であっても、一緒に合わせる食べ物やおなかのすき具合、気分によって違う選択肢になる可能性は大いにあるなと感じました。
そして3社に共通して感じたのは、脂っこさがなく、食べた後のもたれるような重さがないこと! これはコンビニ唐揚げのレベルが確実に上がっている証であり、今後各社がますますしのぎを削って、おいしい改良が重ねられることを期待してしまった体験にもなりました。
さあ、みなさんはどのコンビニが気になりますか?
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12